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役員の任期伸長について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2004/09/29(Wed) 15:53:00 No.3893
赤塚です。今回は私にも質問させてください。時々役員の
改選にあたって法務局に仮理事の選任を求められたという
話を聞きますが、どのような場合に仮理事の選任が必要な
のかということです。法務局の解釈と内閣府の解釈が微妙
に違っていて都道府県の担当者も戸惑っているようです。

少し問題を整理しておきます。NPO法は役員の任期は2年
以内と定めています(A)。また、従来から所轄庁のモデル
定款には「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任
者が就任するまでは、その職務を行わなければならない」
(B)との一文があります。一方、昨年5月のNPO法改正で
は定款で役員を社員総会で選任するとしていることを条件
に定款に「後任の役員が選任されていない場合には、任期
の末日後最初の総会が終結するまでその任期を伸長する」
(C)と規定することによって任期は伸長できることになっ
ています。

これまでに調べたところではもともとの任期が定款で1年と
定められている場合には、仮に1年の任期を超えてから総
会を開いても(A)の規定には違反しないので(B)の規定で
もその改選は有効であるということのようです。

問題はもともとの任期が2年で、2年の任期が切れた後に
総会を開く場合です。内閣府担当者の説明は、(B)の規定
でも総会の召集は可能であるから仮理事の選任は必要ない、
また、(B)の規定がない場合でも、民法第654条の「急迫
の事情」にあたるため、仮理事の選任をしなくてよい、とい
う解釈だそうです。一方で、法務局の解釈では(B)の規定
では総会は招集できず、定款に(C)の規定がない限り総会
は所轄庁の選任する仮理事が招集するしかないということ
のようです。

質問は次の4点です。
(1)法務局の解釈と内閣府の解釈はどちらが正しいのか。
(2)法務局の解釈が正しいとしたら、もっと頻繁に仮理事の
選任が求められるはずであるが、少ないのはなぜか、法務
局によって解釈が違うのか、それとも総会の招集さえ任期
の切れる前に行えば総会の期日が任期の切れた後でも
その総会は有効で役員の後任の選任が可能という解釈な
のか(この場合、実際にいつ総会招集を行ったかは法務局
への提出書類からは判別できないので事実上仮理事の選
任が要求されるケースはほとんどなくなる)。
(3)上記の後者の解釈の場合、そこで選任された役員が
前任者と同一人物だとすればその役員は「任期満了による
退任及び選任」として登記するのか、それとも「重任」で登記
できるのか。
(4)「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が
就任するまでは、なおその任にあるものとする」という定款
の規定を見たことがあるが、これは上記の(B)タイプなのか、
それとも(C)タイプなのか。

            公認会計士・赤塚和俊
Re: 役員の任期伸長について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/09/30(Thu) 14:24:00 No.3894
赤塚さん、

お尋ねの件、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋さんに聞いてみました。
以下がその回答です。
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1、まず、内閣府の見解は、特定非営利活動法人の所轄庁の一つとしての解釈では
あるのでしょうが、この問題は登記が絡んできますので、どうしても登記関係の所
轄庁である法務省の行政解釈の方を尊重せざるを得ません。

2、また、内閣府の見解は、正式の行政解釈ということではなく、担当者の意見程
度のものと思われますし、法務省の正式の行政解釈である平成15年4月18日付
第1197号法務省民事局商事課長通知を読むと、特定非営利活動促進法第24条
2項の解釈として、十分に説得力のある解釈ですので、実務上はこの商事課長通知
の解釈に依るべきものです。
  
3、なお、いつ理事の任期が終了するのかは予め分かっているのですから、 法人
としては事前にそれに対応する対策を講ずるのが当然のことです。従って、それを
怠ったに困った事態が生じても、それをもって「急迫の事情がある」とは言い難い
ように思えます。

4、次に「2年の任期満了前に総会の招集手続きを行い、その総会の期日が任期満
了後だった場合に、その総会は有効なのか」という問題ですが、招集手続きは適法
になされたわけですから、その後に任期満了になったとし てももちろん総会は有
効に開催できます。
これは例えば、総会の招集をした代表理事が、その総会の前に死亡した場合であっ
ても、総会は有効に開催できることを考えればおわかりになると思います。

5、この4の総会で理事が選任された場合、登記上「任期満了による退任及び選任」
なのか「重任」なのかという問題ですが、登記上「任期満了による退任及び選任」と
なると思われます。
「重任」というのは、同一人物が任期満了(あるいは辞任)と同時に(つまり時間
的間隔を置かずに)再選され就任した場合をいいます。
「2年の任期満了前に総会の招集手続きを行い、その総会の期日が任期満了後だっ
た場合」には、総会時点ではすでに任期が満了しており、しかも任期満了と総会と
の間には「同時」とはいえない時間的間隔がありますので、その総会で再選されて
も「重任」とはいえません。
(なお、後述する特定非営利活動推進法第24条2項に基づく定款の定めにより任
期が伸長された場合は、当該社員総会の終結のときまでは任期内ですから、その総
会で同じ人が選任された場合には「重任」ということになります。)

6、次に「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、な
おその任にあるものとする。」という定款の規定は(B)タイプな のか(C)タ
イプなのか、という問題ですが、これは私としては次のアように考えますが、人に
よって解釈が分かれると思います。
 
 
ア、特定非営利活動促進法第24条2項は、役員の任期を「2年以内において定款
で定める期間」とする同条1項の原則を変更し、
「2 前項の規定にかかわらず、定款で役員を社員総会で選任することとしている
特定非営利活動法人にあっては、定款により、後任の役員が選任されていない場合
に限り、同項の規定により定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が終結す
るまでその任期を伸長することが出来る」
としてます。 
 すなわち、この条文では、定款の定めによって「後任の役員が選任されていない
場合に限り、同項の規定により定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が終
結するまでその任期を伸長することが出来る」としているわけですから、その定款
の定めの中に何らかの形で、
   (1)後任の役員が選任されていない場合に限り任期の伸長が出来ること
   (2)その任期の伸長期間は、定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が
     終結するまでの間であること
が表現されている場合でなければなりません。
 問題の「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、なお
その任にあるものとする。」という定款の定めは、「後任者が就任するまでは」とい
う文言により上記(1)の点は表現されていると思われますが、「なおその任にあるもの
とする」という文言だけでは上記(2)の点が表現されていません。
 従って、Bタイプであると思われます。

イ、これに対し、次のような考え方もあり得ます。
 なるほど「なおその任にあるものとする」という文言だけでは上記(2)の点が表現さ
れていないけれども、特定非営利活動促進法第24条2項にこの(2)の点が定められて
いるので、わざわざ定款でこの(2)の点を表現しなくても、その伸長期間はこの条文通
りになる。この定款では、所定の任期満了後もなお「その任にある」として、少なく
とも任期を伸長する趣旨が明確になっているのだから、その伸長期間が明記されてい
なくても差し支えない。
 従って、この定款の定めはCタイプである。

ウ、どちらの考え方をとるかですが、上記イの考え方があり得るとしても、それに依
ることは危険があります。アの考え方に基づき、疑義のない定款の表現をしておいた方
がいいと思います。
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以上、参考になれば幸いです。

シーズ・轟木 洋子

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