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法人の必要経費について 投稿者:加藤昌雄 投稿日:2001/01/24(Wed) 16:32:00 No.258
いつもお世話様です。

さて、私たちは同じ理念に基づき自立援助サービスや介護保険サービスを行
っている非営利市民事業団体が連携して「サポート事業」を立ち上げようと議
論をしています。当面の構想として以下の項目を検討しています。

①人材養成、研修 ②危機管理 ③サービス評価 ④専門相談 ⑤短期貸付
⑥情報収集、提供 ⑦政策提言

そして、このサポート事業を継続発展させるために、提携契約を締結した団
体は一定程度の金額の分担拠出を行う必要があると考えています。
質問はその際の分担拠出金の税制上の取扱いについてですが、サポート事
業を利用する法人が拠出する分担金が必要経費としてみなされるでしょうか。
経費とみなされるとして、2000年度分の拠出金を通常総会で承認後、6月以降に
支払う場合、2000年度の決算処理で未払金とすることができるでしょうか。
また、必要経費と認められるためにはどのような要件があるかを教えて下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。
Re: 法人の必要経費について 投稿者:赤塚和俊 投稿日:2001/01/25(Thu) 11:45:00 No.259
加藤昌雄さん

 ご質問のケースは、非常に複雑な問題を含んでいます。
まず、第一に、連携して「サポート事業」を行う主体は
誰なのか、という問題です。①NPO法人もしくは他の
法人格(たとえば営利法人)を設立するのか、②法人格
を持たずに共同事業として行うのか、ということです。
ご質問の内容からすると②だと思います。

 次に、共同で行う「サポート事業」の事業内容ですが、
(A)共同事業体それ自体がサービスの対価を受け取っ
て事業を営むのか、それとも(B)連携する各団体の拠
出金のみで運営されるのか、ということです。

 (A)であれば、さらに、サービスの対価が法人税法
上の収益事業に該当するのかどうかという問題が出てき
ますが、ご質問のケースは(B)だと思います。(実費
の範囲内であれば基本的には収益事業とはならず、上の
(B)に該当します。)

 以下、上記の②-(B)を前提としてご説明します。
もし、前提が違うのであればまたご質問下さい。

 三番目に、この事業に参加する各団体が、(イ)法人
税法上の収益事業を行っているか、(ロ)行っていない
かという点です。介護保険事業を行っていれば(イ)で
すが、「自立援助」だけならば(ロ)の可能性もありま
す。

 (ロ)であれば、そもそも税法上経費となるかどうか
という問題自体存在しないのですが、一般的な法人の経
理として未払金としていいかという問題は残ります。

 「総会承認後6月以降に支払う」というのは、たぶん
3月決算だからという意味だと思いますが(余談ですが
個人的には決算期を3月にするのはやめてほしいと思い
ます)、前年度分であることが明らかであれば、決算処
理で未払金に計上して構いません。

 (イ)の場合は、さらに二つのケースがあります。
(a)拠出金が構成団体の行う収益事業の原価(必要経
費)となるか、(b)ならないか、ということです。
(b)であれば、前記(ロ)と同じことで、決算上は特
に問題ありません。

 この(a)に該当するかどうかというのがご質問の要
点の一つだと思います。ケースバイケースですから、断
定的なことは言えないのですが、基本的には、共同で行
う事業が構成団体の行う収益事業に関連するものであれ
ば必要経費となります。

 仮に直接原価を構成するようなものでなくても、たと
えば啓蒙広報活動であろうと、人材養成であろうと関連
に含まれます。ご質問の中では⑤短期貸付以外は経費と
考えていいでしょう。ただし、次の問題が残ります。

 法人税法上は、共同で行う事業も、その共同事業体が
法人格を持っていない場合は、その拠出割合に応じて、
構成団体の事業の一部と見なされます。

 つまり、拠出金を年度内に使い切っていればいいので
すが、使い切っていない場合は、残った部分は構成団体
の必要経費とは認められないということです。もちろん
翌年度に使えばその時点で必要経費になります。

 貸付金などはお金が出ていても税法上は経費ではあり
ません(資産計上です)から、構成団体の必要経費(損
金)にはなりません。

 なお、構成団体の決算上、拠出金を未払金として経費
処理すること自体は問題ありません。損金にならない部
分の金額だけ、法人税の申告書の中で損金不算入として
所得に加算すればいいのです。

 未払金という以上は、誰かが立て替え払いしていたも
のを後から拠出金で補填するのない限り、実際に使われ
るのは翌年度だと思いますので、未払金を計上した年度
の法人税法上の必要経費(損金)というのは無理がある
でしょう。

