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理事主導型・執行役員について 投稿者:こなひろ 投稿日:2003/03/31(Mon) 18:36:00 No.2028
いつも参考にさせていただいています。
2項目ありますが
1、総会主導型と理事会主導型では条文の違いはどうなるでしょうか?
2、理事にはある程度大御所に入っていただき、実際の業務(作業等)について執行役員を作ろうと思いますがどのようにすればよいでしょうか(条文について)
お願いします。
Re: 理事主導型・執行役員について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2003/04/02(Wed) 18:57:00 No.2029
こなひろさん、

質問箱をご利用いただき、ありがとうございます。

ご質問は定款の書き方についてですね。
まず、最初のご質問ですが、総会主導型と理事会主導型の定款の違いの大きなものは、
理事会と総会の「権能」を、それぞれどう書くかということです。有斐閣の「法律学
小辞典」によれば、権能とは「法令上認められている能力」とか「権利の個々の機能」
という意味だそうです。

総会主導型であれば、総会の権能を大きくして、その分理事会の権能を小さくします。
理事会主導型であれば、理事会の権能を大きくして、その分、総会の権能を小さくし
ます。

ただ、注意しなければならないことがいくつかあります。
例えば、理事会主導型で定款を書こうとして、理事会の権能を大きくしようとする時
でも、NPO法において、定款の変更や、解散・合併は、必ず総会に付さなければな
らないと定められていますから、これらの決定を理事会の権能とすることはできませ
ん。

また、総会主導型にしようとして、総会の権能を大きくし、予算の変更も総会の議決
事項としてしまうと、年度の途中で予算変更をしようとする時に、臨時総会を開催し
なければならなくなってしまいます。予算の変更を総会ですると定款で書くことは
もちろんできますし、所轄庁では、これを薦めているところが多いのですが、運営上
は大変ですから、あまりおすすめはできません。

以下に、理事会主導型と、総会主導型、またその中間型の定款における、理事会・総
会の「権能」部分、また「事業計画および収支予算」と「事業報告および決算」部分
の例を示しますので、参考にしてみてください。
(なお、所轄庁のなかには、理事会主導型を嫌がるところもあります。所轄庁が示す
定款例にならって書き直させようとするところもありますが、自分たちの運営に支障
となるような条文は、後々自分たちが苦労するだけですから、十分気を付けて、折れ
ないところは折れないで頑張ってください。)

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※ 以下の例は、定款例の一部を抜粋したものです。あくまでも参考としてお読みい
ただき、こなひろさんが実際にお作りになる時は、全体の整合性などにも注意しなが
らお書きください。以下の部分以外にも総会や理事会などが関係する条文があると思
います。

<例>
【 理事会主導型の場合 】
(理事会の権能)
○○条 理事会は、この定款に定めるもののほか、次の事項を議決する。
(1)事業の計画および収支予算の作成並びにその変更
(2)会費の額
(3)理事の選任、解任、報酬、職務
(4)総会に付すべき事項
(5)その他本会の運営に関する必要な事項

(※理事会で監事の選任はできませんので、ご注意ください)

(総会の権能)
○○条 総会は、特定非営利活動促進法およびこの定款に規定するもののほか、理事
会が総会に付すべき事項として議決したことを議決する

(事業計画および収支予算)
○○条 本会の事業計画および収支予算は、理事長が作成し、毎事業年度開始前に理
事会の議決を経なければならない。
2 事業計画および収支予算の変更は、理事会の議決を経て行う。

(事業報告および決算)
○○条 本会の事業報告書、収支計算書、財産目録および貸借対照表は、理事長が事
業年度終了後に遅滞なくこれを作成し、監事の監査を経た上、当該事業年度終了後の
通常総会の承認を得なければならない。

【 総会主導型 】
(理事会の権能)
○○条 理事会は、この定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
(1)総会に付議すべき事項
(2)総会の議決した事項の執行に関する事項
(3)事務局の組織および運営に関する事項
(4)その他総会の議決を要しないこの法人の業務の執行に関する事項

(総会の権能)
○○条 総会は、本法人の運営に関する次の事項を議決する。
(1)事業計画および収支予算の承認ならびにその変更
(2)役員の選任および解任、職務、報酬
(3)入会金、および年会費の額
(4)定款の変更
(5)合併
(6)解散
(7)解散した場合の残余財産の処分
(8)その他尾、理事会が総会に付すべき事項として議決した事項

