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引当金の処理について 投稿者:いんちきおやじ 投稿日:2003/05/14(Wed) 18:54:00 No.2208
 従来より住民参加型介護派遣サービスを行ってきた団体ですが、今年度から
支援費制度の指定事業者となり、それなりの事業収入が見込めるようになった
ので、これまでしたくても赤字運営のためできなかった、休業補償や退職金や
備品の減価償却などに備えた引当預金を設けようと考えています。
 さて、以前地元のNPO法人マネジメントセミナーで、「NPO法人は引当金計上
しなくてもよい(損益計算がないため)。引当預金用の別講座に預金するだけ
でよい」と教わったのですが、これはつまり、収支計算書上も、表示する必要
がないということなのでしょうか? それとも、やはり何らかの経理上の処理
が必要なのでしょうか?
Re: 引当金の処理について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2003/05/15(Thu) 18:45:00 No.2209
いんちきおやじさん

>  さて、以前地元のNPO法人マネジメントセミナーで、「NPO法人は引当金計上
> しなくてもよい(損益計算がないため)。引当預金用の別口座に預金するだけ
> でよい」と教わったのですが、これはつまり、収支計算書上も、表示する必要
> がないということなのでしょうか? それとも、やはり何らかの経理上の処理
> が必要なのでしょうか?

NPO法人の収支計算書には決まりがないので、必ずこうするべきだというわけ
ではありませんが、特定の目的のために積立金を設けるのであれば収支計算書に
その旨の表示はあった方がいいと思います。ただし支出に計上しても法人税法上
の損金にはなりません。

確かにNPO法では損益計算という概念はありません。しかし、法人税法上の収
益事業を行う場合は、申告のためには損益計算が必要になりますし、その場合は
積立金を設けるだけではなく引当金も計上しなければ損金とは認められません。
もっともNPO法人で損金が認められるような引当金は、貸倒引当金等のごく一
部しかないことも事実です。

             公認会計士・赤塚和俊
Re: 引当金の処理について 投稿者:いんちきおやじ 投稿日:2003/05/16(Fri) 00:03:00 No.2210
さっそくのご回答、ありがとうございます。

> 確かにNPO法では損益計算という概念はありません。しかし、法人税法上の収
> 益事業を行う場合は、申告のためには損益計算が必要になりますし、その場合は
> 積立金を設けるだけではなく引当金も計上しなければ損金とは認められません。
> もっともNPO法人で損金が認められるような引当金は、貸倒引当金等のごく一
> 部しかないことも事実です。

支援費制度の事業は法人税法上の収益事業になると思うのですが、その場合、例示
したような引当金は、損金計上できないということでしょうか?
NPO法人で損金計上できる引当金には「貸倒引当金」(これはどういう意味なんで
しょう?)のほかに、どんなものがあるのですか?
Re: 引当金の処理について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2003/05/16(Fri) 06:47:00 No.2211
いんちきおやじさん

> 支援費制度の事業は法人税法上の収益事業になると思うのですが、その場
> 合、例示したような引当金は、損金計上できないということでしょうか?

いんちきおやじさんが例示された中で、備品の減価償却は引当金を設けなく
ても備品そのものの簿価から差し引くことで損金算入できます。休業補償に
関しては引当金の損金算入は認められません。退職給与引当金は、平成14年
度以降は一切、損金算入が認められなくなりました。

> NPO法人で損金計上できる引当金には「貸倒引当金」(これはどういう意味
> なんでしょう?)のほかに、どんなものがあるのですか?

貸倒引当金とは、売上債権や未収入金や貸付金について、一定の回収不能を
見込んだ引当を損金算入できるという制度です。貸金を個別に評価する方法
と実績率で計算する方法があります。NPO法人を含め中小企業の場合には
実績率ではなく法定繰入率を使う方法も認められます。通常はこの法定繰入
率を使います。卸・小売業で債権残高の1%、製造業で0.8%、その他の事業
で0.6%です。ただし毎年洗い替えますから初年度以外は節税効果は大きく
ありません。

このほかに法定の引当金には返品調整引当金や特別修繕引当金などがありま
すが、業種等で適用範囲が限定されていますので、NPO法人で利用できる
ことは普通は考えられません。