 実際にその拠出金を使った、たとえば翌年度に、法人
税の申告書の中で損金算入して、所得を減算することに
なります。さらに翌年度分の新たな拠出を未払いとすれ
ばその分が損金不算入となり、以下順繰りになります。

      公認会計士・赤塚和俊
Re: 法人の必要経費について 投稿者:加藤昌雄 投稿日:2001/01/31(Wed) 09:28:00 No.260
赤塚さん、早速のお返事どうもありがとうございました。
お返事も含めましてさらに教えていただきたいことが出てきましたのでどうぞよろしくお願いいたします。

①サポート事業の主体は、すでに特定非営利活動法人となっている法人です。
②拠出に関しましては、連携する(「サポート事業」提携契約を締結する)各団体の拠出金をベースにして運営する構想です。
③この事業に参画する団体は、在宅福祉サービス(訪問介護事業を含む)に取り組んでいる団体ですので、基本的に税法上の収益事業を行なっている団体となります。
④サービスの中で「短期貸付」というのは、介護保険制度に参画している各団体の介護保険事業収入が、制度上サービス提供の翌々月になるために、必要とする団体に対し対価支払いのつなぎ資金として無利息貸付けを行い、事業収入があった時点で即時返還してもらおうという考え方です。ここで、一つお聞きしたいのですが、特定非営利活動法人の各団体が資金を 出し合って運営(プール)し、資金の必要な団体に対し無利息貸付を行なうことが税法上はどのように解釈されるのでしょうか。
⑤次に決算処理についてですが、2001年度に実施される「サポート事業」の拠出金を各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定める場合、2000年度決算で前払いとして損金(経費)扱いすることは無理があるでしょうか。それを可能にするためにどのような要件が考えられるでしょうか。たとえば、(1)「サポート事業」実施主体と各団体との間で契約が締結されている。(2)拠出する金額と受け取るサービスの金額的バランス(妥当性)がとれていること。(このことにつきましては、情報の収集・提供、危機管理の認識を高めるような学習や話し合い、ケアサービスの質を高めるためのさまざまなサービスなど具体的に定額化することが容易でないものについては、税法上どのように判断すればよいのでしょうか)(3)2000年度中に入金が完了している、等。
⑥各団体から拠出を受けサポート事業を行う法人では、その拠出金をどのように扱うのが妥当でしょうか。
⑦拠出金を1年間運営して、もし剰余金が出た場合は、どのように対応することがよいでしょうか。拠出する側と、サポート事業を行う側の両方について教えて下さい。
⑧2001年度に実施される「サポート事業」の拠出を2001年6月に行なうとして、各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定めることは税法上問題ありませんか。
Re: 法人の必要経費について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/02/02(Fri) 04:03:00 No.261
加藤さん

 前回の回答は、法人格を持たない協同事業を念頭において答えましたので、
若干説明不足でした。改めてお答えします。

>①サポート事業の主体は、すでに特定非営利活動法人となっている法人です。
>②拠出に関しましては、連携する(「サポート事業」提携契約を締結する)各
>団体の拠出金をベースにして運営する構想です。

 サポート事業の主体が法人格を持っている場合は、さらに二つに分けて考える
必要があります。一つは、完全に法人の判断と責任のもとに事業を行うケースで
す(これをケースAとします)。もう一つは、法人の中に特別会計を設け、その
特別会計の運営には拠出団体もかかわるというケースです(ケースBとします)。
 前者と後者を区別するポイントは、その事業の経理処理にあります。ケースA
の場合、サポート事業が仮に赤字となった場合は、その事業主体が責任を持つ代
わりに、黒字となればその法人の収益になります。
 ケースBであれば、赤字についても共同責任であり、特別会計の資産は拠出団
体の共有財産(拠出割合に応じた持分を持つ)となります。極端なことを言えば、
事業を脱退する団体があれば残余の資産の拠出割合分を返還することになります。

 サポート事業そのものが、対価を得て収益事業を営むものであれば、ケースB
の運営方法は、利益の配分を禁止するNPO法に抵触することになりますので、
ケースAの方法しかないと思います。なお、判断の難しいところはありますが、
実費徴収は対価とは言えないので収益事業には該当しません。

