青木さん、
前回の私の答えで足りなかった部分があり、申し訳ありません。
少々長くなりますが、まずは基本部分を書きますのでお許しください。
大変ややこしいのですが、「収益事業」という言葉には、注意が必要です。という
のは、現行のNPO法上の「収益事業」と、法人税法上の「収益事業」が異なるか
らです。
たとえば、環境保護団体が環境に関する本を出版して、環境保護の重要性を一般の
人に知ってもらうような活動をした時、これは法人税法上は「出版業」にあたり、
収益事業です。しかし、NPO法上では環境を保護するという定款の目的を達成す
るための特定非営利活動事業です。
一方、もし同じ団体が裏山の空地を利用して駐車場にして、これで利益をあげた場
合、たとえその利益は環境保護活動に充てられる場合でも、駐車場経営は環境保護
と直接関係ないので、特定非営利活動ではありません。よって、NPO法上の収益
事業となります。また、駐車場業は税法上でも収益事業です。
つまり、その事業が直接に目的達成のための事業であれば、NPO法上の特定非営
利事業です(ただし、法人税法上は収益事業になる場合があります)。もし、そう
ではなく、目的達成のための資金稼ぎのための事業で、直接その事業によって目的
が達成されるものでないなら、NPO法上の収益事業です。
NPO法人の事業は、今のところ次の4つの区分されているのです。
(1)NPO法上の特定非営利活動事業で、税法上の非収益事業 (非課税)
(2)NPO法上の特定非営利活動事業で、税法上の収益事業 (課税)
(3)NPO法上の収益事業(非本来事業)で、税法上の非収益事業 (非課税)
(4)NPO法上の収益事業(非本来事業)で、税法上の収益事業 (課税)
なお、法人税法上の収益事業とは、限定列挙された33業種です。その33の業種
とは、次のものです。
1 物品販売業 2 不動産販売業 3 金銭貸付業 4 物品貸付業
5 不動産貸付業 6 製造業 7 通信業 8 運送業
9 倉庫業 10 請負業 11 印刷業 12 出版業
13 写真業 14 席貸業 15 旅館業 16 料理店業その他の飲食店
17 周旋業 18 代理業 19 仲立業 20 問屋業
21 鉱業 22 土石採取業 23 浴場業 24 理容業
25 美容業 26 興行業 27 遊技所業 28 遊覧所業
29 医療保健業 30 技芸教授業 31 駐車場業 32 信用保証業
33 無体財産権提供業
以上が原則です。
よって、もし青木さんの団体がやっている「派遣業務」が直接に定款の目的を達成
するための事業であれば、たとえ対価を得て(料金や代金を取って)行う活動でも
NPO法上は特定非営利活動なのです。そして、定款を作る時には、これを収益事
業として書かない方が良いのです。
ところが、対価を得て行う活動は全てNPO法上も収益事業だと思って、そのよう
に定款に書いてしまっている団体が結構あるようです。青木さんの団体もそうなの
かもしれません。
いったん定款に書いてしまうと、実態は特定非営利活動であっても、もう定款が優
先されてしまうことになります。これを変更するには、定款変更の手続きを経るし
かなく、手間が結構かかります。
定款を作る時は、所轄庁の手引きだけを頼りに作ってしまうと、このようなことが
起こりがちです。十分な注意が必要です。
ところで、このNPO法上の収益事業と、税法上の収益事業が異なっていて大変分
かりにくいため、NPO法を改正して「収益事業」という言葉をなくし「その他事
業」に統一しようという動きはあります。ただし、いつ法改正になるかはまだ分か
らない状況です。これについては、シーズのホームページのニュースで紹介してい
ます。次のアドレスからアクセスできます。
http://www.npoweb.gr.jp/newsinfo.php3?attrid=1&newsid=629シーズ事務局・轟木 洋子