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グループホーム開業を念頭に置いた借地契約について 投稿者:naka 投稿日:2004/08/22(Sun) 20:54:00 No.3769
どこで質問すれば良いのかわからず こちらで質問させて頂きます。
もし板違いであれば申し訳ありません。

現在4期目のNPO法人で障害者支援を主な事業目的としています。
日常業務としては、ヘルパー派遣、ディサービス等を行って来ましたが
今期知人の土地を借り、事業所とディサービス施設を含む建物を
新築し移転、開業しています。

土地を借りるにあたっては地権者さんとの話し合いの中で、
将来的には同敷地内にグループホーム用施設を建築、開業する
予定となっており、当初の移転計画の段階から条件として
話し合いを行ってきました。
又地権者さんが施設建設、開業準備資金の為に申し込んだ
融資の担保として該当土地を担保提供頂いております。

既に開業していますが、正式な借地契約書はまだ締結されておらず
現在その内容について話し合いを進めています。地権者側の要望として
事業用定期借地権による契約締結があがっていますが調べる限りでは
居住用に使用できない可能性があります。


そこで下記項目について質問させてください。
1.NPO法人が運営するグループホームは居住用施設となるのか?
2.事業用借地権契約では、一切の居住用途での使用は出来ないのか?
3.もし契約書の締結が行われない場合、今回の事例では地権者との間で
契約が結ばれていると判断されるのか?

以上3項目、ご教示お願いします。
Re: グループホーム開業を念頭に置いた借地契約について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/08/30(Mon) 17:56:00 No.3770
nakaさん、

難しい部分があり、少し調べるのに時間がかかりそうです。
もう少しお待ちくださいますようお願いいたします。

シーズ・轟木 洋子
Re: グループホーム開業を念頭に置いた借地契約について 投稿者:naka 投稿日:2004/09/01(Wed) 17:47:00 No.3771
色々と調べてみた結果です。

1.NPO法人が運営するグループホームは居住用施設となるのか?

事業用定期借地権で言う「居住用」とは 借地権設定者(借主)が
生活をする施設との意味らしいです。
事業としての居住スペースや施設(例えばマンション等)は
通常「居住用」にはあたらないようですが言葉の定義が
法規で定められているわけでは無いので あくまで通例、通常って
範囲のようです。


2.事業用借地権契約では、一切の居住用途での使用は出来ないのか?

上記の通り、借地権設定者の生活用で無い限りは居住用途に
あたらないので当然使用可能らしいです。


3.もし契約書の締結が行われない場合、今回の事例では地権者との間で
契約が結ばれていると判断されるのか?

当該土地を担保提供しているので融資の契約が締結されて時点で
同時に借地契約も締結されているようです。


上記3点とも あくまで相談の中での回答であったため
ソースの提示はできません。
また最終的には司法判断になる可能性も有り得ます。

ログの為に記載させていただきます。
現時点で一応解決とさせて頂きますが
もし違う見解等ございましたら 是非お聞かせください。
Re: グループホーム開業を念頭に置いた借地契約について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/09/06(Mon) 10:40:00 No.3772
nakaさん、

お待たせいたしました。
弁護士でシーズの運営委員の浅野晋さんから、お尋ねについて次のような回答をいただ
きました。
どうぞ、ご参考になさってください。

------------------

一、NPO法人が運営するグループホームは居住用施設となるのか?

 1、グループホームは、そこで人が生活することを目的としていますから、当然「居
住用施設」ということになります。
 従って、グループホームの建築を目的とした事業用借地権設定契約は、借地借家法第
24条1項に違反するので、認められません。なぜそのようになるのかは、次の通りで
す。

 2、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権のことを「借地権」といいま
す。民事法の分野では「契約の自由」というのが原則ですから、本来であれば建物を建
てるための借地契約の内容についても、当事者が自由に契約内容を定めることが出来る
はずです。
 しかし、借地権の設定契約を「契約の自由」の原則に委ねると、地主と借地人の力関
係には大きな差がありますので、借地人にとって著しく不利益な内容の契約がまかり通
る恐れがあります。このため、借地借家法は「契約の自由」に一定の制約を加え、借地
人を保護するため様々な定めをおいております。そして、これに反する契約は無効とさ
れます。

 3、借地権の存続期間については、借地借家法第3条は原則30年例外契約で30年
より長い期間を定めたときは、その期間としています。
 しかし、この契約期間が過ぎても、借地権者が建物を所有して土地使用を継続してい
るときは、借地権の期間は自動的に更新(法定更新)されますので(借地借家法第5条)、
実際には借地権の存続期間は際限なく延長されていきます。
 このため、土地所有者の立場からすると、いったん借地権を設定してしまうと、事実
上半永久的に土地を貸したままになってしまうため、借地権を設定するのに慎重になり
ますし、設定する場合には相当高額の借地権設定料をもらうことになります。

 4、そうすると、土地の円滑な利用が阻害され、必ずしも現在の社会の要請に合致し
ない場合も生じてきます。そこで、借地借家法によって、期間の更新をせず、当初定め
た借地期間が経過すると借地権が自動的に消滅するという形態の借地契約が認められる
に至りました。
これが「定期借地権」です。この「定期借地権」は、存続期間を50年以上として定
める必要があります。つまり50年未満の定期借地権は認められません。
 しかし、例えば50年の契約期間が経つと、自動的に借地権は消滅し、その土地を返
してもらえますので、地主としては安心して賃貸できますし、従って借地権設定料も安
くなります。
 ただ、期間をあまり短くすると、賃借人側に不利益となるという考慮から、最低限の
期間を50年としています。
そしてこの「定期借地権」は、その所有目的である建物が、居住用であっても、事業
用であっても差し支えありません。

