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法人解散に際しての財産処分。 投稿者:団体職員 投稿日:2004/07/28(Wed) 18:28:00 No.3715
初めて投稿します。よろしくお願いします。
いきなりうしろ向きな質問で恐縮なのですが、ただいまNPO法人の解散を検討していまして、解散に際しての法人の財産の処分方法についてお聞きしたく思います。

(1)解散総会はまだ開催していませんが、解散を控えた状況で理事会の権限でモノの資産を処分(現金化)することは可能でしょうか?(当法人の定款では財産処分について総会の権限であるとの定めがないので、理事会の権限になると思います)

(2)解散総会後、すぐに官報で解散公告を行いますが、公告期間中に(2カ月を経ないうちに)債権回収や債務返済を一部進めても問題ないでしょうか? 債権者が名乗り出た場合を想定して、財産のすべては処分せずにおくつもりですが。

(3)法人で賃借しているアパート(主たる/従たる事務所ではありません)について、法人から理事の1人へ名義変更を検討しているのですが、法人(理事会?)と当該理事と貸主で合意があれば問題ありませんか? 当該理事から法人会計へ敷金相当額を払ってもらわなければならないのでしょうか?

(4)債権者との合意があれば、法人の備品(パソコンなど)を譲渡することで債務を帳消しにしてもらうことはできますか? 債務額と譲渡備品の時価との差額を益として会計に計上して問題ありませんか?

(5)解散や清算の手続きを通じて、役員や清算人が債務を負うなど、不利益を被る事態は起こりませんか?

まだ就職して日が浅く、法人事務にまだ精通していないので、要領を得ない質問だと思いますが、よろしくお願いします。
Re: 法人解散に際しての財産処分。 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/08/03(Tue) 09:51:00 No.3716
団体職員さん、

お尋ねの件、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋さんに、次のようにお答えいただきま
した。お尋ね順です。
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(1)解散総会はまだ開催していませんが、解散を控えた状況で理事会の権限でモノ
の資産を処分(現金化)することは可能でしょうか?(当法人の定款では財産処分につ
いて総会の権限であるとの定めがないので、理事会の権限になると思います)

→可能です。
    
(2)解散総会後、すぐに官報で解散公告を行いますが、公告期間中に(2カ月を経
ないうちに)債権回収や債務返済を一部進めても問題ないでしょうか? 債権者が名
乗り出た場合を想定して、財産のすべては処分せずにおくつもりですが。

→公告期間中に債権回収することは、全く問題ありません。
  債務返済についても、民法には、債権申出期間中の弁済を禁じている商法423
 条のような定めがありませんから、解釈上は債権申出の公告期間中に、申し出のあ
 った債権者に対し順次弁済することが出来ると解釈されています。
  しかし、総資産額が総債務額に足りないときは、清算は破産に移行します。破産
 に移行した場合、破産管財人はこの弁済を否認して弁済したお金を取り戻し、債権
 額に応じて配当することになります。
  従って、もし総資産額が総債務額に足りないと思われるときには、弁済をしてし
 まうと、あとで破産管財人に余計な手間をかけさせることになってしまいますので、
 弁済しないでそのままプールしておいた方がいいかと思われます。
  なお、仮に総資産額が総債務額に足りない場合でも、総資産の範囲で債務の弁済
 するように債権者と交渉して和解すると、破産を避けることが出来ます。破産する
 にも予納金が必要ですので、さしたる資産もないと思われるNPO法人の場合、破
 産するのは債権者のためにも得策ではありません。
  NPO法人の場合、債権届出期間の終了を待って総債務額を確定した上で、それ
 が総資産額より多いときは、債権者と話し合って債権額に応じた配当をすることに
 よって残債務を免除して貰い、最終的に資産も負債もゼロという形にして清算を結
 了するのが賢いやり方です。

(3)法人で賃借しているアパート(主たる/従たる事務所ではありません)について、
法人から理事の1人へ名義変更を検討しているのですが、法人(理事会?)と当該理事
と貸主で合意があれば問題ありませんか? 当該理事から法人会計へ敷金相当額を払っ
てもらわなければならないのでしょうか?

→ 不動産の賃借人たる地位の譲渡は、貸主、借主(譲渡人)、新借主(譲受人)の
 3者契約でするのであれば、問題ありません。
 但し、新借主となる理事自身が当該法人の代表者として契約当事者となること
 は民法108条に違反しますので、他の理事に当該法人の代表行為をして貰うか、
民法57条(NPO法30条によって準用)に基づき特別代理人を裁判所に選任
して貰う必要があります。
当該法人が賃貸借契約の際賃貸人に預託した敷金返還請求権は、当該法人の資
産ですから、原則としてこれを賃貸人から返還して貰う必要があります。(当該
理事が法人に敷金相当額を支払うわけではありません。)
その上で、当該理事が賃貸人に別途敷金を預託することになります。

(4)債権者との合意があれば、法人の備品(パソコンなど)を譲渡することで債務を
帳消しにしてもらうことはできますか?
  
→可能です。この場合「代物弁済」ということにするか、パソコンを「譲渡」して、
 その代金と債務額を対当額で相殺すると考えるかは、処理がしやすい方で考えて
 ください。

債務額と譲渡備品の時価との差額を益として会計に計上して問題ありませんか?
 
→債務額が10万円で、代物弁済するパソコンの価額が7万円として、その代物弁
済により債務がチャラになるということであれば、3万円の「益」となります。 

(5)解散や清算の手続きを通じて、役員や清算人が債務を負うなど、不利益を被る事
態は起こりませんか?

→「法人」というのは、独立した権利義務の主体者ですから、その債務はあくまで
 も当該「法人」のものであり、これがその役員や清算人に及ぶことはありません。
 ただ、役員や清算人がその職務上の注意義務を怠り法人に損害を生じさせたとき
 には、損害賠償義務を負うことがありますが、それはまた別の問題です。

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以上です。ご参考になさってください。

シーズ・轟木 洋子

Re: 法人解散に際しての財産処分。 投稿者:団体職員 投稿日:2004/08/03(Tue) 13:06:00 No.3717
轟木洋子さま

ご丁寧な回答をありがとうございます。
たいへん勉強になりました。
浅野さまにもよろしくお伝えください。

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