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NPOとNGOの差は? 投稿者:羅永康 投稿日:2002/06/16(Sun) 10:14:00 No.1218
NPOとNGOはどう違いますか?
役割、特徴、などが知りたいです。
Re: NPOとNGOの差は? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2002/06/18(Tue) 12:52:00 No.1219
羅さん、

ご投稿ありがとうございます。
NPOとNGOの違いについて、以前このホームページのコーナーで解説を
入れておりましたので、それを以下に貼り付けます。シーズ事務局長の松原が
書いたものです。少々長いのですが、どうぞご参照ください。

シーズ事務局・轟木 洋子

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何が「NGO」で、何が「NPO」なのか、という定義の問題は、多くの新聞記者、
研究者、実践家、学生を悩ませてきた。「NGO」と「NPO」はどう違うのか、
何度も多くの人に尋ねられたものである。いつの時代でもそうだが、新しい
分野が社会で急成長していくときは、それに関する様々な呼称や概念に関し
て様々な混乱が生まれるものだ。現在、NGOやNPOのまわりで起こっているこ
とがまさにそれ以外の何者でもない。

問題はどちらも厳密に定義ができるものではないということだ。

NGOとNPOは、その言葉の出自から理解する必要がある。

NGOとは、Non-Governmental Organizationの頭文字をとったもので、直訳す
れば「非政府組織」ということである。NGOという言葉は、ナチスドイツが降
伏し、まだ日本が第二次世界大戦を継続していた1945年6月に調印された国際
連合憲章によるところが大きい。国際連合憲章第71条には次のような手続規定
が定められている。

「経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体(non-governmental organizations)
と協議するために、適当な取極(とりきめ)を行うことができる。この取極は、
国際団体(international organizations)との間に、また、適当な場合には、
関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体(national organizations)
との間に行うことができる。」

経済社会理事会は、安全保障理事会(安保理)と並ぶ国連の大きな理事会の一
つである。54の理事国から構成され、その主要な活動は、国際的な経済、社会、
文化、教育、保健、人権などの問題に関して、調査や意見交換、調整などをす
ることとなっている。国連というのは、いうまでもなく、その主役は加盟国の
政府(government)だ。各国の政府が一同に会し、その利害関係を調整したり、
国際的なルールを取り決めたりする。そこには、一見民間団体が出る幕はなさ
そうだ。

しかし、現実に、社会問題や保健・医療、人権、教育などの問題を国際的に討
議する上では、民間団体の協力なしには進まないところがある。また、民間団
体は独自の視点から、多くの情報を持っていたりして、その情報が必要なとき
も多い。そこで、経済社会理事会では、一定の審査を経て承認された民間団体
を登録し、オブザーバーや発言の機会を保障することにしてきたわけだ。

この国連のシステムから始まって、NGOというのは、一般に、国連をはじめとす
る国際会議などで、民間団体を指すときに使う名称なのである。政府以外のもの
といった程度の呼び名にすぎない。したがって、その範囲は膨大に広いといっ
ていい。ただ、国連では、慣習的に営利企業をNGOの中にいれてない。1992年の
リオデジャネイロの地球サミット(国連開発環境会議)の際に、経団連がNGOと
して参加して、市民団体の間であれがNGOかと話題になった。しかし、間違いな
く経団連もNGOである。市民団体、労働組合、生協、業界団体、宗教団体、経営
者団体、赤十字、ガールスカウト、ライオンズクラブなどは、政府主体の国際
会議では、すべてNGOとして扱われうるのである。理由は簡単だ。「政府ではな
い」からである。

一方、NPOというのは、国内的な概念だといえよう。NPOという言葉は、米国の法
人制度や税制度に出自を持っている。NPOは、Non-Profit Organizationの略で、
非営利組織という意味である。

こちらは、Protit Organization (もしくはfor Profit Organization)、つまり
「営利組織」=会社に対応する概念である。NPOも「営利企業でないもの」とい
う否定的な表現なので、きちんと定義することはできない。米国においても、非
営利法人として設立されたものをNPOであるとする人もいれば、税制上の優遇措置
を持っている団体のみをNPOとする研究者もいる。また、広く営利を目的としない
社会的な活動を行っている草の根団体まで含める人もいるようだ。ちなみに、米国
の制度で課税上の免税特典を受けれる団体に限ってみても、労働組合、宗教団体、
学校、博物館、美術館、病院、芸術団体、市民団体、退職者組合、共済組合、農協
など、さまざまな団体が対象となっている。

さらに狭義にとって、寄付金に対する課税優遇措置が与えられる団体に限ってみ
ても、範囲は広い。たとえば、ハーバード大学も、スミソニアン博物館も、アメ
リカ赤十字社、救世軍、YMCA、カトリック教会などは、寄付金に対する税制優遇
措置があるNPOである。米国にはこのようなNPOだけで、約60万団体が存在している。
日本でも、非営利とされる法人の種類がいくつかある。社団法人や財団法人、宗教
法人、生協、信用金庫、信用組合、社会福祉法人、学校法人、労働組合、農協な
どだ。
また、このうち、社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人、労
働組合などは、収益事業を除いて非課税とされており、さらに学校法人や社会福
祉法人、社団法人や財団法人のうちのごく一部は、寄付金に対する税制優遇措置
の資格を持っている。この数は2万団体弱で、団体数からすると米国の約3%に過ぎ
ない。これらが日本の制度上からみたときのNPOであるということができる。

こうして、みるとNGOとNPOというのは、ほとんど重なっていることがわかる。要は、
それぞれ登場する場所の違いによって、NGOとNPOというのは分類されている。同じ
団体が、国際会議に行けばNGOとして扱われ、自国の企業と比べられるときはNPOと
呼ばれるということである。

以上

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