 ケースAの場合(サポート事業の主体の責任で事業を行う場合)は、拠出団体
は、契約でサポートを受ける対価として拠出金(負担金)を支払うわけですから、
当然、税法上は損金になります(ここでは、サポート事業が拠出団体の収益事業
に関連するサポートを行うことを前提とします)。
 ただし、年度帰属の問題は残ります。翌年度分の負担金を前払いするのであれ
ば、決算上は資産計上(前払金)し、翌年度に経費に振り替えることになります。

 要するにケースAは請負契約であり、ケースBは協同事業です。このどちらで
あるかは契約(または規約)上、明確にしておく必要があります。前者であれば、
拠出団体の拠出金は(年度帰属の問題を別にすれば)問題なく損金になります。
サポート事業を行う主体の側で収益事業と解釈されるのと表裏の関係です。以下、
後者(ケースB・協同事業のケース)を中心にお答えします。

>③この事業に参画する団体は、在宅福祉サービス(訪問介護事業を含む)に取
>り組んでいる団体ですので、基本的に税法上の収益事業を行なっている団体と
>なります。

 サポート事業が、その参画する団体の行う(税法上の)収益事業に関わるサー
ビスを提供するのであれば、拠出金は、原則としてその各団体の経費(損金)と
なります。ただし、その年度帰属については後で述べるような問題があります。

>④サービスの中で「短期貸付」というのは、介護保険制度に参画している各団
>体の介護保険事業収入が、制度上サービス提供の翌々月になるために、必要と
>する団体に対し対価支払いのつなぎ資金として無利息貸付けを行い、事業収入
>があった時点で即時返還してもらおうという考え方です。ここで、一つお聞き
>したいのですが、特定非営利活動法人の各団体が資金を出し合って運営(プー
>ル)し、資金の必要な団体に対し無利息貸付を行なうことが税法上はどのよう
>に解釈されるのでしょうか。

 営利企業であれば、経済行為として無利息の貸付を行うことはありえないので
貸付先への利益供与とみなされ、利息収入があったとして課税される(認定利息
といいます)こともありますが、非営利が前提となっているNPO法人に同じこ
とが行われることはありません。
 その原資が拠出しあった(プールした)資金であっても構いません。ただし、
この場合、貸してあるお金は資産(いずれ返ってくるお金)ですから、拠出した
負担金は、税法上の損金にはなりません。ケースAの場合でも、貸付金は運営す
る法人の経費(損金)にはなりません。
 セミナーその他で費消した部分については、その使った年度の経費(損金)に
なります。ケースBの場合、拠出した金額のうち費消した金額部分です。

>⑤次に決算処理についてですが、2001年度に実施される「サポート事業」の
>拠出金を各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定める場合、2000年度
>決算で前払いとして損金(経費)扱いすることは無理があるでしょうか。

 2000年度の事業収入実績に基づいて決まるのはあくまで拠出の金額であって、
それが実際に「サポート事業」に使われるのは2001年度ですから、2000年度の
決算で経費にするわけにはいきません。
 ケースAで、年会費を同年度の事業収入実績に応じて決定するという契約なら
別ですが、その場合は、決算を終える前に事業収入実績が確定するのだろうか、
という疑問が残ります。
 ケースBでは、翌年度以降の経費となるのは当然ですし、翌年度末においても
たとえば貸付金のような資産が残っていれば経費とはならないのは、前に述べた
とおりです。

>それを可能にするためにどのような要件が考えられるでしょうか。たとえば、
>(1)「サポート事業」実施主体と各団体との間で契約が締結されている。
>(2)拠出する金額と受け取るサービスの金額的バランス(妥当性)がとれ
>ていること。(このことにつきましては、情報の収集・提供、危機管理の認
>識を高めるような学習や話し合い、ケアサービスの質を高めるためのさま
>ざまなサービスなど具体的に定額化することが容易でないものについては、
>税法上どのように判断すればよいのでしょうか)(3)2000年度中に入金が
>完了している、等。

 (1)、(3)については、前に述べたとおりです。(2)については、あまり
気にする必要はありません。単年度で見れば多く拠出した団体よりも少ない負
担の団体の方が、受け取るサービスが多いというようなことは起こるでしょう
が、それがそもそも相互扶助の趣旨の一つなのですから、問題ありません。
 問題になるのは、毎年拠出する一方で全く受益のないような場合です。もし
そういう団体があれば経費とはならないかも知れません。寄付金と解釈される
からです。

