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収益事業が非収益事業を上回ればどうなりますか。 投稿者:西村 投稿日:2003/03/09(Sun) 22:54:00 No.1963
年間の収支報告書で収益事業が非収益事業を上回ればどうなりますか。
県などから、認定を取り消されたり、何か指導がありますか。
Re: 収益事業が非収益事業を上回ればどうなりますか。 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2003/03/19(Wed) 16:57:00 No.1964
西村さん

回答が遅くなってすみません。
ご質問は、今年2月4日に、内閣府が「新基準」なるものを発表したこともあり、なか
なか難しい問題です。また、西村さんが書かれている収益事業が、NPO法上の収益事
業のことなのか、あるいは法人税法上の収益事業のことかによっても回答が変わってき
ます。

まずは、内閣府の「新基準」を考えずに、従来のNPO法の解釈上において、NPO法
上の収益事業の場合と、法人税法上の収益事業の場合の別にご回答します。

(1)まず、NPO法上の収益事業が何かということですが、これは西村さんの法人の
目的と関係のない事業で、本来目的のためにその収益を充当するための、いわばお金も
うけのための事業のことです。例えば、環境保護を目的としたNPO法人が、空いてい
る土地を利用して駐車場経営をしたり、海外での難民援助を目的としたNPO法人が、
事務所のスペースを利用して喫茶店を経営するような場合です。

(2)税法上の収益事業とは、NPO法人の本来事業/非本来事業に関わりなく、限定
列挙された33業種をさし、これにあたる事業は税法上の収益事業であるとして課税さ
れます。
(33業種については、シーズのホームページのトップページにある「FAQ集」の次
のページから「NPO法人に法人税が課税されるのはどんな場合ですか?」の質問をご
参照ください /topics/old/faq/faq_cat8/
例えば、介護保険事業は、33業種のなかの医療保健業にあたり、税法上は収益事業と
して課税されます。しかし、高齢者の福祉を目的としたNPO法人が介護保健事業を行
えば、NPO法上では本来事業です(しかし、本来事業とはいえ課税です)。

もし、(1)のNPO法上の収益事業(つまり、本来事業ではない事業)の比率が全体
の50%を超えた場合には、問題が発生します。というのは、NPO法人は特定非営利
活動を主として行う法人であり、その他の事業(つまり、本来事業ではない事業)は従
たるものだからです。図で示すと、次のようになります。

特定非営利活動に係る事業 > 収益事業+その他の事業

この場合、この割合を計るのは、必ずしもかかった費用の額の大小ばかりではなく、対
象者の数や実施回数、かかった人手や時間の量なども目安にすることが可能だと解釈さ
れてきました。

なお、西村さんの団体が、NPO法上の収益事業(本来事業ではない事業)が、特定非
営利活動よりも大きくなった場合には、所轄庁から報告を求められたり、検査されたり、
改善命令を受けることがあるかもしれません。また、場合によっては認証の取り消しと
いうこともあり得ます。こうした罰則については、NPO法の41、42、43条をご
参照ください。

以上が、従来のNPO法の解釈です。

ところが、2月4日に発表された内閣府の新基準は、上記よりも厳しい内容となってい
ます。
新基準では、NPO法上の収益事業(非本来事業)は、
「特定非営利活動の目的を実現するために『支障がない限り』認められるものであるこ
とから、収益事業の事業規模は過大なものであってはならず、その支出規模は総支出額
の2分の1以下にとどめなければならないと解される。これは、収益事業に比重がかか
りすぎれば、特定非営利活動に係る事業の実施に必要な財産、資金、要員、施設等を圧
迫するおそれがあり、更に収益事業経営が悪化すれば、法人の運営自体が困難になる危
険性をはらんでいるためである。」
としています。

つまり、従来は先に書いたように、本来事業と非本来の収益事業の割合を計る時に、支
出の額だけではなく、対象者の数や実施回数、かかった人手や時間量も目安にすること
ができると解釈されてきたところが、新基準では支出だけで見る、ということになって
いるのです。また、新基準では、収益事業で得た利益は全額、本来事業に繰り入れなけ
ればならないとしています。

そして、新基準ではこれらが守られていない場合は、「報告徴収・立入検査を行うなど、
所轄庁が当該NPO法人に対して監督に入ることも考えられる。」としています。

この新基準はあくまでも所轄庁のひとつである内閣府が示したもので、現在は「論点整
理」という形で出ているものです。しかし、内閣府は5月からはこの基準をスタートさ
せたいとしています。他の所轄庁のなかにも、この基準を採用したいと考えているとこ
ろもあるかもしれませんし、別の基準を考えている所轄庁もあるかもしれません。

以上、長くなりましたが、参考になれば幸いです。

シーズ事務局・轟木 洋子

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