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定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:リヴォルヴ 田中 投稿日:2003/04/28(Mon) 11:32:00 No.2129
総会の案内を出す時期になりました。今回は文章ですでに送ったところなのですが、
理事会で通信費の節約をしようと持ち上がり、総会の案内文などの文章もメールで
送ることができれば通信費の削減になるなと思ったところです。

定款上は総会の招集は「文書をもって」とあります。これはメールではダメなのでしょうか?

また、欠席者などの委任状については今は葉書に署名、捺印をお願いしているのですが、
定款上では特に委任に関してはどうする(書面でとか)のかは明記していません。
これもメールの返信に記名すれば済むものでしょうか?

委任状に印鑑や署名が必要なのは一般的な話だと思うのですが、それが無ければ
効力は無いのでしょうか?

今後の参考にさせていただきたいので、ご回答いただければと思います。
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2003/04/28(Mon) 19:37:00 No.2130
リヴォルヴ田中さん、

ご投稿ありがとうございます。

さて、まずは総会の招集をメールでして良いか否かということですが、総会の招集に
ついて定めている民法第62条は次のように定めています。

「総会の招集は少なくとも五日前に其会議の目的たる事項を示し定款に定めたる方法
に従いて之を為すことを要す」

つまり、それぞれの団体の定款で召集方法は定めるということになっています。
リヴォルヴ田中さんの団体では「文書をもって」召集すると定款で定めているという
ことですから、この文書に電子メールが含まれるか否かという問題になってきます。

定款に定めた「文書」という言葉に、電子メールが含まれるか否かについて、法務省
民事局に聞いてみました。そのお答えは、「文書というのは紙を媒体として書かれた
ものです」ということでした。
また、有斐閣の「法律用語辞典」には「紙片その他の有機物」に書かれたものとあり
ます。
法務省の方は、「電子メールやFAXでは原本性が確保されません。将来は分かりま
せんが、現在のところは文書としては扱えません」とおっしゃっていました。

この解釈によれば、リヴォルヴ田中さんの法人は定款で「文書をもって」と書いてし
まったために、電子メールでの召集ができなくなっているということになります。
なお、NPO法人のなかには、「総会の通知は、FAX、電子メール、書面をもって
行う」などと定款で定めている団体もあります。

次に委任状についてですが、これは民法第65条にその定めがあり、次のように書か
れています。
「総会に出席せざる社員は書面を以って表決を為し又は代理人を出だすことを得」
つまり、法律で委任状は「書面」でなくてはならないと定めてあるということです。
書面とは、文書と同様とされています。そのため、委任状はFAXや電子メールでは
扱えません。また、法律で「書面」と定めてあるため、定款で別の方法を決めること
もできません。

電子メールの原本性確保については、今いろいろと議論もされているようですが、
まだ少し時間がかかるようです。

総会委任状に自筆署名や印鑑が必要か否かには、別途また調べて回答いたします。

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:ぱいん 投稿日:2003/04/30(Wed) 01:45:00 No.2131
轟木様

「召集」と「招集」は厳然と意味が違って、
召集は上下関係のあるものが参集を命じることで、
現在 法律では何故か天皇が国会を召集するときにのみ用います。

他方、招集は対等な関係にあるものが参集するよう要請することです。
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2003/04/30(Wed) 10:17:00 No.2132
ぱいんさん、

ご指摘ありがとうございました。招集と召集が混じってしまっていました。
招集と召集の意味の違いも、なるほどよくわかりました。
今後もよろしくお願いいたします。

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:リヴォルヴ 田中 投稿日:2003/04/30(Wed) 12:13:00 No.2133
轟さんありがとうございました。
定款を変更することも検討したいと思います。
しかし、委任状は無理そうですね。

署名と印鑑の件もご回答お待ちしております。
というのも、委任状が帰ってきましたが、印鑑が無い方も
いらっしゃるので、また郵送費をかけて返信してという作業が
必要なのかも気になるのです。

これだけメールが普及していてもまだ法律は変わらないんでしょうかね。
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2003/05/05(Mon) 16:01:00 No.2134
リヴォルブ田中さん、

その後、弁護士の浅野晋さんに問い合わせをしていたのですが、前に私がお答えした
委任状に関する重要な部分に誤りがあることがわかりましたので、お詫びして訂正い
たします。

民法第65条の
「総会に出席せざる社員は書面を以って表決を為し又は代理人を出だすことを得」
という条文の解釈についてです。
この「書面を以って」という文言は「表決を為し」にかかるのであって、「代理人
を出だす」にはかからないということです。つまり、委任状は書面ではなくて良いと
いうことになります。

