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債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:団体職員 投稿日:2005/09/13(Tue) 21:30:00 No.5213
No.5525でマルチ豆さんも投稿されていますが、
私たちも2つのNPO法人の吸収合併を考えています。

私たちの問題は、被合併法人Aが現時点で債務超過状態であることです。
吸収合併にあたって、被合併法人Aの債務を
合併法人Bが引き受けることは可能でしょうか?
債務超過の会社を被合併会社にできないとする商法の規定は、
NPO法人にも適用されるのでしょうか?

合併法人Bはヘルパー事業所(障害者支援費)を行っています。
事業所指定の再申請の手間や、サービス提供期間の空白を避けるために、
できれば新設合併や「逆さ合併」は避けたいところです。

会計に関してはまったく不勉強で、「営業権ってなに?」という具合です。
申し訳ありません....。
よろしくお願いします。
Re: 債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2005/09/23(Fri) 21:07:00 No.5214
団体職員さん、

お尋ねの件、現在弁護士の方に問い合わせ中です。
もう少しお待ちくださいますようお願いいたします。

シーズ・轟木 洋子
Re: 債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:公認会計士 岩永清滋 投稿日:2005/10/03(Mon) 17:56:00 No.5215
 公認会計士の岩永と言います。随分長い間返事がないので、専門ではないのですが意見として
述べさせて頂きます。

 株式会社などに債務超過の合併を認めないのは、会社には「資本充実の原則」という大原則
があるからです。資本を投下してその果実である利益を得ることが会社の理念ですから
設立あるいは合併の時に最初から債務超過であることは論理矛盾なのです。

 一方NPOには資本と利益という概念がありませんから、資本充実の原則がそのままは
当てはまりません。
 
 会社の場合、実務的には資本充実の原則は、株主保護と債権者保護の両面から論じられています。
NPOの場合株主は存在しませんから前者は問題になりません。
 債権者についてはNPOでも問題ですが、これについては異議申し立ての手続を様々に
規定しており、そのような手続規定で債権者保護をはかっていると推察されます。

 吸収する方のNPOですが、他のNPOの債務を承継するのですから、相当な不利益に
なることは間違いありませんし、それ相当の覚悟が必要です。しかしこれも社員総会の様々な
決議に関する規定があり、そのような手続規定でカバーしているのではないでしょうか。

 そもそもNPO法上は、債務超過でも設立が可能です。ということは、法律上は合併の
場合も債務超過会社の吸収も可能なのではないかと考えています。

 ただ何にしても所轄庁の認証が必要なので、所轄庁がいろいろな判断をすることが予想
されます。最近所轄庁の認証事務が厳しい運用になりつつあり、債務超過会社の合併も
何かしらの「指導」があるかもしれませんが、この点はわかりません。

 なお会社で多用されている営業権なる概念はNPOには不適当であり、そのような便法を
使うぐらいなら債務超過のまま認証申請する方が首尾一貫しています。

 また会社の世界でも、会社法が改正され一部だけですが債務超過の会社の合併が認められる
ようになりました。

 なお公益法人改革の中で新しい非営利法人制度にも合併が織り込まれる予定ですが、まだ
その詳細はわかりません。

 以上私は会計が専門なので、あくまで個人的意見として言わせてもらいました。後日あると
思います弁護士さんのご意見を主に参考にして下さい。
Re: 債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:団体職員 投稿日:2005/10/03(Mon) 21:20:00 No.5216
岩永先生

会計学の知見による先生のご指摘はたいへん参考になりました。
特に、

> そもそもNPO法上は、債務超過でも設立が可能です。
> ということは、法律上は合併の場合も
> 債務超過会社の吸収も可能なのではないかと考えています。

という先生のご指摘は、所轄庁や税務署と話をするうえで大いに役立ちそうです。

両法人が納得できることを最優先とするよう肝に銘じたいと思います。

ありがとうございました。
Re: 債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2005/10/12(Wed) 18:12:00 No.5217
団体職員さん、岩永さん、

弁護士の浅野さんからお返事をいただきました。

以下、ご紹介します。

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1、まず、商法の規定は特定非営利活動法人には適用になりません。特定非営利
活動促進法に、商法の規定を準用する旨の規定がないからです。