              公認会計士・赤塚和俊
Re: 引当金の処理について 投稿者:いんちきおやじ 投稿日:2003/05/18(Sun) 00:56:00 No.2212
赤松さん。

よくわかりました。ありがとうございました。

> いんちきおやじさんが例示された中で、備品の減価償却は引当金を設けなく
> ても備品そのものの簿価から差し引くことで損金算入できます。

これは、要するに、備品に関しては、減価償却費という形で計上すれば損金算
入できる、という意味ですよね?
Re: 引当金の処理について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2003/05/18(Sun) 05:27:00 No.2213
いんちきおやじさん

> > いんちきおやじさんが例示された中で、備品の減価償却は引当金を設けなく
> > ても備品そのものの簿価から差し引くことで損金算入できます。
>
> これは、要するに、備品に関しては、減価償却費という形で計上すれば損金算
> 入できる、という意味ですよね?

その通りです。

    公認会計士・赤塚和俊
Re: 引当金の処理について 投稿者:障害者団体NPO 投稿日:2003/05/20(Tue) 13:20:00 No.2214
横から質問、すみません。

以前、入院介護保障基金の件で質問させていただいたものです。ありがとうございました
障害者が入院したときに病院に介護にいく間の介護費用の出る介護保障基金では、
法人外に完全独立したメンバーの基金があれば、掛け金は経費となるのでOKとのことでしたが、
介助者の休業補償(障害者の入院で介護者が自宅待機になった場合や、入院などでなく突然のキャンセルで仕事がなくなった)という名目では、基金への掛け金が経費として認められないのでしょうか?
Re: 引当金の処理について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2003/05/21(Wed) 08:10:00 No.2215
障害者団体NPOさん

> 以前、入院介護保障基金の件で質問させていただいたものです。ありがとうござ
> いました障害者が入院したときに病院に介護にいく間の介護費用の出る介護保障
> 基金では、法人外に完全独立したメンバーの基金があれば、掛け金は経費となる
> のでOKとのことでしたが、介助者の休業補償(障害者の入院で介護者が自宅待
> 機になった場合や、入院などでなく突然のキャンセルで仕事がなくなった)とい
> う名目では、基金への掛け金が経費として認められないのでしょうか?

給付金が団体ではなく介助者本人へ直接渡るのであれば掛金は経費となりますが、
同時に給付が発生した時点ではなく掛金を支払った時点で介助者の所得として課税
があると考えられます。制度の趣旨からしていわゆる所得補償保険であり本人が負
担すべき保険料を団体が肩代わりしたものとみなされるからです。

          公認会計士・赤塚和俊
Re: 引当金の処理について 投稿者:障害者団体NPO 投稿日:2003/05/28(Wed) 11:08:00 No.2216
保険料を年に何回か払うときにヘルパーに所得税として課税ということですが、
この実務方法が難しいですがどのようにすればいいでしょうか。

・団体でヘルパー制度収入の10%を掛け金にしている場合(年数回、不定期時期に掛け金入金)、個々人の掛け金というのははっきりとは決まっていません。
 たとえば給与の比率で全員に按分すればいいのでしょうか? (年末調整で引くのでしょうか。掛け金を支払った月だけ支払うのでしょうか。あるいは複式会計上は毎月の費用計上ですので、毎月源泉でしょうか)

・もう1点、保険料相当分の所得税を多めに源泉徴収しなければいけないということかと思うのですが、これは労働基準法の賃金全額支払の原則とは抵触しないでしょうか?
Re: 引当金の処理について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2003/06/01(Sun) 18:48:00 No.2217
障害者団体NPOさん

> ・団体でヘルパー制度収入の10%を掛け金にしている場合(年数回、不定期時期
> に掛け金入金)、個々人の掛け金というのははっきりとは決まっていません。
>  たとえば給与の比率で全員に按分すればいいのでしょうか? (年末調整で引く
> のでしょうか。掛け金を支払った月だけ支払うのでしょうか。あるいは複式会計上
> は毎月の費用計上ですので、毎月源泉でしょうか)

制度収入の10%を掛け金にするのであれば、その制度収入のもとになったヘルパー
の報酬は個々人ごとにわかるのではないですか。その比率でいいと思います。

> ・もう1点、保険料相当分の所得税を多めに源泉徴収しなければいけないというこ
> とかと思うのですが、これは労働基準法の賃金全額支払の原則とは抵触しないでし
> ょうか?

もちろん同意が必要です。その保険に加入することがヘルパーの意思に基づくもので
あり、徴収時点で概算であっても最終的に精算されるものであれば、問題ありません。

             公認会計士・赤塚和俊

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