English Page
NPO法人格の優位性 投稿者:けいこ 投稿日:2005/09/22(Thu) 11:28:00 No.5238
基本的な質問で本当にお恥ずかしいのですが、教えてください。
時々、NPOとは何か、NPO法人制度とは何かということを
説明する機会に遭遇します。
その際、株式会社や有限会社とは根本的に何が違うのですか?と
いう質問をされ、答えに窮することがあります。
NPO法人制度に関する一通りの説明はしているつもりですし、
利益を配分しないということは当然お話するのですが、制度的な
違いはそれだけですか?利益を配分しないことにそれほど意味が
あるのですか?株主から預かった財産を社会貢献性の高い事業に
運用してその利益を配分することも立派な社会貢献ではないですか?
などという質問をいただくことがあります。そうすることによって
株主も間接的に社会貢献をすることになるのだと。

つまり、質問する方の主張というのは、営利法人であっても今の
時代は社会貢献性が高くなければ存続し得ない、対価を得ながら
事業活動を行うのであればむしろ営利法人となったほうがわかり
やすいのではないか、なぜ敢えてNPO法人になる必要があるのか、
どこに優位性があるのかというようなことだと思います。
悪徳商売でもない限り、確かに社会貢献性が高くなければ企業は
存続し得ないのが今の時代だというのは的確な主張だと私も思います。
また、企業の方から質問される場合、実態はさておき近頃はNPOに
ばかり行政のお金が流れていて納得がいかないという気持ちもあるようです。

私としては、NPO法人になるか営利法人となるかというのは
選択の問題である、社会貢献性を重視するのか営利性を重視するの
かの違いですといったような説明をするのですが、自分でも今一つ
釈然としないのです。

本当に基本的なことでお恥ずかしいのですが、この辺りのことに
ついて納得のいく説明を教えていただけるとありがたいです。
私は何か、自分でも、大切な視点を見落としているような気が
しているのです・・・。
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2005/09/28(Wed) 10:26:00 No.5239
けいこさん、

なかなか難しく、しかも一つだけの正解がないご質問なので、どのようにお返事をした
らいいか、私ではなくとも窮するところかもしれません。

以下は、私個人の見解であり、特に正解ではありません。NPOに深く関わっていらっ
しゃる方のなかには、違う考え方をされる方もあると思うので、あくまでも参考として
読んでください。

けいこさんにご質問なさった方のおっしゃるのはもっともです。営利企業も、CSRだ
けでなく、営利の事業によっても社会に役立つことをたくさんしています。より美味し
い食品、より丈夫な靴下、他よりも優れた旅行サービスなど、優れた商品やサービスを
納得できる価格で消費者に提供することは、立派な社会貢献と言えると思います。

こうした商品・サービスを提供して、きちんと利益を上げていけるのであれば、何もN
POになる必要はなく、営利企業になれば良いと、私も思います。その方の意見に賛成
です。

私は、NPOの最大の特徴は、優れたサービスや活動をしても、営利企業のように利益
を上げることができない事業を、それでもあえてやる部分がある、ということだと思い
ます。

たとえば、ウミガメを守ろう、という活動をする時、ウミガメにいくら良いサービス・
活動を提供しても、ウミガメはお金を払ってはくれないのです。そこでNPOがするの
は、例えば会員を募る、寄付を集める、ウミガメの鑑賞会をして参加費を得る、などと
いう方法です。営利企業なら、ウミガメを守る、という事業はしません。それでは利益
はでないからです。

他にも、地球温暖化防止のための政策提言をする、人権を守る、平和を推進する、途上
国の貧困を軽減する、引きこもりの子どものための活動、などなど、お金にはならない、
つまり営利企業は行わない事業(CSRの部分での取り組みを除く)を、NPOは活動
の「中心」としています。

もちろん、NPOでも、団体の目的に沿った本来事業であり、かつサービスを提供して
料金を得られる事業もあります。こうしたサービスには、企業も参入している例があり
ます。しかし、企業であれば儲かる部分のサービスしか提供しません。NPOの特徴は、
たとえ、その料金収入だけでは運営できない部分があっても、その団体の目的を達成す
るために、会費や寄付金、時には国や自治体からの補助金、財団からの助成金、あるい
はお金をつくるための別の事業を行う、などして資金を調達してやっていくというとこ
ろだと思います。