(事業計画および収支予算)
○○条 本法人の事業計画案およびこれに伴う収支予算案は、代表が作成し、毎事
業年度開始前に理事会の議決を経なければならない。
2 前項の規定による理事会の議決を得た事業計画案および収支予算案は、その事
業年度開始後最初の総会の承認を得なければならない。
3 総会で事業計画案および収支予算案の変更が議決された場合は、その変更の方
針にしたがって、総会終了後速やかに、代表が事業計画案および収支予算案を変更
し、理事会の議決を得るものとする。ただし、総会の再度の承認は必要とはしない。
4 代表は、前項の変更された事業計画および収支予算は、その事業年度終了後の
総会に報告することとする。
5 本法人は、第2項の総会の承認を得るまでの間は、本条第1項の理事会が議決し
た事業計画案および収支予算案をもって、事業を行うものとする。

(事業報告および決算)
○○条 本法人の事業報告書、収支計画書および貸借対照表、財産目録等の決算に
関する書類は、代表が事業年度終了後に遅滞なくこれを作成し、監事の監査および
理事会の議決を経た上、その事業年度終了後の通常総会の議決を経なければならな
い。


【 中間型 】
(理事会の権能)
○○条 理事会は、この定款で定めるもののほか、次の事項を議決する。
(1)事業計画および収支予算の作成ならびにその変更
(2)事務局の組織および運営
(3)総会に付議すべき事項
(4)その他、運営に関する事項

(総会の権能)
○○条 総会は、本会の運営に関する次の事項を議決する
(1)事業報告および決算の承認
(2)役員の選任および解任、職務、報酬
(3)年会費の額
(4)定款の変更
(5)合併
(6)解散
(7)解散した場合の残余財産の処分
(8)その他、理事会が総会に付すべき事項として議決した事項

(事業計画および収支予算)
○○条 本会の事業計画およびこれに伴う収支予算は、会長が作成し、毎事業年
度開始前に理事会の議決を得なければならない。
2 前項の規定による理事会の議決を得た事業計画および収支予算は、当該事業
年度中の通常総会に報告しなければならない。
3 第1項に規定した理事会の議決を得た事業計画および収支予算の変更は、理
事会の議決を経て行うことができる。ただし、変更された内容に関して、理事会
は、当該事業年度終了後の通常総会に報告するものとする。

(事業報告および決算)
○○条 本会の事業報告書、財産目録、貸借対照表および収支計算書等の決算に
関する書類は、会長が事業年度終了後に遅滞なくこれを作成し、監事の監査およ
び理事会の議決を経た上、当該事業年度終了後の通常総会の議決を経なければな
らない。
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なお、2番目のご質問ですが、理事会のなかに、いわゆる大御所理事と、実際に
執行を担う執行責任理事の両方をいれるようにするということでしょうか。
それとも、理事会は大御所理事だけにして、実際の執行は役員ではない人から構
成される「運営委員会」のようなものをつくり、ここの運営委員が担っていく、
ということでしょうか?
あるいは、理事会の他に、たとえば事務局長のような人が実際には執行を担って
いくということでしょうか?

それぞれでお答えが違ってきますので、もう少し詳しくお書きいただけますでし
ょうか?

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 理事主導型・執行役員について 投稿者:ぱいん 投稿日:2003/04/03(Thu) 02:04:00 No.2030
こなひろ様
>
> 2、理事にはある程度大御所に入っていただき、実際の業務(作業等)について執行役員を作ろうと思いますが
> どのようにすればよいでしょうか(条文について)お願いします。

大御所である方に名前を借りて理事に就任していただくケースがあると思いますが、
登記には、単に「住所
        理事 何某
         生年月日」としか登記しません。
このため、その某大御所が実際に業務に携わっているか、単に名前だけか、第三者にはわかりません。
法律的には、相手方は最低でも登記事項は確認すべきですが定款や細かい社内規則まで確認する義務を課してはいません。

仮に業務上の負債を抱えた場合に、社員から善良な管理者としての注意義務に違反したと責任を追及される可能性があることは当該大御所さんにはご認識いただく必要があるでしょう。

理事から委任を受けて業務を執行する責任者として事務局を設置し、理事の中から事務局長を選任して委任する場合や
単に事務を行う責任者として事務局長という役職の使用人を設けることも差し支えないと思います。
そうだからといって理事が経営責任を免れることはありません。
また事務局長が理事兼務でないときは単に使用人の役職でしかないという点に留意してください。

