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有償ボランティアの対価性 投稿者:Bobby 投稿日:2005/02/09(Wed) 15:19:00 No.4354
お世話になっております。
昨年末の流山訴訟の判決に関連して教えていただきたいのですが、
判決の骨子において、
”ふれあい事業に係る1時間あたりの料金800円はサービス提供の対価である”
とされていることから、
この場合、消費税法上は、800円が法人の課税売上、
会員に対する600円が法人の課税仕入となるのでしょうか。
また、仮に会員に対する支払が同額の800円で法人の取り分がない場合は、
預り金の受け払い処理にて、法人の課税売上としなくても問題ないでしょうか。
よろしくお願い申し上げます。
Re: 有償ボランティアの対価性 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2005/02/11(Fri) 06:37:00 No.4355
Bobbyさん

> 昨年末の流山訴訟の判決に関連して教えていただきたいのですが、
> 判決の骨子において、
> ”ふれあい事業に係る1時間あたりの料金800円はサービス提供の対価である”
> とされていることから、
> この場合、消費税法上は、800円が法人の課税売上、
> 会員に対する600円が法人の課税仕入となるのでしょうか。
> また、仮に会員に対する支払が同額の800円で法人の取り分がない場合は、
> 預り金の受け払い処理にて、法人の課税売上としなくても問題ないでしょうか。

流山訴訟の結果からすると、1時間あたりの料金800円は間違いなく消費税
法上の課税売上となります。会員に対する600円が法人の課税仕入となる
かどうかについては、判決文からは読み取ることはできません。一般的には
「ふれあい事業」においても事業に従事した会員に対する謝礼は給与として
処理されている場合が多く、それであればもちろん課税仕入にはなりません。

被告(税務署)は予備的主張として「請負業」ではないとしても「周旋業」に当
たるとしていました。周旋業であれば法人の収入は200円で600円は預り金と
いうことになるのですが、判決は「請負業」を採用したので、「預り金」ではない
ということになります。

法人の取り分なしで預り金処理したらどうかという点ですが、法人と利用者、
従事する会員の3者間の契約関係をどう解釈するかという問題ですので、単
に法人の取り分がないというだけでは判断できないと思います。

                 公認会計士・赤塚和俊
Re: 有償ボランティアの対価性 投稿者:Bobby 投稿日:2005/02/18(Fri) 12:15:00 No.4356
ご教示ありがとうございます。
当方では、利用料の精算にあたり、チケット制を採用しております。
利用者にあらかじめ当法人発行のチケットを購入していただき、
利用者は、サービス利用時にサービス提供者にチケットを渡していただき、
サービス提供者はそのチケットを当法人に持参し換金する流れです。
法人においては、利用者と提供者のコーディネイト、精算事務等を行っておりますが、
チケットの額面金額は全額サービス提供者に支払う為、法人の取り分はありません。
このような状況を踏まえてお伺いしたいのですが、
やはり、法人名でチケットを発行している以上、我々としては預り金のつもりでいても、
法人税基本通達2-1-39からみて、チケット発行日に法人の課税売上と
しなければなりませんでしょうか。
また、サービス提供者への支払ですが、活動規約においては、謝礼と位置づけております。
よって、不課税の謝礼金として源泉徴収なしで、損金処理は可能でしょうか。
当方、簡易課税制度を選択しているので、
できれば、預り金の受け払いで処理したいのが本音なのですが・・・・
何かいい方法がございましたら、ご教示いただけると助かります。
よろしくお願い申し上げます。
Re: 有償ボランティアの対価性 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2005/02/20(Sun) 04:28:00 No.4357
Bobbyさん

専門家ネットワークの他の方の意見も聞いてみますので
しばらくお待ち下さい。

         公認会計士・赤塚和俊
Re: 有償ボランティアの対価性 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2005/03/01(Tue) 04:08:00 No.4358
Bobbyさん