たとえば高齢者を対象したサービスでは、介護保険制度が始まってからは企業もたくさ
ん参入しています。介護保険からの収入が期待できるからで、これは結構儲かる事業だ
からでしょう。もちろん、こうした儲かる部分も社会貢献的だと言えます。
しかし、NPO法人が行う高齢者向けのサービスを見ていると、儲からないところ部分
でも、必要なサービスがあれば、努力して提供しています。NPOの特徴は、こうした
儲からない部分でも力を発揮するところではないでしょうか。

米国のあるNPO関連の文献に、「NPOは料金収入やモノを売った収入だけではやっ
ていけない。なぜなら、営利企業と同じ市場でこれをやるのであれば必ず赤字になるか
らだ。だからこそ、NPOは寄付などを集めていく必要がある」というような趣旨のも
のがありました。

今はNPOがどうもブームのようでもあり、社会貢献的な事業というと、営利企業では
なくNPOに、とすぐに流れがちのようですが、社会貢献をしてそれで儲かるのであれ
ば、私は営利企業の方がいいと思います。

もちろん、以上のようなことだけでなく、NPOは社会におけるいわゆる弱者(あるい
は困った状況)のニーズに取り組むものであり、それによって社会的な変革を求めてい
くものだとも思います。

以上は、私からの簡単な見解ですが、さまざまな意見があると思いますので、よろしけ
れば皆さんもご投稿ください。

シーズ・轟木 洋子
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:公認会計士 岩永清滋 投稿日:2005/09/29(Thu) 10:31:00 No.5240
 公認会計士の岩永と言います。
 私も轟木さんのご意見に全面的に賛成です。ただ1点だけ補足したいと思います。
営利企業は利益があがらないとやらないという点はその通りですが、もう少し突っ込むと
「やれない」とお考え下さい。つまり営利企業の基本的な理念は、「会社は株主のもの」
ということです。経営者がいくら社会貢献に役立つ事業だと思っても、赤字なら株主
総会で否決されるおそれがあります。仮に株主総会で容認されたとしても、株主代表訴訟
と言う制度があって、経営者は常にそのリスクを抱えています。例えば、楽天がプロ野球
チームを買収しましたが、口がさけてもどんどんお金をつぎ込んで何年間も赤字続きとの
事業計画は発表できないのです。それはこの株主代表訴訟がこわいからです。
 NPOも社員総会が最高議決機関ですが、これは社員の利益のためという性格ではあり
ません。社員総会で決めたらそれが赤字続きの事業であっても目的にかなう事業であるな
らば、誰からも訴えられるおそれはありません。
 補足意見として言わせてもらいました。
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:けいこ 投稿日:2005/09/29(Thu) 14:55:00 No.5241
轟木さん、岩永さん、私の漠とした質問に回答をいただきありがとうございました。
大変答えにくかったと思います。私のほうは、おかげでだいぶ理解してきました。

轟木さんの回答にありました、
>私は、NPOの最大の特徴は、優れたサービスや活動をしても、営利企業のように利益
>を上げることができない事業を、それでもあえてやる部分がある、ということだと思い
>ます。

私もそう思いますし、またそうであってほしいと願っています。
ただこれは、NPOの「一般的な傾向・特徴」であり、あるいはNPOはこうあってほし
い「期待」であり、自分たちもこうあるべき「自負」ではありますが、定義ではないんで
すよね。

また、岩永さんの回答にありました、
>営利企業は利益があがらないとやらないという点はその通りですが、もう少し突っ込むと
>「やれない」とお考え下さい。
この点、なるほど、そのとおりですよね。

これらをまとめると、NPOは「利益が上がらない事業をやることがあり」、営利企業は
「利益があがらないことはやれない」ということになります。言い換えれば、NPOは利
益を上げることよりも自分たちのミッションの達成をより上位の目的においている、営利
企業は営利を上げることを最上位の目的としている、そういうことかなと思います。

