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役員任期の伸長規定について 投稿者:わきた 投稿日:2005/06/02(Thu) 00:11:00 No.4869
いつも参考にさせていただいております。
実は、過去の話題を見ていて疑問に思ったことがあります。

「4170」で赤塚先生が役員の任期伸長について質問され
おり、その中で下記のとおり述べられております。

『少し問題を整理しておきます。NPO法は役員の任期は2
年以内と定めています(A)。また、従来から所轄庁のモデ
ル定款には「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任
者が就任するまでは、その職務を行わなければならない」
(B)との一文があります。一方、昨年5月のNPO法改正
では定款で役員を社員総会で選任するとしていることを条件
に定款に「後任の役員が選任されていない場合には、任期の
末日後最初の総会が終結するまでその任期を伸長する」(C)
と規定することによって任期は伸長できることになっていま
す。
これまでに調べたところではもともとの任期が定款で1年と
定められている場合には、仮に1年の任期を超えてから総
会を開いても(A)の規定には違反しないので(B)の規定
でもその改選は有効であるということのようです。』

しかし、NPO法第24条第1項は、「役員の任期は、二年
以内において定款で定める期間とする。(省)」と規定され
ています。よって、定款で任期を1年と定めているのであれ
ば、1年の任期を越えて総会を開いて新役員を選任し、結果
として旧役員の任期が2年以内となったとしても、法令違反
もしくは定款違反となるのではないでしょうか。それとも、
「定款違反だけれど、改選自体は有効だ」ということでしょ
うか。

ご教示いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
Re: 役員任期の伸長規定について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2005/06/09(Thu) 14:59:00 No.4870
わきたさん、

お返事が遅くなりすみません。

わきたさんは、
「1年の任期を越えて総会を開いて新役員を選任し、結果として旧役員の任期が2年
以内となったとしても法令違反もしくは定款違反となるのではないでしょうか。」
と書いておられますが、この質問部分について確認をさせていただきたいと思います。

これは、つまり、次のような例のことでしょうか。
1.わきたさんの法人では役員任期を1年としている。
2.A氏は2004年度に役員であった。2005年度には役員には選任されない。
3.しかし、総会は2004年度が終了した後(たとえば2ヵ月半後)に開催される
ため、その間の2ヶ月半の間、A氏は「役員は、辞任又は任期満了後においても、
後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない」という定款の定め
に従って、役員の職務を行うことになる。
4.しかし、定款では役員の任期は1年としているから、NPO法では役員任期は2
年以内で定める期間としていたとしても、A氏のように、1年2ヶ月半の間、役
員としての職務についていることは、定款違反になるのではないか。

上記のようなご質問であるとした場合、結論から言うと、A氏が1年と2ヵ月半の間、
役員の職務を行うことについて、問題はありません。

最後の2ヶ月半の間は、役員としての任期は満了し、役員としては退任していますが、
定款に定めてあるように、役員としての「職務」を行う、ということになります。

これには、昭和34年(5/20)の東京地裁の次のような判例もあります。
「法人の理事が辞任又は退任しても、その法人との間に信頼関係が存在し、理事とし
ての権利義務を有すると解される以上、民法第56条による仮理事の選任を許さない」

つまり、1年の理事の任期が切れても、法人との間に信頼関係があるなら、仮理事を
選任しなくても、任期の切れた前の理事が、理事としての権利義務を有している、と
いうことです。

ただし、この判例は、理事の任期の規定のない民法に基づいたものです。NPO法の
場合には、わざわざ「2年以内において定款で定める期間」と定めていますから、理
事の任期を1年としている場合なら、上記の判例のような解釈で大丈夫ですが、理事
の任期を2年としている場合には、上記の判例を当てはめることはできなくなります。

実は、2003年5月に改正NPO法が施行されましたが、その前までに問題になっ
ていたのは、この役員の任期を2年としている場合でした。
というのは、任期を2年としている場合には、上記の判例も適用することができない
ため(つまり、たとえ定款に「後任者が就任するまでは、その職務を行わなければな
らない」と規定していても、その定款の規定は無効だと解釈されるため)、総会で理
事を選任する法人の場合には、任期が満了して、次の総会までの間は、理事が欠けて
しまうという事態が起こっていたのでした。
 
この問題を解決するために、改正されたNPO法では、第24条の第2項に、
「前項の規定にかかわらず、定款で役員を社員総会で選任することとしている特定非
営利活動法人にあっては、定款により、後任の役員が選任されていない場合に限り、
同行の規定により定款で定められた任期の末日後最初の社員総会が終結するまでその
任期を伸長することができる」
という条文を付け加えています。

この加えられた規定のもとで、役員任期を2年としている法人で、かつ役員を総会で
選任することとしていう法人は、定款に「○○項の規定にかかわらず、後任の役員が
選任されていない場合には、任期の末日後最初の総会が終結するまでその任期を伸長
する」(Z)などという規定を付け加えれば、2年を超えても、次の総会まで役員任
期を延ばすことができるようになりました。

ややこしい話ですが、いずれにしても、わきたさんの法人の役員任期が1年であれば、
定款に(Z)のような規定を加えなくても、旧役員は総会で新役員が選任されるまで、
役員としての職務を行うことができます。

シーズ・轟木 洋子 
Re: 役員任期の伸長規定について 投稿者:わきた 投稿日:2005/06/15(Wed) 21:33:00 No.4871
 ご丁寧に説明いただき、大変感謝しております。

 引用されている東京地裁の判例ですが、述べられているとおり、これは「理事の任
期の規定のない民法に基づいた解釈」ということになります。任期がなくて5年10
年と役員を続けている者については、周りから見ても、その者とその法人との間に信
頼関係が存在すると判断できるので、任期が切れた後でも権利義務を有していると解
されることも納得がいきます。ところが、理事の任期が定められているNPO法の場
合に、この判例の解釈をそのまま適用して良いものかという疑問が生じます。

 しかし、このことについては、人によって考え方が異なるので、とりあえず「適用
して構わない」と仮定してみます。その場合、任期を1年と定めている場合でも2年
と定めている場合でも、この判例を当てはめることができることになるのではないで
しょうか。

 1年と定めている場合、1年で任期自体は満了し、残り2ヶ月半は定款で定めてあ
るとおり、役員としての「職務」を行うことになると述べられていますが、この考え
方からすると、任期を2年と定めている場合でも、2年で任期が満了しその後は「職
務」として行えるということになるので、「役員の任期は、2年以内において定款で
定める期間とする。」というNPO法第24条第1項の規定には反しないのではない
でしょうか。(あくまで任期は2年で切れているので、「後任者が就任するまでは、
その職務を行わなければならない」という規定は、何ら問題はないのではないでしょ
うか。)

 しかし、そうなってくると、2003年5月の法改正によって、伸長規定を設けた
意味がなくなります。わざわざ伸長規定をもって任期を伸長しなくても、役員として
の「職務」を行うことができるのですから。

 そう考えていくと、(いろいろと書きましたが)結論として、「前述の判例は、理
事の任期の規定のない民法上の解釈なので、任期の定めのあるNPO法の場合そのま
ま適用できるものではなく、任期を1年と定めていようが2年とさだめていようが、
「後任者が就任するまでは、この職務を行わなければならない」という規定はあくま
で応急的な事務を行うための規定であって、これをもって(役員改選のための総会の
招集権といった)理事としての権利義務が付与されるものではない。だからこそ、法
改正で伸長規定が追加されたのであって、この規定がなければ仮に任期を1年と定め
ていたとしても、役員の改選はできない。」と考えることができるのではないでしょ
うか。

長くなりましてすみません。

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