>⑥各団体から拠出を受けサポート事業を行う法人では、その拠出金をどのよ
>うに扱うのが妥当でしょうか。

 ケースAであれば、その法人の収益です。その事業にかかったコストが損金
になります。ケースBであれば、本質的には預り金です。受け取った拠出金は
預り金の受け入れであり、使ったお金は預り金の支出です。問題は貸付金です
が、貸付金は貸付金として資産計上した方がいいでしょう。預り金の収入と支
出の差が特別会計の期末現金預金と貸付金の合計になります。
 サポート事業の費用内訳を管理するためには、預り金の支出に関する補助簿
も作った方がいいでしょう。

>⑦拠出金を1年間運営して、もし剰余金が出た場合は、どのように対応する
>ことがよいでしょうか。拠出する側と、サポート事業を行う側の両方につい
>て教えて下さい。

 剰余金の意味がよくわからないのですが、もし「サポート事業」そのものが対
価を得て収益事業として営まれるのであれば、ケースAしかあり得ませんし、
そうであれば通常の収益事業の利益と全く同じです。

 ケースBであれば、拠出金を預かった「サポート事業」を行う法人にとっては
それは「剰余金」ではなく、預かったお金がまだ使われずに残っているだけです
から、別に問題はありません。
 拠出する側にとっては、お金が使われずに残った部分は前払金のままで経費
処理はできないことになります。

>⑧2001年度に実施される「サポート事業」の拠出を2001年6月に行なうと
>して、各団体の2000年度事業収入実績に基づいて定めることは税法上問題あ
>りませんか。

 拠出金の算定基礎として前年度の事業収入実績をもとにすること自体は問題
ありません。ケースAであれば、2001年度分の拠出金であれば2001年度の経
費となります。ケースBであれば、税法上はいったん前払金となり、その拠出
金が費消された時点で経費(損金)と認められることになります。

                   公認会計士・赤塚和俊
Re: 法人の必要経費について 投稿者:加藤昌雄 投稿日:2001/02/04(Sun) 22:43:00 No.262
赤塚さん

いつも丁寧で速やかなご回答本当にありがとうございます。
現在検討しております「サポート事業」につきまして、赤塚さんの類型にあてはめますと、運営は協同事業型、拠出は請負契約型になろうかと考えております。あらためて3点教えていただきたいことがございますのでどうぞよろしくお願いいたします。

①2001年度の拠出につきまして、2000年度に前払いした場合資産計上し2001年度に経費に振り替えることになる、とありますが2000年度に資産計上した部分についての税金の扱いは具体的にはどうなるのでしょうか。
②拠出の方法は請負契約型になると思われますが、協同事業型の運営理念を契約書に盛りこみたいと考えております。このことに関しまして、なにかアドバイスがありましたらお願いいたします。
③NPO団体で協同事業型でこのような事業を行なっている団体をご存知でしたら教えていただけますでしょうか。
Re: 法人の必要経費について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/02/06(Tue) 07:03:00 No.263
加藤昌雄さん

> 現在検討しております「サポート事業」につきまして、赤塚さんの類型にあてはめますと、
> 運営は協同事業型、拠出は請負契約型になろうかと考えております。

 「運営は協同事業型」というのは、意思決定に拠出団体が参画できるという意味だと思い
ます。「拠出は請負契約型」というのは、意思決定過程にかかわらず財政的な責任は「サポ
ート事業」を行う(資金の拠出を受ける)団体が負う(裏返せば拠出団体は残余財産に対す
る権利を持たない)ということですね。
 そうであれば、税法上は請け負った団体では収益事業、拠出した団体は拠出金を経費に
(損金算入)できることになります。

> ①2001年度の拠出につきまして、2000年度に前払いした場合資産計上し2001年度に経
> 費に振り替えることになる、とありますが2000年度に資産計上した部分についての税金の
> 扱いは具体的にはどうなるのでしょうか。

 具体的に仕訳で示せば、前払いした2000年度には
      (前払金) / (現金預金)
 2001年度には
      (負担金(または会費)) / (前払金)
 となり、2001年度の経費(損金)になります。

> ②拠出の方法は請負契約型になると思われますが、協同事業型の運営理念を契約書に
> 盛りこみたいと考えております。このことに関しまして、なにかアドバイスがありましたらお
> 願いいたします。

 契約書の基本はあくまで請負契約型になります。すなわち、委託を受ける団体は拠出金
を受け取る代わりにサービスを提供する義務を負うという契約です。その上で、どのようなサ
ービスを実施するかについては、拠出団体の総意に基づくものとするというのはどうでしょう
か。決定方法について触れるかどうかですが、運営委員会のような会議を設けてそこで決
定するのがいいと思います。