以下は、浅野弁護士の説明です。

----------------------
「委任状という書面が必要かどうかについては、法律家にとってはあまりに当たり
前のことのようで、ざっと調べましたがはっきり書いた文献がありません。代理人
を書面で出すというようなニュアンスの記載はありません。
 そもそも、『委任』というのは受任者が委任者から委任を受けた事務を行う法律
的義務を負担するという両者間の内部関係の問題であり、『代理』というのは代理
人の行為によって本人に法律効果を及ぼすことの出来る地位又は資格のことです。
 そもそも、『委任』も『代理』も、例えば遺言とか定款といった要式行為(一定
の方式を必要とする法律行為)ではありませんから、これを書面でしなければなら
ないという制約など存在しないのです。口頭で『委任』をし、口頭で『代理行為』
をすることは全くの自由です。 
 そして『委任状』というのは、委任事項について代理人に『代理権』という資格
を授与したことを記載している証拠書類にしかすぎません。
 従って、もし代理人を出して評決するときは委任状という書面を出さなければな
らないということであれば、民法65条の『書面を以て代理人を出す』という表現
は法律上の表現として正確性を欠くことになります。つまり民法65条は『書面と
いう証拠書類で代理人を出す』ということになりますが、これは法律的表現として
は舌足らずでとんちんかんです。
 代理人に総会に出て審議事項について評決することを委任したのであれば、その
ことを委任状という書面で証明しなければならないというのであれば、正しくは民
事訴訟法規則23条のように『但し、代理人の権限は、書面で証明しなければなら
ない。』との文言で表現することになります。」
-------------

また、浅野さんには、上記のように「代理人の権限は書面で証明しなければなら
ない」と定めた民事訴訟法規則第23条について争ったケースでさえも、
「規定に反して代理権を証明するにたりる書面の提出がないまま訴訟を進行した
場合でも、代理人がほんとうに代理権をあたえられている以上その訴訟行為は当
事者本人も当然予期するところとみるべきである・・・」
とした判例が過去にあることも教えていただきました。

よって、民法第65条を適用されるNPO法人の総会の委任状は、定款に定めてい
ない限り、書面でなくても良いということになります。以上、訂正いたします。

ただし、浅野さんは以下のようにもおっしゃっています。
「ただ、通常は委任状という書面によって代理権を証明するのが普通です」

また、署名と捺印については、次のようにお答えいただきました。

-------------------
「委任状は、誰が委任しているかがわからなければ困りますし、委任したという証
拠を残す意味で、住所氏名を記載し、捺印するのが通例ですが、これはあくまで証
明のためですから、突き詰めて考えると
  ①住所の記載がなくても有効
  ②署名でなく記名(ゴム印やワープロ、代筆等)でもかまわない
  ③捺印がなくても有効
ということになります。
 そうすると、極端な場合、委任文言の他ワープロで氏名を記載してあるだけで、
住所の記載も自筆の署名も捺印もないという委任状でも有効ということになります。
 変に思われるかもしれませんが、そもそも委任を文書で行う必要すらないわけで
すから、ワープロで書いた氏名だけでも有効だということになるわけです。
 ただ、それでは本当に委任があったのかどうかはっきり判りませんし、又口頭の
委任では後日の証拠としても残りません。
 そこで、通常は委任状によって委任があったことを証明してもらうことにします
し、またその委任状には住所を記載し、署名捺印してもらうのが通常です。
 しかし、「通常」といっても時には訳の分からない人もいますので、ワープロで
氏名を記載しただけで捺印のない委任状を提出する人もいて、その処置に困ること
もあり得ます。従って、書面評決や代理人による評決については、規則によって様
式を決めておいた方がといいと思います。なお、委任状の書式についての法律はあ
りません。」
-------------------

委任状への署名や捺印について法律で定めたものはないから、あとは団体のなかで
規則をつくるなりして決めた方が良いとのアドバイスでした。リヴォルヴ田中さん
のところに届いた捺印のない委任状についてどうするかは、団体内部で判断してい
ただくことになりそうです。

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 定款上の「書面」とはメールも入るのでしょうか? 投稿者:ぱいん 投稿日:2003/04/30(Wed) 22:44:00 No.2135
>NPO法人のなかには、「総会の通知は、FAX、電子メール、
>書面をもって行う」などと定款で定めている団体もあります。

電磁的方法で招集の通知を行うのには私は消極に解しています。

高度情報ネットワーク社会が進展しても、電子メールやファックスが
受信できる環境にない社員が著しく不利になる可能性があることは
許されないでしょう。

また、招集通知書には理事の代表社員を押印するように、
他人の成りすましを防ぐため、当該メールには、
理事の公的認証機関による電子署名を施す必要もあるでしょう。

受信側の環境次第で、添付ファイルが添付できない環境があるので、
受信できない可能性もあります。

最低でも こういった対策を講じる必要があるでしょう。

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