そもそも、理事でない事務局長には、商法法人の支配人のように 特定非営利活動法人を代表して契約などの法律上の行為を行う権能が法律上与えられていません。
支配人は株式会社や有限会社の場合は取締役会の決議で、合名会社、合資会社の場合は社員総会の決議で選任します。
支配人は、登記所で住所、氏名及び生年月日が登記されます。執行役制度を導入した委員会等設置株式会社も同様に執行役の住所、氏名及び生年月日を登記します。 
ところが、特定非営利活動法人の場合は、商法第38条のような法律による授権がなく、また事務局長や所長は登記事項でもないので、同人の行為は善意の第三者に対抗できません。
地方自治法、地方公務員法を参考までに 投稿者:サンプラ 投稿日:2003/04/04(Fri) 15:01:00 No.2031
轟木さんやぱいんさんが答えられているとおりですが、ちょっと公務員法などを
調べてみましたので、参考までに。

○ 嘱託職員が地方公務員法の適用を受けるか。
  ⇒ 地方公務員法第3条第3項
    嘱託員は特別職公務員に該当する。
  ⇒ 地方公務員法第4条第2項
    特別職の地方公務員には地方公務員法は原則として(※)適用されない。
(※例外)
・別途法律に特別の規定がある場合
・特別職たる者に、一般職たる者の行う事務の取扱を兼ねて行わせている場合は、
 一般職に属する地方公務員として同時に地方公務員法上の全面適用を受ける
    (昭和25年5月10日行政実例)
 (例)嘱託員が個人のプライバシーに関する事務を行なっていれば、地方公務
 員法上の守秘義務の規定が適用される。


○ 公務員や公務員が役員を勤める法人は当該地方公共団体の発注する事業を受
  託できるか。
(1)下記の事例を除き一般的に禁止した法律はない。
  ⇒ 地方自治法第142条、92条の2
    普通地方公共団体の長や議会の議員(いずれも特別職の地方公務員)は、  
    当該普通地方公共団に対し請負をし、若しくは当該普通地方公共団体に
    おいて経費を負担する事業につき…請負をする…法人の無限責任社員、
    取締役若しくは監査役若しくはこれに準ずべき者…たることができない。
  ⇒ 地方自治法第238条の3
    公有財産に関する事務に従事する職員は、その取扱に係る公有財産を譲
    り受け、又は自己の所有物と交換することができず、これに反する行為
    は無効。

(2)そもそも、公務員は職務専念義務など地方公務員法上の規定により、営利
企業の役員になったり報酬を受けたりすることはできないことになっている。
  ⇒ 地方公務員法第38条
    職員は任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営む
    ことを目的とする会社その他の団体(※)の役員…の地位を兼ね、…又は
    報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。

(※)商業、工業、金融業等利潤を得てこれを構成員に配分することを主目的と
する企業体をいう。商法上の会社のほか、法律によって設立される法人等で、主と
して営利活動を営むものが該当する。
Re: 地方自治法、地方公務員法を参考までに 投稿者:遠藤 投稿日:2003/04/08(Tue) 00:28:00 No.2032
サンプラさん、
すごく参考になりました。
「困っています」の質問者で、このケースの者ではないのですが
ありがとうございます。
Re: 地方自治法、地方公務員法を参考までに 投稿者:サンプラ 投稿日:2003/04/08(Tue) 10:25:00 No.2033
「2238」の遠藤さんのところに投稿しようとしていて、まちがってしまいました。
でも、探してくれてよかったです。
まだ慣れないもので、すみません。

サンプラ
事務局について 投稿者:ぱいん 投稿日:2003/04/05(Sat) 00:30:00 No.2034
事務局について、一寸補足です。
特定非営利活動促進法や民的には事務局に関する規定がありません。
法律上、理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、
特定非営利活動法人を代表し、特定非営利活動法人の業務は、
定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決することになります。
事務局を設置し、理事から委任を受けて業務を行うため日常の業務の執行を委任して理事の中から事務局長を選任して委任する場合や
単に日常の事務を行う組織の責任者として事務局長という役職の使用人を設けることは差し支えないと思います。
そうだからといって理事が経営上の責任を全く免れるということはありません。
また事務局長が理事を兼務しないときは単に使用人の役職でしかないという点に留意してください。
理事でない事務局長には法人を代表する権限がありませんので、相手方から契約を拒まれることがあります。

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