通常総会における議案提出権 投稿者:
海老沢光夫 投稿日:2001/05/16(Wed) 15:11:00
No.374
「通常総会における議案提出権」に関する質問です
この2月よりNPO法人として事業開始した者ですが、この6月
に最初の定期総会を開催します。会員(正、賛助)の議案提出権
についての質問について教えていただきたく、よろしくお願い致します。
当法人の定款には、総会の議決事項として、
(7)その他運営に関する重要事項
を謳ってあります。
1.正会員について
・議案提出権限はあるのでしょうか?
ある場合、どのような手続きで会員はあげられるのでしょうか?
・総会における緊急動議権限はあるのでしょうか?
この場合、緊急動議とは、議案打ち切りとか、休憩など総会運営
事項について総会の場で発言するもの、という意見を以前聞いた
ことがありますが、総会運営に関すること以外、一般的議題(例、会員
の権利など)も緊急動議として上げることは可能でしょうか?
2.賛助会員(総会の議決権はありません)について
・総会への出席はできるのでしょか?
可能な場合、どのような手続きにより、出席できるようになるのでしょうか?
また、断ることはできるのでしょうか?
・議案提出権限はあるのでしょうか?
ある場合、どのような手続きで賛助会員はあげられるのでしょうか?
・総会における緊急動議権限はあるのでしょうか?
(出席できなければ別ですが)ある場合、どのような手続きで賛助会員は
あげられるのでしょうか?
以上
Re: 通常総会における議案提出権 投稿者:
シーズ・轟木 洋子 投稿日:2001/05/21(Mon) 17:11:00
No.375
海老沢さん、
ご投稿ありがとうございました。総会の準備、お疲れさまです。
総会の運営は、基本的に定款、または定款に「この定款に定めるほか、別に定める
規則による」などと定めておられる時は、その「総会運営規則」などに従うことに
なりますが、確認のために、現在専門家に問い合わせております。
申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちくださいますようお願いいたします。
シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 通常総会における議案提出権 投稿者:
シーズ・轟木 洋子 投稿日:2001/05/22(Tue) 15:06:00
No.376
海老沢さん、
お待たせしました。ご質問について、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋さんから
以下のような回答をいただきました。どうぞご参照ください。
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一. 正会員は総会に議案を提出する権限があるか
1、招集通知に議案として記載せよという権限があるか
通常は総会はNPO法人の代表者が招集することになっていますが、その招集通知には
「会議の目的たる事項」が示されています。すなわち、招集通知に「議案」が記載される
わけですが、この「議案」を決める権限のあるのは招集権者ですから、正会員といえども
この総会の招集通知にその正会員が考えた「議案」を記載せよという権限はありません。
但し、定款に例えば「正会員から請求があるときは、招集通知にはその議案を会議の目
的たる事項として記載しなければならない。」という趣旨の定めがあるときは、これが可
能になります。
2、総会の場で議案を提案できるか
ア、定款の定め方によりますが、原則としては出来ません。
特定非営利活動促進法30条は、民法62条、64条を準用しています。すなわち、
①総会の招集は「会議の目的たる事項を示し」て行わなければなりませんし、(62条)
②また、総会の決議は、予め招集通知で通知をした事項についてのみすることが出来る
ことになっています(64条)
これは、正会員が総会に出席するかどうかは、招集通知に記載された「会議の目的たる
事項」(つまり「議案」)を見て決めるわけですから、招集通知に記載されていない議
案がいきなり総会に上程され、予想外の決議がなされてしまうということを防ぐためで
す。
イ、しかし、民法64条は、定款に別段の定めがあれば総会の招集通知に「会議の目的た
る事項」として記載されていない事項についても「決議」することが出来る旨定めて
います。
従って、定款にその旨の定めがあれば、総会の場でいきなり議案を提案し、これを決
議することが可能です。
二.「緊急動議」について
1、「議案」とは、合議体における会議事項を指しますが、「動議」とは合議体の構成員
が発議する会議事項のことを指します。「緊急」に発議されることが多いので「緊急
動議」といわれることもありますが、同じ意味です。
2、動議は合議体の構成員が発議しますので、例えば議長不信任とか休憩とか審議打切り
とか議事運営に関するものが一般的ですが、例えば議案に対する修正動議といった議
事運営に関しない動議もあります。
3、議事運営に関する動議は総会に出席している構成員(つまり正会員)であれば、誰で
も自由に発議することが出来ます。
問題は議事運営に関しない動議(例えば、①議案の修正動議、②理事の選任・解任の
動議、③新たな議案を審理して議決する旨の動議など)が許されるかどうかというこ
とです。
4、これは、上記一、2、アで述べたことと関連してきます。すなわち、このような動議
を無制限に認めると、総会の招集通知を見て出席の必要がないと判断して出席しなか
った正会員の権利を侵害することになるからです。
これに関連して株主総会の場合には、
“招集通知に会議の目的たる事項の記載を要するのは、株主に対し予め議決権行使
の準備をさせるためであるから、通知に記載のない事項あるいは記載が不完全で
不明の事項について決議したときは、決議は取消し事由がある。しかし、他の記
載事項から何が議題となっているか推知できるときや、特定の議題を直接表現し
ていない場合でも、記載されている事項の解釈から一般株主にとって論理必然的
に予期される事項については決議の対象と解しうる。”(注釈 会社法(5)
232条注釈15)
と解されており、この趣旨の判例もあります(大判昭7.2.27 法学1-7-117、
福岡地判平5.9.30判例時報1506-145)
5、従って、上記3の①の議案の修正動議については動議として認められると解されます
が、②③については、他の議案との関係や定款の定め方によるものと思われます。
三、賛助会員の総会への出席
定款の定めがあればそれによります。定款の定めがない場合には、賛助会員の出席を認
めるかどうかは、議長の議場運営権限の範囲内で議長が決めることが出来ると解されます。
この議長の判断については、正会員は「動議」によりその是非を総会に問い、その総会自
体で出席を認めるか認めないかを決定することが出来ると解されます。
四、賛助会員に議案提出権があるか
ありません。
賛助会員は総会の構成員ではないからです。
五、賛助会員に「緊急動議」の提出権があるか
ありません。
賛助会員は、議長や総会の決議で許された場合に総会にオブザーバーとして出席できるだけ
で、それ以上の権限は全くありません。
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それでは、またご質問がありましたら、ご投稿ください。
シーズ事務局・轟木 洋子