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理事会での表決権 投稿者:本田 貞行 投稿日:2004/07/14(Wed) 09:24:00 No.3667
理事会での表決権等

東京都及び内閣府のモデル定款では「やむを得ない理由のため理事会に出席できない理事は、あらかじめ通知された事項について書面をもって表決することができる。」とあります。

理事会での理事の委任状による出席、理事会での表決権の委任規定は、置かないのが一般的 民法644条、
“善良なる管理者の注意をもって、その業務を遂行する義務を負うこと 民法644条”が要請される。さらに“特定の行為に限って代理を他人に委任できる 民法55条”とされている民法55条」(堀田p101)
理事会での表決権など代表権を包括的に委任することは、機関としての理事の意味をうしなわせることになり、認められない。
参照資料
堀田力 著「NPO法人設立完全マニュアル」 理事会の表決権等についての説明 p101
清文社 「NPO法人の設立と運営」p92

しかし、日本フォスター・プラン協会寄付行為 第28条には、
やむをえない理由のため理事会に出席できない理事は、あらかじめ通知された事項について書面をもって表決し、又は他の理事を代理人として会議への出席及び表決を委任することができる。
2 前項の場合において、書面による表決者又は表決委任者は、理事会に出席した者とみなす。

同様の定款 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター 特定非営利活動法人日本エコーツーリズム協会などにも同様の記載がある。

活動内容によっては、理事に、著名な人にお願いすることが多い。しかし、出席率は、非常に悪いのが実態である。それ故、多くの公益法人は、委任表決を容認しているのでは。
どのように解釈すべきでしょうか。
Re: 理事会での表決権 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/07/18(Sun) 21:44:00 No.3668
本田貞行さん、

お待たせしましたが、シーズ運営委員で弁護士の浅野晋さんに次のようにお答え
いただきました。

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(理事会での表決権等について)
1、理事の職務には、大別して、
(1)当該NPO法人を代表して、対外的な代表行為をする場合
(2)当該NPO法人の対内的業務を行う場合
 という2種類があります。
  そして、この(1)、(2)を他に委任できるかどうかについてはそ
れぞれ別個の考察が必要です。

2、まず、(1)について考えてみましょう。
  理事Aが個別の代表行為(例えばある契約の締結)をBに委任すること
はもちろん可能です。ただ、このような理事の対外的代表行為を委任す
ることについては、民法55条による制約がありますので、このような
代表行為(条文では「代理」という文字を使っていますが同じことです)
を他に委任することを「定款、寄付行為または総会の決議」によって禁
止する事ができますし、またその委任も「特定の行為」の委任のみであ
って、包括的な委任をすることはできません。

3、次に(2)ですが、NPO法人の理事の対内的業務を他に委任できるか
どうかは、その業務を他人に委任して行うことが、理事という職務の性
質上許されるかどうかという観点から個別に考える必要があります。
  問題の「理事会への代理出席」、「理事会での表決権の代理行使」は、
上記(2)に属する行為です。従って、民法55条は適用されませんの
で、このようなことが理事という職務の性質上許されるかどうかについ
て個別に考える必要があります。(最高裁平成2年11月26日判決)

4、理事は当該NPO法人との関係では、理事という職務の受任者として、
民法の委任の規定に基づき「委任の本旨に従い善良なる管理者の注意を
以て委任事務を処理する義務を負う」(民法644条)ことになります。
  ところで「理事会」は法定の機関ではなく、NPO法人が定款で任意に
設けている機関ですから、その役割、職務内容というのは当該NPO法
人の定款の定めによって千差万別です。ただ、一般的には理事会は当該
NPO法人の意思決定機関という役割を与えられていることが多いと思
われます。
  この場合、理事は当該法人が意思決定をするために「理事会」という合
議機関に出席して、その知識、経験、思想等に基づき議論をつくし、最
終的には評決によって当該法人の意思決定をするという職責を果たすこ
とが期待されています。

5、従って、一般的にいえば、理事が他の者に理事会への出席を委任し、又
は理事会の議決について評決を委任するということは、委任の趣旨に反
するものと思われます。

6、ただ、翻って考えれば、理事会は法定の機関ではありませんし、またN
PO法人は、「私的自治」の原則で運営されています。
  そうすると、NPO法人がその団体運営の実情に即して、理事会への出
席とか評決に関する理事の委任行為の許否を、ある程度は緩やかに解す
ることが妥当と思われます。

7、質問にある日本フォスター・プラン協会の寄付行為(NPO法人の「定
款」にあたるものを財団法人の場合は「寄付行為」といいます)は、
(1)委任するのは、やむを得ない理由がある場合であること
(2)委任することが出来るのは、あらかじめ通知された事項についてであ
ること
(3)受任者は理事に限られていること
  という制約を置いています。
  このうち(2)は、委任する理事が委任事項について自ら検討して、そ
の上で他に委任することができることを意味していますから、受任者に
全くの白紙委任をするということではなく、当該の委任事項について、
なお当該理事の知識、経験、思想等を反映した議論、評決を行う受任者
を選任することができます。
  従って、上記のような制約(特に(2))の許で理事が他の者に評決を
委任することは、必ずしも委任の趣旨に反するとはいえないものと解さ
れます。(なお、書面による表決も同様に解することが出来ます。)

8、なお、判例ではありませんが、「やむを得ない理由のため会議に出席で
きない役員にはあらかじめ通知された事項についてのみ書面で表決し、
又は代理人に委嘱することができる。この場合は出席したものとみな
す。」という寄付行為について、これを可とする行政解釈があります。
(昭和38年4月10日民四発第71号法務省民事局第四課長回答)
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以上、ご参考になさってください。

シーズ・轟木 洋子
Re: 理事会での表決権 投稿者:本田 貞行 投稿日:2004/07/20(Tue) 15:33:00 No.3669
簡潔明瞭。胸がすっとする説明、ありがとうございます。
本も、このように整理してかいていただけるとたすかるのですが。
無料で、このような説明をしてもらっていいなか・・・・・・・・。
あるがとうございました。

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