> ③NPO団体で協同事業型でこのような事業を行なっている団体をご存知でしたら教えて
> いただけますでしょうか。

 現在のところ、私の知る限りではありません。会員型のNPOサポートセンターが近いかも
知れませんが、普通は「参加は自由」、「会費は定額」、「会員は意思決定に参加できない」
という点で違いがあると思います。

                              公認会計士・赤塚和俊
回答補充 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/02/07(Wed) 08:39:00 No.264
加藤昌雄さん

 委託を受ける(資金の拠出を受ける)NPO法人の税務処理につい
て、回答を補充します。

 前回の回答では、委託を受けて事業を行うNPO法人では収益事業
となると書きましたが、これは事業の内容によっては収益事業には該
当しないこともあります。

 たとえばセミナー開催や人材養成などは、通常は収益事業には当た
りません。もちろん無利息の貸付も収益事業には当たりません。問題
は、基本契約が請負型になっている点ですが、請負業に関する通達
に「本来の業種区分で非課税とされる事業は請負業として改めて収
益事業とみなすことはない」という趣旨のものがあります。

 ただし、この解釈が明確になっていないために各地の税務署で判断
が分かれ混乱している現状はご存じかと思います。具体的には、共同
保育所や自立援助サービスなど、税務署によって全く正反対の判断が
示されています。

 上記の通達を限定的に解釈すると、あらゆるサービスの提供は請負
の性格を持っていますので、すべて収益事業として課税される可能性
がでてきます。個別に交渉しても限界がありますので、シーズで取り
組んでもらえないかと思っています。

 なお、受託を受けたNPO法人の事業が収益事業に該当するかしな
いかにかかわらず、資金を拠出する団体の拠出金は、その事業が拠出
団体の行う収益事業に関連するものであれば経費(損金)処理して構
いません。

                 公認会計士・赤塚和俊
Re: 回答補充 投稿者:いわ 投稿日:2001/03/08(Thu) 18:13:00 No.265
できましたら,教えてください。

> 請負業に関する通達に「本来の業種区分で非課税とされる事業は請負業として改めて収
> 益事業とみなすことはない」という趣旨のもの

は,具体的にどこで見ることができるでしょうか?

また,「本来の業種区分で非課税とされている事業」とは,どういうものでしょうか?
NPO法上の本来の事業と解釈してよいでしょうか?
本来事業として人材養成をNPOが独自に行う傍ら,社協などから人材養成のために
講師陣の派遣を依頼された場合,それは,法人税法上の収益事業と考えなくても
よいでしょうか?

>各地の税務署で判断が分かれ混乱している現状

申請する税務署は,NPOを申請する県内ならどこでもいいのでしょうか?
また,非課税事業を広く解釈してくれる税務署の情報など
できれば教えていただきたいのですが,可能でしょうか?

よろしくお願いします。
Re: 回答補充 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/03/11(Sun) 12:40:00 No.266
いわさんへ

「請負業に関する通達」は、法人税基本通達15-1-29です。この通達
自体は、読んでも何を言っているのかよくわからないと思います。税務
研究会出版局というところから出ている「法人税基本通達逐条解説」と
いう本にわかりやすい例が掲げてありますので、それを引用します。

「例えば、「技芸教授業」においては、洋裁、和裁、着物着付その他特掲
されている「技芸」の教授のみが収益事業として課税されるのであるが、
特掲されていない技芸の教授を請け負うものについて、技芸教授業ではな
く、「請負業」として課税するということになれば、技芸教授業について
課税対象となる技芸を特掲した意味がないことになる。
 このようなことから、本通達において、請負又は事務処理の受託として
の性格を有する事業であっても、その事業が、その性格からみて、請負業
以外に収益事業として特掲されている事業に該当するかどうかにより収益
事業の判定をなすべきものである場合、又はその請負業以外の特掲事業と
一体不可分のものとして課税すべきものであると認められるものである場
合には、たとえその請負業以外の特掲事業に当たらないからといって、改
めて請負業として課税対象にするというような解釈はとらないことが明ら
かにされているのである。」

 ここでいう「請負業以外に収益事業として特掲されている事業(33業種
のうち、請負業を除く32業種)」が、私の言った「本来の業種区分」です。
NPO法上の本来の事業の意味ではありません。
 ただし、NPO法人の行う人材養成事業は一般的には法人税法上の収益
事業には該当しないと解釈されますから、その一環として講師の派遣を行
っても、収益事業には該当しません。

