アドボカシーの手順
ステップ1「企画」
環境保全にかぎらず、どんな活動も、まず「課題の発見」からはじまります。その課題を解決するためには、問題に対する正確な理解が必要です。
そこで、現状の把握や問題を生じさせる原因など課題にまつわる様々な「情報の収集」を行うとともに、課題を解決するためにどんな人や団体とかかわりを持てばよいか「ステークホルダーを洗い出す」作業をすすめます。
課題を取り巻く状況を把握したら、課題解決に向けた活動のゴールを定め、その実現に向けて「構想の企画化」を行います。
その企画を具体化していくためには、活動を効率的に行うための「組織化」や「資金調達」といった準備も必要です。
1.課題の発見
緑地の開発問題など、気づいた時には工事が始まり手遅れの状態になっていたなんてことがないよう、普段からアンテナを張ることが大切です。
2.情報の収集
とりあげる環境問題を様々な角度から調べましょう。その問題がいつだれにどんな影響を与えているのか。なぜその問題が起きているのか。他地域でも同じような問題があるのか。どのような解決を目指せばよいか。
その問題についての深い理解がこの後の活動の支えとなります。
3.ステークホルダーを洗い出す
情報収集の中でもとりわけ重要なのが、ステークホルダーに関するものです。ステークホルダーとは「組織の何らかの決定又は活動に利害関係をもつ個人又はグループ」のことを指します。誰がどのように問題に関わっているのか。誰を味方にし、また誰を説得すれば問題解決に近づくのか。
そうした人間関係を見極めましょう。議員が「あの人の言うことならば聞いてもいいよ」という人を見つけ出し、味方にできれば、成功の確率はグッと上がるはずです。
4.構想の企画化
情報が整理されたら、問題の解決に向けてゴールを設定し、それに向けて活動を組み立てましょう。
ゴールの設定は、「市民参加で条例をつくる」といった漠然としたものではなく、「"項目AとBとC"が入った条例をつくる」のように、できるだけ具体的に設定しましょう。
また、最終的な利害調整に入った場合に、場合によっては譲ってもいい項目、絶対に譲れない項目など、いわゆる「落としどころ」を考えておくことも大切です。実際の活動を企画する際には、誰に何をしてもらうかを考えましょう。
アドボカシー活動は一人ではできません。自分たちの活動に共感する人たちの力を借りて活動を効率的に進めましょう。
5.組織化
活動を手伝ってくれる人は、これまで仲間だった人たちに限りません。
新しいボランティアスタッフやプロボノ(専門のスキルを市民活動に役立てて社会貢献をしたいという職業人)だったり、他のNPO団体、行政マンや議員など様々です。
活動を効率的に進めていくために、意思伝達の経路をしっかりと作っておきましょう。
6.資金調達
活動を進めるためには、協力してくれる人も大事ですが、お金も必要です。
自分たちの強い想い、活動から得た物や知識を活用して、会費、寄付金、助成金、自主事業など様々な方法で資金を集めていきましょう。
ステップ2「実行」
準備段階を経て、いよいよアドボカシー活動を実行する段階です。
勉強会やシンポジウム、メディアの利用など様々な手段を使って課題に関する状況や解決手段を広く普及し、世論形成や活動支援者の増加を図って「ステークホルダーを拡大」していきます。
課題をめぐって対立構造ができやすい活動では、「調停役となる人・機関」を巻き込むことも必要かもしれません。
細かい個別の活動については、進捗状況や目標の達成度を「測定」・「記録」し「中間評価」をおこなって、進行を管理しましょう。
時間が経過するにつれ、あるいは多くの人が活動にかかわるにつれて、アドボカシー活動の目指すゴールが変わることもあります。
当初のゴールに無理に固執せず、状況に応じて順応的に「企画や組織の見直し」を進められるかは、活動の成否にも関わってきます。
こうした活動を通して得られた知見や人材をもとに、課題解決に向けた社会変革のビジョンについて、様々なステークホルダーを含めた「合意形成」を進め、その内容をまとめて「政策提言」へとつなげます。
提言書は提出したら終わりではありません。
その内容を実現に結びつけるため、政策決定者などキーパーソンを説得する、すなわち「ロビー活動」が重要となってきます。
これらのポイントが、アドボカシー活動の「決着」に大きく影響を与えます。
1.ステークホルダーの拡大
説明会やセミナーなどをひらき、問題が起きている地域の人たちに問題について知ってもらうことがまず大切です。
その問題の大切さを訴えても、相手に興味がなければなかなか説得はできません。
