NPO法人から株式会社への出資 投稿者:
梅田 知良 投稿日:2012/02/06(Mon) 09:52:08
No.10346
質問させていただきます。
質問箱のやや古いものに
「 NPO法人からの出資 Boss 2002-5-3 16:02 」
を見かけました。
NPO法人から株式会社への出資は、同一目的の事業を行う
ような、いわゆる関連会社のような株式会社への出資など、実
際の例も見られるのですが、本当に法的に問題ないのでしょう
か。
特定非営利活動法人法には
「第三条 特定非営利活動法人は、特定の個人又は法人その
他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならない。」
とあります。
上に上げたような例は、この条文に触れていると思います。
またJOCの現職理事がtoto助成金を不正に受給したと
疑われている事例などがニュースになっていますが、NPO
法人がtoto助成金を受給して、そのほとんどを関連する
会社へ出資するようなことは、根本の発想がJOC理事の例と
共通しているように思われ、不正を疑われるように思います。
お答えいただければ、幸いです。
Re: NPO法人から株式会社への出資 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2012/02/07(Tue) 18:58:48
No.10348
梅田 知良 さん
1、まず特定非営利活動促進法第3条1項の趣旨ですが、この条文は、「事業」を行 う「目的」が「特定の個人又は法人その他の団体の利益」であることを禁ずる趣旨 であることに留意してください。
従って、事業の目的に沿った事業をした結果として、たまたま「特定の個人又は法人その他の団体」が何らかの利益を受けたとしても,それは「特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として」事業をしたことにはなりません。
2,例えば、公共の安全及び災害被災者の救済を目的とする特定非営利活動法人Aの が、特定非営利活動促進法の別表に掲げる「災害救援活動」を行っており、そのお 事業として「災害被災者の救援、自立援助事業」を行っているとします。
このA法人が、東北大震災の被災者に対する仮設住宅を無償提供して、そこに B・C・D・E……という特定の個人が入居したとしましょう。
この場合、特定非営利活動法人Aの事業によって特定の個人が利益を得ていますが、A法人はこれらB・C・D・E……という特定の個人に利益を与えるために事業をしたわけではありません。特定非営利活動法人Aが,その目的を達成するために行った「災害被災者の救援、自立援助事業」の受益者が,たまたまB・C・D・E……だったということにしかすぎません。
3、しかし、具体的なケースによっては、ある「特定の個人又は法人その他の団体」 に限って利益を与えており、それが当該法人の事業目的であると解される場合もあ り得ます。
4、具体的なケースにおいて、それが「特定の個人又は法人その他の団体の利益を目 的として」事業が行われているかどうかは、
①当該団体の事業全体からみて、他にどのような事業が行われているか
②利益を受けているのがいつも決まって同じ「特定の個人又は法人その他の団 体」なのかどうか
③利益を受けている「特定の個人又は法人その他の団体」と当該特定非営利活動 法人・及びその役員達との関係はどのようなものか
④利益を受ける「特定の個人又は法人その他の団体」がどのように選定されるの か
といったことを考慮して判断することになると思われます。
5、ご質問の「出資」についても同様です。例えば、A法人が、A法人の事業の手足 として活動させるために,全額出資して株式会社Fを設立することは、その出資の 目的が株式会社Fの利益を図る目的ではありませんから、特定非営利活動促進法第 3条1項には違反しません。
しかし、例えば、“A法人が、同法人の理事の配偶者であるGの経営する株式会社Hの経営を援助する目的で、A法人の目的とは何の関係もない事業をしている株式会社Hの増資を引き受ける”という場合は、特定非営利活動促進法第3条1項に違反することになります。
6、このように、出資が特定非営利活動促進法第3条1項に違反するかどうかは、そ の具体的内容によるということになります。
弁護士 浅野晋
Re: NPO法人から株式会社への出資 投稿者:
梅田 知良 投稿日:2012/02/08(Wed) 09:57:51
No.10349
弁護士 浅野晋 さま
ご回答をいただき まことにありがとうございます。
浅野先生の NPO法人が全額出資して 株式会社
の設立ができるという見解 参考になりました。
私は スポーツクラブを運営する実在のNPO法人の
会計のお手伝いをしており 私自身は会員でも理事でも
ありません。
そのNPO法人の理事長が 株式会社を設立し
NPO法人が ほぼ専用に使用する施設を建設し
銀行からの借入と返済 家賃の支払いを 株式会社が
行っています。
当然ながら 主な収入は NPO法人が行う事業による
収入であり それを株式会社に移さないと 月々の決済が
できず 施設の継続的な使用ができません。
二つの組織の代表者は 同一人物で NPO法人の資金
を 理事会の承認を得ず 株式会社に移しています。
今のところ 目だった不正支出や NPO法人の剰余金
の分配に当たる支出は ないようです。
私が問題にしたいのは NPO法人は 所轄庁への提出
によって 財務諸表の公開がなされ 透明性確保の道が
開かれていますが 株式会社は原則非公開なことです。
このことによって 株式会社へ移った資金が どのような
使途に使われたのか 確認する手立てを NPO法人が
主体的に持たない限り 株式会社の役職員が遊行費に使ったり
してもわからず NPO法人をかくれみのにした 不正の
温床になりかねません。
私は 関与しているNPO法人については
① 株式会社への 資金移動や費用支出については
理事長が専決せず 必ず事前に NPO法人の理事会で
承認を得ること。
② 株式会社の財務諸表について 決算のみでなく
随時の提出を NPO法人の理事会へ受け 内容を
確認し 不正支出や NPO法人の剰余金の分配に
当たる行為がないことを 確認すること。
③ 可能な限り早期に 二つの組織の代表者が
同一人物である状態を 解消すること。
この3点を 提案したいと考えています。
浅野先生 ありがとうございました。
Re: NPO法人から株式会社への出資 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2012/02/09(Thu) 19:12:15
No.10352
梅田 知良 さん
梅田さんの問題意識は正しいと思います。
また提案しようとしておられる提案内容も、適正・妥当なものであると解されます。
がんばってください。
弁護士 浅野晋
Re: NPO法人から株式会社への出資 投稿者:
梅田 知良 投稿日:2012/02/24(Fri) 10:54:01
No.10377
弁護士 浅野晋 先生
ご意見 ありがとうございます。
現在 関係者と話し合い 対応中です。
時期が来ましたら 公表できる範囲で
この場をお借りして ご報告いたします。
NPOWEBの 益々の発展を お祈りします。
梅田 知良