English Page
専門家の支援 投稿者:わたる 投稿日:2004/06/15(Tue) 15:38:00 No.3598
不動産鑑定、一定の建築確認、不動産登記に関しては、NPOが専門家の支援を得られれば事業の一環としてすることが出来るのでしょうか?
勿論第5条の事業にはこの文言で記載できないことは分かっていますが。
このへんの整合性はいかがなものでしょうか。
ばかばかしい質問で失礼します。
Re: 専門家の支援 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/06/22(Tue) 10:51:00 No.3599
わたるさん、

お尋ねの件は、NPO法を超えるものが含まれており、シーズでは分かりかねる部分が
ありましたので、シーズ運営委員で弁護士の浅野晋さんにお尋ねしました。
以下は、浅野さんからの回答です。

-----------

1、まず、不動産鑑定については、「不動産の鑑定評価に関する法律」によって規制が
なされており、不動産の鑑定評価は不動産鑑定士又は不動産鑑定士補でなければ不動産
の鑑定評価をしてはならない旨定められております(同法36条)。
 不動産鑑定士又は不動産鑑定士補の資格は、自然人にしか与えられませんから、NP
O法人が、法人として「不動産鑑定」を行うことは、資格のない者が不動産鑑定をする
ことになり違法となります。
特定非営利活動法人法第12条は、NPO法人の認証要件として、「定款の内容が法
令の規定に適合していること」をあげていますから、もし定款に「不動産鑑定をする」
旨の定めを置くと、違法な事業をすることになりますので、認証されません。
しかし、「不動産鑑定」ではなく、これを業として行う「不動産鑑定業」自体は、不
動産鑑定士でなくても所定の登録をすることによって営業をすることが出来ます。従っ
て、NPO法人であっても、登録をすれば「不動産鑑定業」を営むことが出来ます。
(ただ、登録が出来たとしても、不動産鑑定士又は不動産鑑定士補でなければ不動産の
鑑定評価は出来ませんから、その登録業者が不動産鑑定を行おうとする時は、不動産鑑
定士又は不動産鑑定士補の資格を有する従業員に行わせて、その不動産鑑定士又は不動
産鑑定士補の名で鑑定書を発行することになります。)
従って、NPO法人は「不動産鑑定」自体を事業として行うことは出来ませんが、「不動
産鑑定業」を事業として定款に記載することは可能だし、実際にその事業を行うことも
可能ということになります。

2、次に「建築確認」ですが、「建築確認」は行政庁である建築主事が行うものですか
ら、正しくは「建築確認申請」(建築基準法第6条)のことであると思われます。   
 この建築確認申請は「建築主」が行うものですが、通常は建築士事務所が建築主から
委任を受けて建築主を「代理」して申請手続きをいたします。
 この申請手続きは、建築士法第23条にいう「建築に関する法令……に基づく手続の
代理」に該当しますから、建築士法第23条に基づき「建築士事務所」の登録を受けな
ければ、この建築確認申請の代理行為を業として行うことが出来ません。
 従って、NPO法人がこの「建築士事務所」として登録することが出来れば、建築確
認申請の代理行為を業務とすることが可能となります。 この登録を受けることが出来る
のは、建築士法第23条によると「一級建築士、二級建築士若しくは木造建築士又はこ
れらの者を使用する者」ですから、NPO法人が「一級建築士、二級建築士若しくは木
造建築士」を雇用するなどして使用者の立場にあり、かつ同法24条に定めるように建
築士事務所としての法人を「それぞれ専任の一級建築士、二級建築士又は木造建築士が
管理」するのであれば、NPO法人が建築士事務所としての登録を受けることが可能で
す。
 従って、NPO法人であっても、この建築士事務所の登録をすることによって、建築
確認申請の代理行為をすることが可能です。

3、最後に「不動産登記」について検討します。
 不動産の登記業務については司法書士法に定めがあり、司法書士会に入会している司
法書士または司法書士法人でなければ登記業務を行うことが出来ません(同法73条)。
 そして、「司法書士」という資格は司法書士試験に合格した自然人に与えられるもの
ですから、法人は「司法書士」の資格を取得することが出来ません。また、「司法書士
法人」の社員は司法書士でなければなりませんから(同法28条)、NPO法人が「司
法書士法人」を作ることも出来ません。
このため、NPO法人が「不動産登記」を業務として行うことは出来ませんし、また
NPO法人が同時に司法書士法人であるという2重の法人格を持つことも不可能ですか
ら、NPO法人はいずれにせよ登記業務をすることは違法ということになります。
 従って、登記業務をNPO法人自体がすることは出来ませんし、またNPO法人が司
法書士を雇って「登記業務」を行うことも司法書士法に違反いたします。
 このため、定款に「不動産登記」又は「不動産登記業務」を事業として掲げた場合、
「法令に適合しない定款」ということになりますので、認証を受けることが出来ません。
 
4、なお、「不動産鑑定業」は「報酬を得て、不動産の鑑定評価を業として行うこと」
を言います(不動産鑑定評価に関する法律第2条)から、無報酬であれば登録を受けな
くても「不動産鑑定業」をすることが出来ますが、この場合でも不動産鑑定書の作成自
体は不動産鑑定士か不動産鑑定士補でなければすることが出来ません(同法36条)。
 また、建築確認申請の代理等の業務についても、報酬を得なければ建築士事務所とし
て登録を受けなくても行うことが出来ます(建築士法第23条の9)。
 これに対し司法書士法は、有償無償にかかわらず司法書士会に入会している司法書士
か司法書士法人でなければ同法3条に掲げる司法書士の業務を行ってはならない旨定め
ていますので(同法73条)、無償でもこれを行うことは出来ません。
 
5、以上の通り、「不動産鑑定業」を業務の一つとすること、建築士事務所を開設して
その業務を行うことは、それぞれの法律に基づく要件の許に登録を受ける事によって可
能です。
 もっとも、このような業務を定款に掲げたときは、恐らく所轄庁がいろいろクレーム
をつけるのではないかと思われます。そのときは、それぞれの法律に基づき、それが可
能であり、それぞれの法令に適合していることを主張して下さい。特定非営利活動促進
法では定款等の内容が「法令の規定に適合していること」が認証の要件であり、法令の
規定に適合していないということであれば、所轄庁の方でそれを示す必要があります(同
法12条3項)ので、所轄庁がごちゃごちゃ言うようで したら、「その根拠は何か」、
「どうしてか」としつこく追求して下さい。
-------------------

以上、参考になさってください。

シーズ事務局・轟木 洋子

- WebForum -