例えば、食べ物や身近なものなど、相手が興味を持ちそうな何かと問題にかかわる何かを結び付けるよう工夫し、相手との最初のつながりを持つことができるようになれば、より多くの方から活動の理解や協力を得られるようになるでしょう。
2.調停者をつくる
実際の活動では、このようにうまく賛同者ばかりが増えるとは限りません。問題を巡っては必ず利害の対立があります。
ステークホルダー間の対立構造が目立ってしまうと、どうしても解決には結びつきません。
そのような場合、調停者となる中立的な立場の人・団体を巻き込んで、不要な対立を避ける構図づくりを意識することが大切です。対立が鮮明になる項目だけで話し合うのではなく、折り合いのつけられる項目から話を始めるなどの工夫も必要でしょう。
3.成果の測定、記録、中間評価
自分たちの活動が、どこまで進んでいるかを把握するために、成果の測定、記録をしておくことは大切です。
その情報をもとに中間評価を行い、活動が狙い通りに、あるいは予定通りに進んでいるかを評価しましょう。
4.企画や組織の見直し
中間評価の結果、活動が狙い通りにいかなければ活動方法の見直しが必要です。
また、中間評価でわかったネックが、人員の不足や配置の不適合というような、組織上のものであるときは、組織の組みなおしをすすめましょう。
5.合意形成
さまざまなステークホルダーが関わるなかで多くの活動を進めてきた結果、目指すゴールがばらばらになってしまった、ということが無いように、関係者の間で合意をつくりましょう。
組織内部だけでなく、外部のステークホルダーも納得できる合意点を作り出すのには骨が折れますが、後になって「やっぱり反対」ということが起きないよう、根気よく話し合って理解を得ることが必要です。
6.提言をまとめる
相手に届く提言をするためには、ポイントを押さえ、かつ簡潔な資料作成を心がけましょう。資料をつくるうえで欠かせないポイントは、「自分が何者であるかを名乗る」、「目指すゴールを明確にする」、「現状分析と課題抽出を行う」、「具体的な解決策を示す」の4つです。
また、環境問題だからといって、政策提言を出す相手は環境省や地方自治体の環境部局とは限りません。農林水産部局や建設関係だったりもします。出す相手・窓口はしっかりと確認しておきましょう。
7.ロビー活動
ロビー活動のポイントは「タイミング」と「人とのつながり」です。法律であれば、国会でどのような手順とスケジュールで法律がつくられるかを把握し、タイミングよく議員などへの働きかけを行うことが重要です。
また人脈を活かして議員とコンタクトを取り、そして信頼関係を築くことが大切です。
ステップ3「振り返り」
活動が決着すると、ついその達成感に浸りがちですが、今回の活動の成果により本当に全ての課題が解決したのか、という視点を持つことが大切です
。残された課題や新しい課題によって、せっかく頑張ってきた活動の成果がいつの間にか効力を失っていることが無いよう、これまでの活動全体を「検証・評価」する作業は大変重要です。
評価の結果、活動を続ける必要性が明らかになれば、次の課題解決に向けた「フォローアップの目標設定」や「企画や体制の組み直し」をおこなって、「活動を継続」していくことになります。
1.検証・評価・記録
中間評価の時と同じように、これまでの記録や測定をもとに、活動成果を評価します。その結果、全てがうまくいき、課題が完全に解決されれば、この活動は終わりです。
しかし、そのようなケースはまれではないでしょうか。そのような場合には、課題の完全解決に向けて今一度、必要な活動を続けていきましょう。
2.フォローアップの目標設定と企画や体制の組み直し
上記の評価をもとにして、今後達成しなければいけない目標、あるいは今回の活動成果を有効に活用していくために何が必要かなど、新たに取り組まねばならないフォローアップの目標を設定しましょう。
そしてその目標達成に向けて、今回の企画や組織・体制を見直していきましょう。
3.活動の継続
これでおよそ、アドボカシー活動の工程は一巡しました。次の目標はまた一段ステップアップしていることが実感できるでしょう。同時に、あなた(の組織)のパワーも確実にアップしているのです。
それだけの実力をもつNPO/NGOがもっともっと増えていけばそれだけ、市民社会と自然/人間環境はあなたの理想像に近づいていくでしょう。
ミッションはいつまでも、あなたの頭上にあります。
あとは活動を継続していくだけ。「継続は力なり」です!
実際の活動では、上に示した手順を全てきっちりと順番通りにこなしているわけではありません。むしろ活動の中で臨機応変に対応することはとても大切です。
しかし、走りながら考えると、不要な手順を繰り返すこともあり、予想以上に労力がかかります。そんな時、ここで示した手順と活動のポイントが、ヒントになるのではないでしょうか。