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仮理事? 任期伸長? 投稿者:う~ん 投稿日:2005/02/17(Thu) 20:41:00 No.4380
役員任期の伸長についてお聞きします。

私どもの法人は理事会主導型の定款で、理事の選任も理事会で行っています。
来月末に役員任期が満了するのですが、現在、理事は法定ギリギリの3名しかおらず、
ちょうどその頃は3人とも出張などで遠出しており、理事会を開くことができません。
ならば今のうちに理事会で予選してしまおうと思ったのですが、法務局に相談したところ、
ひと月以上先の理事再任を議決するのはさすがに認めがたい、と言われてしまいました。

定款には役員の任期伸長規定(後任者就任まで)が一応あるのですが、
NPO法(24条2項)では総会選任の役員しか任期伸長は認められていないんですよね?

このような場合、理事の任期満了後に、
所轄庁の仮理事の選任を申請しなくてはならないのでしょうか?
(NPO法30条において援用される民法56条)

あるいは、民法654条の「委任終了時の善処義務」により、
理事の任期を伸長することはできないのでしょうか?

もし伸長できるのでしたら、たとえば理事選任を失念してまる1年放ったらかし、
のような場合でも適用できるのですか?

また、この善処義務規定に基づいて、仮理事の濫立を禁止した判例がある
(東京地裁、昭和34年5月20日)と、ちょこっと聞いたのですが、
どのような内容なのでしょうか?
Re: 仮理事? 任期伸長? 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2005/02/28(Mon) 16:21:00 No.4381
う~んさん、

お尋ねの件、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋さんにお聞きし、次のような回答を得ました。

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1、ご質問の件は、現任の理事の任期満了前に、後任理事を選任し、現任理事の任期満了の時にその選任の効力を発生するものとする、いわゆる「予選」というものが可能かどうかという問題です。
 これについては、一般的には有効とされています。しかし、これを無制限に 認めると、

(1)理事の任期について最長限を定めたNPO法24条の趣旨が潜脱される恐れがある(例えば、無制限に出来るとすると、現時点で2年後、4年後、6年後などの理事を選任できることになってしまいます)
(2)また、理事を総会で選任することになっている場合には、この予選後に社員となった人の理事選任権を奪うことになる

ということから、予選の日と任期が始まる日があまり離れていない場合にのみ有効とするというのが登記の取り扱いです。

2、しかし、何日ぐらいまでならこれが認められるかは、はっきり決まっているわけではなく、登記官の裁量によります。
 株式会社の取締役については、株主総会の選任決議が5月31日、取締役の就任時期が6月15日というケースで、有効であるという法務省民事局の見解があります。
 従って、この15日というのが実務上の目安ではないかと思います。

3、しかし、理事会は法律上の機関ではありませんから、「理事会」の開催についてもどこかに集まって開催することが義務づけられている訳ではありません。電話での「理事会」、インターネットでの「理事会」、いわゆる「持ち回り理事会」というのも可能ですから、一堂に会することが出来ない場合には、このような方法で理事会を開催したらいかがでしょうか。

4、NPO法24条2項は理事会で理事を選任する場合には適用されません。従って、任期満了と同時に理事ではなくなりますから、「理事会」も開催できなくなります。
 このため、「仮理事」の選任を裁判所に申し立てざるを得ないことになりますが、これはけっこう手間がかかって大変です。また、その仮理事を誰にするかについては裁判所が自由裁量で決めます。多くは、申立人が推薦する人を仮理事に任命すると思いますが、客観性を保つために例えば弁護士を任命する場合もあり得ます。そうすると、その報酬相当額を裁判所に予納しなければなりませんので、これまた大変です。
  従って、仮理事の選任などということは考えず、きちんとした手続きで次の理事を選任するようにした方が良いと思います。

5、民法654条を根拠に理事の任期を延長することは出来ません。

6、東京地方裁判所昭和34年5月20日判決(判例タイムス90号58頁、判例時報188号26頁)は、財団法人の寄付行為では理事の定員が10人以上20人以下となっているのに、10人いた理事の内6人が辞任して理事数が4人となってしまったという場合に、何かの決議をするためにこの欠員の6人分の「仮理事」の選任を求めたという事案です。
これに対し裁判所は、(1)定員を欠いているから、辞任した理事もなお理事としての権利義務を有しており、この辞任した理事を含めて理事会を開催できること、(2)新たな理事を選任して定員不足を解消することもできること、を理由に申請を却下しました。
民法56条に定める仮理事の選任の要件は「遅滞の為損害を生ずる虞ある時」というものですから、この裁判所の判断は当たり前とも言える判断であると思われます。

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以上、ご参考になさってください。

シーズ・轟木 洋子
Re: 仮理事? 任期伸長? 投稿者:う~ん 投稿日:2005/02/28(Mon) 20:44:00 No.4382
轟木さま、浅野さま

「電話理事会」や「持ちまわり理事会」も可能なんですね。
たいへん参考になりました。
このような処置について定款に定めがないので、
所轄庁に相談してみようと思います。

詳細にわたるご返答、ありがとうございました。

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