寺川裕子さん、
番号の順にお答えしようと思います。
(1)会員向けに販売物や受講料を割引しているNPO法人は多いと思いますが、
社員への割引が利益の分配にあたる、という話は聞いたことはありません。利益の
分配とは、利益があった時に、それを団体の構成員に分配することです。もし、一
般の方などに売った黒字分にあわせて、社員への割引率を決めていらっしゃるよう
な場合は別として、お尋ねの販売物などの割引は赤字になろうが黒字になろうが、
それらに関わりなく実施していらっしゃることだと思います。ですから、利益の分
配にはあたりません。行政のNPO担当者の方が、なぜそのような考え方をしてお
られるのか疑問です。
(2)質問箱の1718のご質問や、それへの回答は、国税庁長官から「認定」を受け
て、「認定NPO法人」(認定NPO法人はまだ全国に15法人しかありません)
になる場合についてのやり取りで、「何を寄附として扱うか」に関するものです。
一般のNPO法人の会計などに関わるものではありません。
ですから、もちろん社員とそれ以外の会員の会費が同額でも、全く問題はありません。
(認定NPO法人が何か、については、シーズの次のホームページを参照してください。
/topics/old/faq/)
ご質問へのお答えは以上ですが、少し長くなりますけれど、国税庁では「認定」に
あたっては会費を次の3つに分けて考えていますので、説明をしておきます。
a)社員の会費
反対給付があると考え、「寄附」としては扱わない。(この反対給付とは、
会費を支払ったことによって、何かが戻ってくることです。つまり、社員の
場合には会費を払うと総会での議決権という反対給付がある、という考え方
です。結局、国税庁は議決権を対価として見ているのです。)
b)社員以外の会員の対価性のある会費
反対給付のある会費です。つまり、スポーツクラブのように会費を払って会
員になると施設を使うなどのサービスが受けられる場合です。これは、会費
という名称であっても、実際には事業収入となります。NPOの場合でも、
会費を払うと、その金額分の福祉のサービスを受けられる、というような時
には、反対給付がある、つまり対価性がある会費であり、国税庁では「寄附」
ではなく、事業収入として判断します。
c)社員以外の会員の対価性のない会費
反対給付のない会費です。つまり、その団体を支援するために支払われるも
のであり、実質は「寄附」である会費です。この場合、国税庁では「寄附」
として判断します。
実際には、対価性のある会費部分と、対価性のない会費部分で構成されている会費
もあります。たとえば、社員以外の会員の会費が年間1万円だけれど、そのうち3千
円が機関誌の購読料であるような場合です。この場合には、国税庁は7千円は寄附で、
3千円は事業収入と判断するということです。
シーズ・轟木 洋子