たかさん、
以下、番号順にお返事いたします。
(1)委託事業が報告徴収の対象になるか否かについて
このご質問の内容を、しっかりとは分かりかねております。ご質問は、委託を出した
役所から、報告徴収の対象になるか、という意味でしょうか。そうであれば、委託の契
約内容が分からないので、なんともお答えできません。
次に、「1、」と「2、」にお書きになった管理費と事業費の割合のご質問ですが、
これは内閣府が発表している「NPO法の運用方針について」というもののなかに含ま
れているものです。
この運用方針は、次のホームページから読むことができます。
http://www.npo-homepage.go.jp/law/031218program.html この運用方針に対しては、「市民活動団体であるNPOの実態をまったく理解してい
ないとしか思えない」と、強くNPO側から批判があるものです。
たとえば、ボランティアによる活動がほとんどの場合、事業費よりも管理費が大きく
なるということはNPOでは考えられることです。
(ただ、事業費が10万円で、管理費が50万円というような極端な例があるかどうか
は分かりません)
また、所轄庁の監督や改善命令、認証の取り消しについては、NPO法第41条、
42条、43条などに規定されています。基本的に、法令や定款に「違反する疑いがあ
ると認められる相当な理由」がない限りは、報告や検査の対象にはなりません。管理費
が事業費の2分の1を超えていることだけを理由にそうした検査が行われたり、報告が
求められることはあってはなりません。
(2)理事の損害賠償
基本的に法人の目的に沿った事業であれば、それが税法上の収益事業であるか否かに
関わらず、理事が個人的に責任を負うことはありません。法人の定款に書かれた「目的」
の範囲内で活動していた場合であれば、理事は個人的責任を問われることはないという
のが前提です。
ただし、もし定款にも定めがなく、総会などでも決議されなかった事柄において負債
などを負った場合などは、法人ではなく、その執行に関係した理事、その他関係者が連
帯して賠償責任を負うことになります。
また、たとえ総会で決議された事項であったとしても、NPO法人の目的外の決議
(例えば環境保護のNPO法人がパチンコ店を経営するために借金をすることを決めた
ような場合)によって借り入れて、その借金の返済をできなくなったような場合は、そ
の総会に出席して賛成した社員の責任も問われることがあります。
以上が、基本的な前提です。しかし、法人の目的の範囲内であれば、理事個人が負債
の返済義務を負うことはないというのが前提と書きましたが、一方で民法644条は、
「(理事は)受任者として『善良な管理者の注意』義務をもって、その職務を遂行する
義務を負う。」と定めています。
つまり、理事は、法人が行う活動における過失や事故などに対して、通常期待されてい
る程度の抽象的・一般的注意義務を要求されています。このことから、定款に書かれた
「目的」内の活動においても、事故などが発生した場合で、訴訟がなされたような時は、
理事は責任を問われる可能性がない訳ではありません。
例えば、最近、医療法人内で起きた医療ミスが裁判で争われるというケースが増えて
います。医療法人内で医療を行うのは目的に合った行為ですが、医療法人だけではなく、
院長の責任が裁判で問われる、ということもあるようです。このように、法人になって
いれば、理事個人の責任は全く問われないかというと、100%そうだとは言い切るこ
とはできません。
(3)NPO法人の社員は、会社の社員みたいなものか
これは、まったく違います。一般的にいう営利企業(会社)の社員とは従業員のこと
です。NPO法人の社員は、従業員ではありません。
NPO法人というのは、社団の一種です。社団とは人や団体が集まってできている団
体のことです。その集まっている人や団体を社員といいます。この社員は、総会で議決
権を有しています。よく「正会員」などと呼ばれています。NPO法人の社員は、その
NPO法人の目的に賛同して、その運営にも関わっていこうという人たちです。社員は、
会費を支払うことはよくありますが、従業員ではないので、NPO法人から給与をもら
うことはありません。(社員である人が、職員、つまり従業員になることは有り得ます)
NPO法人というのは、市民活動団体ですから、志のある市民が参加して運営されて
いることが多いのです。こうした市民が、会費を支払って社員となり、ボランティアと
して運営に関わって総会での議決にも参加したりしているのです。
(4)役員は社員に監視されているのか
NPO法の社員は、確かに社団法人の社員と同等と考えていただいていいと思います。
また、社員は会社の株主に近いか、というと、そういう面もありますが、NPO法人の
社員は、持分もありませんし、残余財産の請求権もありません。NPO法人をとおして
金銭的・物的な利益を得ることはありません。
また、役員は社員に監視されているか、という点についてですが、NPO法人では、
社員たちがまとまって理事に法人の業務を、一種委任しているという形です。
多くのNPO法人では役員の選出の場を総会として定款に定めています。その総会で
議決権を持つのは社員です。そのため、社員が承認しなければ、いくらなりたいと言い
張っても役員になることはできません。また、たとえば、理事の業務執行に対して問題
があるとして監事が総会を招集し、その総会で場合によっては理事を解任される、とい
うこともありえます。
シーズ・轟木 洋子