おそらく、私に質問をした人の認識というのは、「利益を上げているにもかかわらず、ま
たは営利企業と殆ど同じサービスを提供しているにも関わらず、営利企業ではなくNPO
という形態を選んでいる人々がいる。しかも最近は同じサービスを提供しているのに行政
は企業ではなくNPOにばかりお金を流している」こういうことだったのかなあと思います。
(どちらかというと否定的な言い方をされたので)
もしかしたら、利益を上げることを最上位の目的としたNPOに遭遇した経験があったの
かもしれません。実際、そういうNPOも存在しているような気もします。

こうした(表向きは社会貢献を謳いつつ実は利益追求を第一義としている)NPOという
のは、配分さえしなければ制度的に排除されるものではないのかもしれません。
こういう存在が増えると、やっぱり困りますよね。かと言って、制度的にこれをギュウ
ギュウ締め付けたのでは、制度のそもそもの趣旨が変わってしまうのでしょう。せっかく
できた、これほど画期的なNPO法人制度が台無しになってしまいますものね。
NPO法人制度が、多分に人々の良心によって成り立つ制度(つまり、逆に言うと悪用
しようと思えば悪用できてしまう制度)であることを、今回理解したように思います。

今回の回答をいただき一ついえることは、やはり本来あるべきNPOの姿というか、NP
OらしいNPOが増えることが、NPOに対する社会の認識を深めるための最短の道なん
だなということです。口でいくら説明しても、実態は違うじゃないかと言われればそれま
でですし、それよりもNPOらしさを失わない活動を地道に続けていくことが大切だと改
めて認識いたしました。

これからも、NPOに属する者として、しっかり活動を続けていきたいと思います。
ありがとうございました。
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:TANTO 投稿日:2005/09/29(Thu) 23:10:00 No.5242
亀レスでごめんなさい。
私も同感ですが、もう1つこんな見方をします。市民参加性です。

例えば、廃校になった校舎を福祉施設として公募し、企業もNPOも参入できるという例です。
自分がNPOとして参加する場合、NPOの優位性を説明する必要がでてきます。

そこで私ならば以下のようにプレゼンします。
NPOは性質上、誰でも総会に参加し、1人1票の権限をもてます。
なので、地域の方になるべく参加いただき、地域に必要なサービスを提供するよう、
常に修正していきます。すなわち地域と一体となった運営も可能だと思います。
一方、企業の場合、株主の意向があったり、通常は誰でも参加できる門戸が開かれないでしょう。

なお、これらは性質上の違いであり、これをどう活かすかは法人格を選ぶ団体しだいだと考えます。
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:かずくま 投稿日:2005/09/30(Fri) 11:27:00 No.5243
横からおじゃまします。
いろいろなご意見がありましたが、NPOには、人材を幅広く集められるメリットがあると思います。
年齢はもちろん、業種職種を問わず、住んでいる地域も問いません。
制約はあるかもしれませんが、公務員も基本的には参加できます(もちろん勤務時間内は不可)ので、これは企業と決定的に違う部分と思っています。
いろいろな人のノウハウを生かした活動ができると思います。
Re: NPO法人格の優位性 投稿者:けいこ 投稿日:2005/09/30(Fri) 14:59:00 No.5244
TANTOさん、かずくまさん、貴重なご意見をありがとうございました。

TANTOさんのおっしゃるとおりNPOには「市民参加性」があり、かずくまさんがおっし
ゃるとおりNPOにはさらに「幅広い人材の参加」がある、そのとおりだと思いました。

轟木さん、岩永さんからいただいたご意見もふまえると、NPO法人は利益を上げることを
最優先しないことが制度的に可能であり、基本的には誰もが会員となって会の意志決定に
平等に1票を投じることが可能であり、さらに公務員なども含めて多様な人材が多様な形で
参加することが可能である、こういうことになると思います。

このように考えると、NPO法人には、ほかにも様々「可能」なことが多いように思います。
つまり、タイトルの「NPO法人格の優位性」というのは、営利法人に比べて様々な活
動が制度として「可能」とされていること、「可能性」が制度的に保証されていること、
こういうことなのかなと理解しました。

- WebForum -