 仮に法人税法上の収益事業を行うとすれば、届出る税務署は法人の事務
所を所管する税務署となりますので、選択の余地はありません。

                  公認会計士・赤塚和俊
Re: 回答補充 投稿者:いわ 投稿日:2001/03/13(Tue) 06:01:00 No.267
赤塚さま:

> 「請負業に関する通達」は、法人税基本通達15-1-29です。
:
>  ここでいう「請負業以外に収益事業として特掲されている事業(33業種
> のうち、請負業を除く32業種)」が、私の言った「本来の業種区分」です。
> NPO法上の本来の事業の意味ではありません。

どうもありがとうございます。

この32業種に,人材養成があるということですね。
人材養成以外の業種を知りたくなりました。
これは法人税基本通達15-1-29に書かれていますか?

>  仮に法人税法上の収益事業を行うとすれば、届出る税務署は法人の事務
> 所を所管する税務署となりますので、選択の余地はありません。

どうもありがとうございます。

それから,NPO申請時には,法人税法上の区分で事業計画を作れば
よいのでしょうか?
(伺ってばかりでどうもすみません)
Re: 回答補充 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/03/13(Tue) 07:26:00 No.268
人材養成以外の業種を知りたくなりました。
> これは法人税基本通達15-1-29に書かれていますか?

法人税基本通達15-1-29は「請負業」に関する通達なので、他の
業種については書かれていません。

> それから,NPO申請時には,法人税法上の区分で事業計画を作れば
> よいのでしょうか?

違います。NPO法(特定非営利活動促進法)と法人税法では、収
益事業の定義も全く違いますし、NPO申請に必要なのは基本的に
NPO法に定める12の公益分野のいずれかの事業を行う事業計画
であって税法の業種区分とは全く別のものです。

詳しくは「NPO法人の税務」(花伝社刊)や「NPO法コンメンタ
ール(日本評論社刊)、「自分たちでつくろうNPO法人」(ぎょうせ
い刊)などを参照してください。

                   公認会計士・赤塚和俊
Re: 回答補充 投稿者:いわ 投稿日:2001/03/14(Wed) 01:01:00 No.269
赤塚さま:

早急なるご回答どうもありがとうございました。
法人税法上の収益事業(33業種)に含まれない事業(非収益事業)は,
それを仮に請け負ったとしても,法人税基本通達15-1-29により,
法人税法上の収益事業にはならない,と理解できました。

ところで,上記非収益事業にはどんな事業があるのか興味があります。
(私は,どういうのを事業と呼ぶか?,請負業とは何か?,などが
わかっていないため)
例えば,コンサルティングは,相談事業(?)でしょうか?
収益事業の33業種に入っていないように見受けられますが,請負業で
しょうか?

NPO法人の執筆事業は,執筆業は出版業でないので法人税法上の
収益事業にならないので,非収益事業ですね。
(出版者から,個人と同じように源泉徴収されますか?
この源泉徴収されたお金は,文房具代とかトナー代とかの領収書で
戻ってくるのでしょうか?)

やっぱり,本を入手しないとだめですね。
(NPO申請時には,法人税法のことはあまり関係なさそうですし)
Re: 回答補充 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2001/03/14(Wed) 07:23:00 No.270
いわさん

> 例えば,コンサルティングは,相談事業(?)でしょうか?
> 収益事業の33業種に入っていないように見受けられますが,請負業で
> しょうか?

コンサルティングは契約形態によって判断することになるでしょう。何ら
かの成果物(たとえばレポート)を提供する契約は請負業になる可能性が
あります。

相談事業というのは税法の33業種にもNPO法の12分野にもありません。
通常は主たる業務に附随する業務と考えられますから、主たる業務によ
って判断することになります。

> NPO法人の執筆事業は,執筆業は出版業でないので法人税法上の
> 収益事業にならないので,非収益事業ですね。
> (出版者から,個人と同じように源泉徴収されますか?
> この源泉徴収されたお金は,文房具代とかトナー代とかの領収書で
> 戻ってくるのでしょうか?)

出版ではなく執筆という行為は普通は法人ではなく個人で引受けるもの
だと解釈されます。個人であれば事業所得か雑所得として課税されます
(もちろん必要経費は控除できます)。

法人で契約するとすれば執筆ではなく編集と考えられますが、もしそう
であれば請負業になると思います。法人で契約すれば源泉徴収されるこ
とはありません。

> やっぱり,本を入手しないとだめですね。
> (NPO申請時には,法人税法のことはあまり関係なさそうですし)

その通りです。

                  公認会計士・赤塚和俊

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