 5、ところが、経済社会においては、事業活動をするためには、必ずしも50年とい
う長期間の借地権の設定をしなくてもいい場合があります。
 このため借地借家法第24条は「専ら事業の用に供する建物(居住のように供するも
のを除く)の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上20年以下として借地権を
設定する場合」には、借地期間の更新をしないという「事業用借地権」を認めています。

 6、すなわち、この「事業用借地権」というのは、特に「専ら事業用の用に供する建
物」に限って、借地人に対する保護を薄めようとするわけですから、当該建物が「専ら
事業用の用に供する建物」かどうかについては、厳格に判断されることになります。条
文上もわざわざ「居住の用に供する建物を除く」と念入りに定めていますので、居住用
の建物の所有を目的とした事業用定期借地権契約をすることは出来ません。

 7、グループホームは、そこで利用者が居住するわけですから、それがNPO法人の
事業の一環としてなされる場合であっても、「居住の用に供する」建物ということにな
ります。営利を目的としないNPO法人が事業主体であっても、「お目こぼし」はあり
ません。
 従って、グループホームの建築を目的とする事業用借地権設定契約は出来ないことに
なります。

 8、この事業用借地権契約は「公正証書」によってしなければならないことになって
います(借地借家法24条2項)。この「公正証書」は「公証人」が作成しますが、公
証人は違法な内容の公正証書を作成することが出来ません。従って、当事者間でグルー
プホームの建築を目的として事業用借地権設定をする旨合意しても、借地借家法24条
1項に反する契約であるとして、公証人は公正証書の作成を拒否することになりますの
で、結局公正証書を作成してもらえないことになります。
 この場合、事業用借地権契約としては無効ですが、多くの場合は(もちろん契約した
経緯等にもよりますが)通常の借地契約としては有効と解されます。すなわち、借地人
保護のため借地契約の原則に戻ることになるわけです。
 従って、借地権のその続期間は30年で、その後も更新するということになり、借地
人側に利益があることになります。


二、事業用借地権契約では、一切の居住用途での使用は出来ないのか?

 1、当初から「居宅」、「共同住宅」、「寄宿舎」、「寮」、「グループホーム」と
いった居住用途で事業用借地権の設定は出来ません。
 このことは、上述したところからおわかり頂けると思います。

 2、それでは、例えば当初は「店舗」建物を建築するということで事業用借地権設定
契約を締結し、「店舗」を建築したのだけれど、その後店舗としては使用せず住居とし
て使用した場合にどうなるかですが、この場合次のような方向が考えられれます。

(1)地主の承諾がない場合
  契約違反ということで、借地契約を解除される恐れがあります。

(2)地主の承諾がある場合
  a、事業用借地権ではなく、普通の借地権契約であるとされる場合
b、契約としては事業用借地権契約としての効力が維持される場合

 3、上記(2)について、どのような場合にaとなり、どのような場合にbとなるかは、
判例の集積もありませんので、はっきりいたしません。



三、もし契約書の締結が行われない場合、今回の事例では地権者との間で契約が結ばれ
ていると判断されるのか?

 1、契約は「契約書」を取り交わさなくても、当事者間の意思の合致があれば口頭で
も成立するというのが原則です。

 2、しかし、事業用借地権については、借地借家法第24条2項に「公正証書によっ
てしなければならない。」との明文がありますので、事業用借地権契約をするという当
事者間の意思の合致があったとしても、公正証書によって契約をしないときは、事業用
借地権契約としては無効です。

3、それでは、(1)当事者間で事業用借地権契約をするという意思の合致があった、
(2)建物を建築した、(3)地代も払っている、(4)しかし、公正証書による契約はしてい
ない、という事実関係がある場合、どのように考えたらいいでしょうか。
 この場合、上述したところから、事業用借地権契約としては無効ですが、上記(2)、(3)
の事実に基づき、普通の借地権の設定契約がなされたと考えることが出来ます。
 従って、もちろん居住用の建物を建築することが可能ですし、また借地権の存続期間
は借地借家法第3条に基づき30年となり、その後も更新することになります。

 4、すなわち、上記3の(2)、(3)の事実さえあれば、借地人に有利な結果となるわけ
です。
 これは、建物所有目的の賃貸借については、借地借家法が民法の賃貸借の条項の特則
として、借地人保護のためのいろいろな条項をおいているためです。

 5、なお、契約書がなくても、借地借家法の定めで規律されますので、通常は特段の
支障はありません。
 「借地契約書」は、一般に地主側に利益となる条項が盛り込まれていますので、借地
人の立場からすると、むしろ契約書がない方が逆に有利という場合が多いのです。
 ただ、契約書がないと借地契約があるのかどうかはっきりしないと心配になるかもし
れませんが、借地契約があるかどうかは、上記3の(2)、(3)の事実があるかどうかで決
まりますので、建物が存在し、きちんと地代を支払っていさえすれば、別に心配はない
ということになるわけです。

----------------

以上です。

シーズ・轟木 洋子
Re: グループホーム開業を念頭に置いた借地契約について 投稿者:naka 投稿日:2004/09/08(Wed) 15:58:00 No.3773
浅野さん、轟木さん
わかりやすい説明ありがとうございます。
大変良くわかりました。
板違いかも知れない質問に 詳しく回答頂き申し訳ありません。
返信が遅くなった事お詫びいたします。

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