2、特定非営利活動法人の合併については、特定非営利活動推進法33条から39
条に定めがありますが、そこでは債務超過の場合には合併できないとは定められて
おりません。
「禁止されていないことはしても良い」というのが法律解釈の原則ですから、解
釈上は一応債務超過の場合も合併できると考えることが出来ます。ただ、「合併」
ということの性質等に照らして不都合となる場合には、明文で禁止されていない場
合でも、解釈上許されないと考える場合もあり得ます。
 そこで、このような「合併」を認めた場合、どのような不都合が生じるかを考え
てみると、
 (1)債務超過団体の債権者のことを考えると、資産の方が多い団体と合併すること
は利益となりますので、これを禁止する必要はありません。
 (2)また、資産の方が多い団体の債権者のことを考えてみても、特定非営利活動促
進法の第35条、36条が定める債権者保護手続きがありますから、債権者が
合併によって不利益が生ずると考えたときは、同条に定める手続きをとること
によって不利益を回避することが出来ます。従って、資産の方が多い団体の債
権者のことを考えても、このような合併を禁止する必要はありません。
(3)各団体自身についても、合併するかしないかはそれぞれの社員総会で決めれば
  よいことですから、あえてこれを禁止する必要はありません。

3、このように、このような合併を認めたとしても不都合は生じないし、またこれを
禁止する規定もないのですから、このような合併は認めてよいように思われます。

4、ただ問題が一つあります。それは、債務超過が法人の破産原因であるということ
です。
特定非営利活動推進法第40条は民法70条を準用していますから、債務超過の特
定非営利活動法人の「理事は直ちに破産手続きの申立」をしなければなりません。
 しかし、債務超過であっても「破産手続開始の決定」がなければ解散にはなりませ
ん(法31条1項六号)し、「破産手続開始の決定」は「破産の申立」をしなければ
なされません。
 従って、債務超過の特定非営利活動法人であっても、破産申立てをしないうちは、
法人格そのものには何らの影響もありませんから、合併手続きをすること自体は可能
ということになります。
 しかし、このような合併の認証申請がなされた場合、所轄庁がどのように判断する
かは、今の時点ではよく分かりません。

5、私としては、合併により債務超過の状態が解消するのであれば、上記2、3で述
べた理由から、合併の認証をすべきであると考えます。
 しかし、合併しても債務超過状態が解消しない場合(つまり合併により設立される
団体が債務超過となる場合)にも認証すべきかどうかについては判断に迷うところで
す。というのは、仮に設立が認証され登記をして法人が成立したとしても、その時点
で、理事は即破産の申立てをすることが義務づけられており、かつ申し立てをすると
破産開始決定がなされて当該法人は自動的に解散することになりますし、登記官によ
ってはそのような法人の設立登記を拒絶する可能性もあるからです。(注)
そうであっても、どうしても合併したいということであれば、私としては合併の認証
をしても違法ではないと思いますが、所轄庁の方で不認証と判断したとしてもこれま
た違法とはいえないように思います。どちらでも違法ではないというのは何か矛盾し
ていますが、このあたりになるとよく分からないというのが正直なところです。

(注)特定非営利活動法人は組合等登記令に基づき、法人の資産額を登記することが
定められていますので、必ず資産額が登記されます。資産額がプラスの金額で設立さ
れその旨の登記がなされた法人が、その後債務超過となった場合には、資産額の登記
は「資産の総額0円(債務超過額○○円)」という登記をすることが可能ですし、こ
の取り扱いは多くの実例があるようです。しかし、設立時点で債務超過である場合に
も、このような登記をすることによって法人の設立登記が出来るかどうかについては
明確な先例等がありませんので、登記官によって判断が分かれる可能性があります。

---------
以上、遅くなりましたが、お役に立てば幸いです。

シーズ・轟木 洋子
Re: 債務超過のNPO法人を吸収合併。 投稿者:団体職員 投稿日:2005/10/13(Thu) 20:12:00 No.5218
轟木さま

ありがとうございます。
浅野先生にもよろしくお伝えください。

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