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特別代理人の選任 投稿者:よしだ 投稿日:2004/10/08(Fri) 15:33:00 No.3947
法人の代表理事個人の車を法人名義に無償譲渡しようとしたところ、陸運支局から、「利益相反にあたるので、所轄庁から特別代理人を選任してもらい、特別代理人が手続きするように」との指導を受けました。そもそも無償譲渡が利益相反にあたり、特別代理人をたてる必要があるのでしょうか。定款には、「利益相反事項について理事会の承認が必要」とか「利益相反事項については、監事が行う」などの規定は設けていませんでした。また、仮に特別代理人を申請する場合は、特別代理人は誰がふさわしいのか、申請者は代表理事名でいいのか教えてください。
Re: 特別代理人の選任 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/10/13(Wed) 13:09:00 No.3948
よしださん、

お尋ねの「利益相反行為」について、シーズの運営委員で弁護士の浅野さんから、
次のような回答をもらいました。

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1、特定非営利活動促進法第30条は民法第57条を準用していますから、法人と
理事との利益が相反する事項については、理事は代理権を有せず特 別代理人を選
任する必要があります。

2、しかし、この民法第57条の定めは、法人の利益を犠牲にして理事個人が利益
を図ることを防ぐために設けられたものです。従って、民法第57条の「法人と理
事との利益相反する事項」の中には、理事から法人への負 担を生じない無償の贈
与をすることなどは含まれないと解されています。
 理事が法人に対して無償の贈与をした場合、理事には経済的な損失が生じますが、
法人の方は何の損失もなく経済的な利益を獲得できます。すなわち理事の損失にお
いて法人が利益を得ることになりますから、形式的解釈をすれば法人と理事との利
益は相反するのですが、民法第57条が設けられた立法趣旨から考えて、このよう
な場合は「法人と理事との利益相反する事項」の中に入らないと解釈されているわ
けです。

3、これに対し理事個人の車を法人との間で有償の「売買」をする場合は、理事に
とっては売買価格が高いほど利益ですし、法人にとってはこれが安いほど利益にな
りますから、「売買」は「法人と理事との利益相反する事項」ということになりま
す。

4、ご質問の案件は、代表理事個人の車を法人に無償譲渡するということですから、
一般的には利益相反行為にはなりません。従って、陸運支局の見解は間違っていま
す。
もっとも、無償の贈与といっても、例えば廃車するための費用を法人に負担させる
目的で、全く財産的な価値の無いポンコツ車を法人に贈与する場合には、実質的に
見て利益相反行為となり得ます。
陸運局ではそのような実質的なことを審査し判断する権限がありませんから、本
来ならば、外形的に無償行為である贈与ということであれば、それ以上詮索するこ
となく、利益相範囲には該当しないとして登録を認めるべきものです。

5、念のため国土交通省の東京運輸支局に電話で照会したところ、
  (1)贈与の場合は利益相反行為とはならない。従って特別代理人の選任は必要ない。
  (2)「贈与」であることは、名義変更申請書に譲渡の原因を記載する欄があるので、
そこに記載してあれば分かる。従って、どうして登録事務所がそんなことを言ったのか理解できない。
 
とのことでした。

6、なお、先に述べましたように、代表理事が所有している自動車を法人に有償で
売却する場合には利益相反行為に当たりますが、その場合であっても、他にも代表
権がある理事がいる場合には、その理事がその法人を代表して「売買契約」をし、
移転登録の申請をすれば、特別代理人の選任は必要ありません。

7、特別代理人の選任を申請をする場合、その申請自体を代表者がすることについて
は何ら利益相反ではありませんから、なんら問題ありません。また、民法第56条は
「利害関係人」も申請できる旨の定め方をしていますから、他の理事でも申請をする
ことが出来ます。

8、次に特別代理人として誰が適任かですが、裁判所によっては申請の際に申請人が
「推薦」する人を特別代理人として選任してくれるところもあります。しかし、それ
では公正さが担保されないということで、裁判所が独自に弁護士などから選任するこ
ともあります。どちらの取り扱いかは、事前に管轄の裁判所に問い合わせる必要があ
ります。
なお、後者の場合、選任された特別代理人に対する報酬を支払わなければなりません
ので、結構大変です。

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以上、参考になれば幸いです。

シーズ・轟木 洋子

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