流山訴訟の結果についてさわやか福祉財団の堀田力さんは次のように総括
されています(機関誌「さあ言おう」2・3月号より、要約の文責は赤塚です)。
-----------------------------------------------------------------
まず、「ふれあい事業」は次の三つの類型に整理されます。
A.請負事業(法人側)+労働者(サービス提供者)型
法人と利用者の間には請負契約が成立し、法人とサービス提供者との間に
は雇用関係があります。このタイプは法人に各種納税義務があるだけでなく
労働関係法令も守らなければいけません。
B.調整事業(法人側)+個人請負業(サービス提供者)型
契約を結ぶかどうか、仕事の内容をどうするかはあくまで当事者同士で決定
し、法人は介入しないことが前提です。サービス提供者と利用者の間には請
負契約が成立しています。法人が仲介料を取る場合は周旋業に該当し法人
税の納税義務があることになります。
C.調整事業(法人側)+有償ボランティア(サービス提供者)型
この場合、法人と受益者、法人とサービス提供者、あるいはサービス提供者
と利用者のいずれの間にも請負契約も雇用関係も存在しません。提供する
サービスの内容について法人が決定も指示もしないことがポイントです。

堀田さんは流山のケースはこのうちのCに該当するとした上で、敗訴(事業
は請負業であり、利用料は法人の事業収入であると認定された)の理由とし
て、運営細則上サービスの内容を特定し、取次ぎの手続きも明確であり、利
用者の支払う金額も時間単位で定める(謝礼の任意性が認められない)等、
法人が自己の責任でサービス提供をコントロールしていると判断されたこと
による、としています。
また、判決は一方でサービス提供者のボランティア性は認めており、法人と
利用者との間で請負関係が成立するからといって、法人とサービス提供者と
の間に労働関係が成立するとはしていない、問題は有償ボランティアが法的
に認知されていないことにある、としています。
-----------------------------------------------------------------
以下は私(赤塚)の見解です。
問題は堀田説のCがあり得るのかどうかという点です。私は自発的なたすけ
あいもあることを否定するつもりはありませんが、一定のサービス内容を定
め料金体系もある場合には、何らかの契約関係が成立していることは否定
できないと思います(堀田さんも提供するサービスの内容について法人が決
定も指示もしないことがポイントです、としています)。法人とサービス提供者
との間に雇用関係(労働法規の適用)があるかどうかは、また別の問題です。

つまり、Bobbyさんのケースでも、法人と利用者か、あるいはサービス提供者
と利用者か、いずれかの請負契約は成立しているということです。それぞれ
の場合における法人税と消費税の課税関係は次のようになります。

(1)法人と利用者との間で請負契約が成立している場合
堀田さんの整理のAに当たります。法人税法上は請負業として課税対象と
なり、消費税法上も利用料は課税売上となります。
(2)サービス提供者と利用者との間で請負契約が成立し、法人はあっせん
をしているだけの場合
堀田さんの整理のBに当たります。法人に関しては請負業の課税はありま
せん。Bobbyさんのケースは「法人の取り分はありません」ということですか
ら、「周旋業」としての課税もありません。また、取り次いでいるだけであれ
ば消費税法上も預り金処理が可能ですから課税はありません。

要するに三者間でどのような契約関係が成立しているかということです。
それを判断するためには、堀田さんの指摘の通り「運営細則上サービスの
内容を特定し、取次ぎの手続きも明確であり、利用者の支払う金額も時間
単位で定める(謝礼の任意性が認められない)等、法人が自己の責任でサ
ービス提供をコントロールしていると判断」されるかどうかということです。

> やはり、法人名でチケットを発行している以上、我々としては預り金の
> つもりでいても、法人税基本通達2-1-39からみて、チケット発行日
> に法人の課税売上としなければなりませんでしょうか。

上記の通りです。(1)であれば課税売上です。(2)であれば預り金です。

> また、サービス提供者への支払ですが、活動規約においては、謝礼と
> 位置づけております。よって、不課税の謝礼金として源泉徴収なしで、
> 損金処理は可能でしょうか。

上記の(1)であれば、労働法規の適用の有無とは関係なく所得税法上は
給与所得となります。すなわち、源泉徴収の対象となり、消費税法上は
課税仕入ではありません。法人税法上は損金です。
(2)であれば、給与ではありませんから源泉の必要はありません。また、
預り金ですから、消費税法上も法人税法上も課税には関係ありません。

             公認会計士・赤塚和俊

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