市町村長がNPO法人の役員になることについて 投稿者:
くじら 投稿日:2003/05/08(Thu) 14:59:00
No.2178
5月8日付けの毎日新聞によると、島根県平田市の前市長が、
自分が理事長を務めるNPO法人の事務局業務の一部を市職員に肩代わりさせていることは、
地方公務員法の職務専念義務違反にあたると総務省が指摘。
また市長がNPO法人の理事長をつとめていたことは、地方自治法の兼業禁止規定に
違反する可能性があると報道されています。
当町でもNPO法人を設立するにあたり、支援をする意味で事務の一部を手助けし、
役場の職員と町長が理事になっています。(理事長ではありません)
当方の認識では、公務員が理事等役員になることについては問題ないとの認識でしたし、
一定の助成(金銭的な助成だけに限らず、人的助成)も可能であるとの認識でしたが
このような記事をみると、警戒をしてしまいます。
どの程度の関わり方が、法的に問題が生じるものでしょうか?
Re: 市町村長がNPO法人の役員になることについて 投稿者:
ぱいん 投稿日:2003/05/13(Tue) 00:58:00
No.2179
くじら様
> 5月8日付けの毎日新聞によると、島根県平田市の前市長が、
> 自分が理事長を務めるNPO法人の事務局業務の一部を市職員に肩代わりさせていることは、
> 地方公務員法の職務専念義務違反にあたると総務省が指摘。
公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律というのがあります。
地方公共団体においては、公民の適切な連携協力により効率的かつ効果的に地方公共団体の諸施策の推進を図るため、人的援助を行うことが必要と
認められる公益法人等へ職員を派遣いたしておりますが、現在、公益法人等の業務に職員を専ら従事させることを目的とした制度はないことから、休職、
職務専念義務の免除などの制度の運用により派遣が行われており、訴訟等で問題となっていたので、地方公共団体からも法制度の整備を強く求められていました。
こうしたことから、職員派遣に関する統一的なルールを設定し、職員派遣の適正化、手続の透明化等を図るため、この法律が制定されました。
この制度では、職員が公務員としての身分を保有したまま公益法人等の業務に従事する職員派遣制度と、
職員が退職した上で一定の営利法人の業務に従事し、業務に従事すべき期間が満了した場合等に再び職員として採用する退職派遣制度があります。
公益法人等への職員派遣制度は、任命権者が、民法第三十四条の規定により設立された法人、特別の法律により設立された法人で政令で定め
るもの及び地方六団体のうちその業務が地方公共団体の事務または事業と密接な関連を有するものであり、かつ、地方公共団体の施策の推進を図るため
人的援助が必要であるものとして条例で定めるものの業務に専ら従事させるため、職員の同意を得て当該職員を派遣するものです。
派遣職員の給与については、地方公共団体は原則として支給しないこととしておりますが、地方公共団体の委託を受けて行う業務、地方公共団体と共
同して行う業務に従事する場合等には、条例で定めるところにより支給することができることとなっています。
設問の場合、もっぱら法人の業務に従事していないが、当該公益法人の業務を行うことが公務員の職務に専念する義務に抵触する問題があります。
当該地方公共団体の条例が必ずしもはっきりしませんが、この法律が出来たときに職務に専念する義務の特例に関する条例が改正され、
職員が国又は他の地方公共団体その他の公共団体若しくはその職務と関連を有する公益に関する団体の事業又は事務に従事する場合に限られますが
その条項に該当し、かつ、職務を専念する義務を免除する手続が行われたかという問題があります。
> また市長がNPO法人の理事長をつとめていたことは、地方自治法の兼業禁止規定に
> 違反する可能性があると報道されています。
地方自治法では 地方公共団体から請負をする営利企業の役員を兼ねてはならないとなっています。
これは地方議員でも同じです。
> 当町でもNPO法人を設立するにあたり、支援をする意味で事務の一部を手助けし、
> 役場の職員と町長が理事になっています。(理事長ではありません)
> 当方の認識では、公務員が理事等役員になることについては問題ないとの認識でしたし、
> 一定の助成(金銭的な助成だけに限らず、人的助成)も可能であるとの認識でしたが
> このような記事をみると、警戒をしてしまいます。
> どの程度の関わり方が、法的に問題が生じるものでしょうか?
