NPOは錦の御旗? 投稿者:
こう 投稿日:2001/04/01(Sun) 09:51:00
No.317
私は、神奈川県の西部に住んでおります。
私の住んでいる地区に、以前会社の寮で、現在は空家になっている建物があります。
今回、その寮を横浜市にある株式会社Jが借り上げ、路上生活経験者を収容する
施設を経営することになったらしいのです。
そのJ社の代表取締役は、NPO法人を作りその代表者にもなっているのですが、
今回の事業はそのNPO法人がJ社に委託をしたという形なのだそうです。
でも、代表者が同じなのですから、自分で自分に委託する、つまり、建前上はNPO
法人の活動だという形をとりながら、実態は営利企業である株式会社J社が運営を行う
ことになるわけですよね。
路上生活者をその寮に収容して、住民登録をさせ、その上で生活保護を受けさせ、
その生活保護のお金から、食事代も含めた宿泊費用を徴収するということらしいのです。
たしかに、路上生活者の問題を解決することは大切なことでもあり、相手の言うことも、
この事業の意義もわからないことはないのですが、問題はその進め方。
このような問題は、当然その施設の周辺に住む地域住民の理解と協力が必要だと思うの
ですが、そのJ社は路上生活者を収容するということについて、地域住民に正確に情報を
開示することなく、ましてや一度の説明会を開くこともなく、情報を得た地域住民からの
要請でしぶしぶ説明会に出てくるといった始末です。
このような状況ですので、当然、地域住民からは反発を受け、反対運動が起こりつつあり
ます。
私も、地域住民との対話をはじめから避けようとしたこの株式会社の姿勢には大いに疑問を
感じますし、本来ならば、行政が主体となり、NPO法人が協力する形で行うべき事業を、
営利企業である株式会社が行うというのも、何か釈然としないものを感じます。
この種の事業をする上で、地域住民とのトラブルを起こすことは、決して得策ではないと
思うのですが、公益性の高い福祉事業だと相手に言われると正面きっての反対をするのも
気が引けますし、なにやら、その株式会社の利益のために地域住民が犠牲になるような
気もしていて、複雑な心境です。
ここは、NPO活動のすばらしさをアピールする場所でしょうから、このような投稿は、
あまり歓迎されないと思いますが、どなたかご意見をいただければと思います。
Re: NPOは錦の御旗? 投稿者:
シーズ・轟木 洋子 投稿日:2001/04/02(Mon) 19:30:00
No.318
こうさん、ご投稿ありがとうございました。
ご質問というよりご意見ということで承りました。こうしたご意見も大歓迎です。
以下は、私の意見です。
ご投稿のタイトル「NPOは錦の御旗?」は、とても興味深く、時期を得たものだと感じました。
我家に時々配布される地域のミニコミ誌には「友達・結婚相手募集」や「美容・健康紹介」な
どと同様の欄に「NPO団体」という広告のコーナーがあり、そこに広告を掲載できるのは
「特定非営利活動促進法」で認証されたNPO団体に限られ、はじめて掲載を申し込む時は
NPO法人の認証書が必要、と書いてあります。
このミニコミ誌の方針に対して異論を呈するつもりは毛頭ありませんが、読者の中には、
「認証されていれば役所からの『お墨付き』を得ているはずだ」と思われる方もあるかもし
れません。
しかし、NPO法の第12条「認証の基準等」を読むと、設立の手続きや申請書また定款の
内容が法令の規定に適合していて、暴力団などに関わりなく、不特定かつ多数のものの利益
の増進に寄与することを目的にしている等、NPO法に従っていて「適合すると認めるとき
は、その設立を認証しなければならない」と書いてあります。
つまり、NPO法人は役所が「優良な団体」として「お墨付き」を与えた団体ではなく、単
にこうした書類を揃え、要件を満たした団体であるということです。
一般の営利企業なら、要件や書類を揃えて登記すればすぐに会社として法人を設立できます。
登記の時に、その会社の利益を上げる方法の善し悪しを見たりすることはありません。
ところが、NPOは、98年にNPO法が施行されるまで、法人になることは極端に困難な
ことでした。営利団体は簡単に法人化できるのに、市民活動団体は、何億円もの莫大な財産
を持って財団法人となるか、監督官庁によって指導されて社団法人となるかなど、普通の市
民活動団体には不可能とも思える方法しかなかったのです。
NPO法はこうした状況を背景に、市民活動団体がもっと簡易に法人化できるようにしたも
ので、できるだけ役人の裁量権を無くし、上記のように要件があって書類が揃っていれば認
証を受けることが可能とした法律です。
ですから、NPO法人として認証を受けたというのは、「錦の御旗」には全くなりません。
役所のお墨付きを得た訳でもありません。
現実に、あるNPO法人の会長は「とばく場開設容疑」で逮捕されています。
NPO法の良い点は情報公開を義務付けている点です。所轄庁に行けば、その団体の目的や、
前年度の事業報告書、財産目録、収支報告書、役員名簿などを見ることができ、こうした情
報から、一定程度その法人の活動内容を知ることができます。
しかし、その法人が本当に良い活動をしているか否かを判断するには、こうした情報も十分
な内容とは言えないのが実状です。
私たちは生活する上で、消費者としてはできるだけ賢い買い物をするよう努力していますが、
NPOについても市民がしっかりと賢く見定められるようになりたいものです。
こうさんのおっしゃっている神奈川のNPO法人の具体的な活動については不明な点もあり
ますので、ここでは言及いたしませんが、「NPO法人だから公益性の高い活動をしている
筈だ」という思いこみも不要だと思います。
また、このホームページは、こうさんのおっしゃるように「NPO活動のすばらしさをアピ
ールする場所」をつくることを目的にしているものではありません。
このホームページでは、市民活動がより活発になるようにNPO法を紹介し、その法律の趣
旨も理解していただき、そのうえで多くの方がNPOへの理解を深めてくださることを目指
しています。
それによって、どの団体が市民の声を反映し、確かな活動をしているNPOなのかも分かっ
ていただけることを願っています。
シーズ事務局・轟木 洋子