特定非営利活動法人に関しては最近問題になっていますが、以前でも地方公共団体の長が
財団法人の役員をすることはよく見られました。
例えば、財団法人大阪府暴力追放推進センターの会長理事は大阪府知事の齊藤房江(太田房江)さんです。
同法人は大阪府公安委員会が主務官庁です。
理事や評議員には 地方公共団体の長や職員、議員などが名を連ねています。
例えば、地方公共団体の長が理事などを兼ね、公の施設の管理を委託するときには、
主務官庁、出捐者(出資者)、委託元が結果として同一人物になるという問題があると思います。
こうした問題は、ほかの地方公共団体にも結構あるように思います。
違法ではないのですが 手放しで奨励できるかというと
問題視しなければならないでしょう。
Re: 市町村長がNPO法人の役員になることについて 投稿者:
くじら 投稿日:2003/05/15(Thu) 16:01:00
No.2180
ぱいん> 例えば、地方公共団体の長が理事などを兼ね、公の施設の管理を委託するときには、
ぱいん> 主務官庁、出捐者(出資者)、委託元が結果として同一人物になるという問題があると思います。
ぱいん>
ぱいん> こうした問題は、ほかの地方公共団体にも結構あるように思います。
ぱいん>
ぱいん> 違法ではないのですが 手放しで奨励できるかというと
ぱいん> 問題視しなければならないでしょう。
ありがとうございました。大変参考になりました。
そこでもう一つお教えください。
今回の質問は、法に定められてNPO法人の場合についてご質問させていただきましたが、
法人格を持たない、任意の非営利活動団体(人格無き団体)の場合、
問題は同じように発生するのでしょうか?
わが町の例です。
(例1)都市公園を管理してる「公園管理協会」という任意団体があり、その理事長は町長、
理事の構成は、関係課の課長や議会議長で構成されています。
協会の運営は、県からの委託金3000万円あまり、町からの補助金500万円で運営されています。
(例2)○○保存会という任意団体があり、その会長には議員が、副会長に町長が就任しています。
年間予算は大変少なくて30万程度ですが、全額公費として支出(補助金と旅費など)されています。
これは法人格をもった場合です。
(例3)
社会福祉協議会は当然、社会福祉法人ですが、その事業は全て町からの委託事業でなりたっています。
その理事に議員が数名就任しています。
町長や課長などは就任していません。
以上3つの例に、どの程度違法性があるのかご教示ください。
Re: 任意団体の場合や社会福祉協議会の場合は? 投稿者:
ぱいん 投稿日:2003/05/16(Fri) 02:49:00
No.2181
くじら様
> ありがとうございました。大変参考になりました。
> そこでもう一つお教えください。
> 今回の質問は、法に定められてNPO法人の場合についてご質問させていただきましたが、
> 法人格を持たない、任意の非営利活動団体(人格無き団体)の場合、
> 問題は同じように発生するのでしょうか?
> わが町の例です。
> (例1)都市公園を管理してる「公園管理協会」という任意団体があり、その理事長は町長、
> 理事の構成は、関係課の課長や議会議長で構成されています。
> 協会の運営は、県からの委託金3000万円あまり、町からの補助金500万円で運営されています。
議会の議長は、都市公園の管理の委託に関する議案が提案されたときは、
当該事件に限り地方自治法第117条の規定により除斥され、副議長が議長の職務を行います。
教育委員会の委員や教育長は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律により、
農業委員会の委員は、農業委員会等に関する法律により同様の除斥規定があります。
地方公共団体の長にあっても、契約に関しては地方公共団体と団体双方を代理することは、
民法により問題があるので、当該契約に限り、助役(副知事)や規則で定める上席の吏員が
地方公共団体の長の職務を代理します。
補助金や委託料の交付決定(支出負担行為)や支出命令に際しても同様に処理されます。
> (例2)○○保存会という任意団体があり、その会長には議員が、副会長に町長が就任しています。
> 年間予算は大変少なくて30万程度ですが、全額公費として支出(補助金と旅費など)されています。
> これは法人格をもった場合です。
> (例3)
> 社会福祉協議会は当然、社会福祉法人ですが、その事業は全て町からの委託事業でなりたっています。
> その理事に議員が数名就任しています。
> 町長や課長などは就任していません。
>
> 以上3つの例に、どの程度違法性があるのかご教示ください。
議会の議員については地方公共団体から請負をする営利事業をしている場合は、
失職することになっています。
非営利法人の場合は、このような規定はありません。
しかし、当該法人との物件供給契約や財産取得、
公有財産の処分に関する契約を議決する際には、除斥されます。
Re: 任意団体の場合や社会福祉協議会の場合は? 投稿者:
くじら 投稿日:2003/05/16(Fri) 11:11:00
No.2182
たびたび申し訳ありません。少し分かりかねるところがありますのでまた教えてください。
主としてとは、普通公共団体等に対する請負量が、法人全体の業務量の半分を超える場合は、
「主として同一の行為を行う法人」に当たる。
半分を超えない場合であってもその請負が業務の主要部分を占め、
その重要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが高いと認められる場合は、
「主として同一の行為をする法人」に当たる。(昭和62年、最高裁判例)
との判断から、行政からの請負などを大半とするNPO法人への特別職の公務員
(市町村長や議員)の役員就任は、地方自治法第92条の2及び同142条での
兼業の禁止条項に違反の可能性があると指摘されています。
一方昭和39年の判例で、
保育所が児童福祉法第24条の規定に基づく措置により、市町村長から委託を受けて
児童等の保育を行っている場合、この保育所の経営責任者が当該市町村の議会の議員であっても
本条に規定する請負に該当しない
との判例があります。
それに照らし合わせたとき、
全額地方公共団体の委託金で運営されている社会福祉法人の役員に当該市町村の議会議員が就任する
ことは問題ないのかと判断しますが、
NPO法人では兼業の禁止規定に触れるという部分が良く理解できません。
それぞれの法の規定によるのでしょうか?
もう少し教えていただけませんか?
Re: 市町村長がNPO法人の役員になることについて 投稿者:
ぱいん 投稿日:2003/05/14(Wed) 00:00:00
No.2183
くじら様
> 当町でもNPO法人を設立するにあたり、支援をする意味で事務の一部を手助けし、
> 役場の職員と町長が理事になっています。(理事長ではありません)
> 当方の認識では、公務員が理事等役員になることについては問題ないとの認識でしたし、
> 一定の助成(金銭的な助成だけに限らず、人的助成)も可能であるとの認識でしたが
> このような記事をみると、警戒をしてしまいます。
> どの程度の関わり方が、法的に問題が生じるものでしょうか?
補足です。
地方公務員法第30条では、すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならないと定めています。
また、同法第35条では、職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければなりません。
職員の職務の専念する義務の特例に関する条例の委任による東京都人事委員会が職員の職務に専念する義務の免除に関する規則第2条第2号で「職員が国又は他の地方公共団体その他の公共団体若しくはその職務と関連を有する公益に関する団体の事業又は事務に従事する場合」と定めているなど都道府県や政令指定都市で人事委員会があり、基準が定められている場合ではまだいいんですが、
例えば、職務の専念義務免除に関する条例で、「市長が必要と認める場合」と定めており、規則などで基準を定めていない場合は問題があるかもしれません。
その法人の理事に地方公共団体の長など 任命権者がいる場合には、任命権者が私的利益のために法人の業務を職員に従事させるとの誹りを受けることになるでしょうし。監査請求や住民訴訟に耐えられないように思います。
もともとNPOだけでなく、公益法人でも役員の公務員構成比率が高いのは問題です。
そもそも、地方公共団体とは別個の法人を設立する意味があるのか 疑わしくなります。
もし、公務員に役員になってもらう場合に、気を付けていただきたいのは、
理事を上司や任命権者に持つ人を監事にすると当該監事としての職務の公正さが
損なわれるおそれがあるという問題もありますので、ご留意ください。