岬 暁夫 さん
1、まず、図書館で六法全書か、インターネットの
http://hourei.ndl.go.jp 「日本法令索引 現行法令索引」で「特定非営利活動促進法」第9条を読んでください。
そうすると、
①原則として、「事務所」の所在地が所在する都道府県の知事が所轄庁であること
②2以上の都道府県の区域内に「事務所」を設置する場合には内閣総理大臣が所轄庁であること
がわかります。
2、従って、NPO法人の認証申請の場合に、事務所がある都道府県内にだけある場合にはその都道府県知事に対し認証申請をすることになりますが、事務所が2以上の都道府県にある場合には内閣総理大臣に対し認証申請をすることになりるわけです。
3、さて、ご質問ですが、上述しました特定非営利活動促進法第9条を読むと、「NPOを申請する場合、組織が複数以上の都道府県に跨る場合には内閣府に、一つの都道府県に閉じている場合は、当該都道府県に、申請するようになっていると聞いています。」という設問自体が正確ではないことがおわかりになりますね。
「組織」ではなく「事務所」が一つの都道府県だけにあるのか、それとも2以上の都道府県にあるのかというのが問題ということになります。
4、さて、ここで問題はこの「事務所」というのをどのように考えるのかということです。どのような場合に「事務所」があるといえるのでしょうか。
5、これは、たとえば株式会社の本店と支店ということから考えてみるとわかりや すいかもしれません。
商業登記法上は、株式会社の「支店」は、その所在地の法務局で登記することができます。しかし、会社が「支店」と称していても、実際には支店の登記をしていない場合もありますし、何らかの営業拠点を置いていても、これを「出張所」とか「営業所」とか称して支店の登記をしない場合も珍しくありません。
6、例えば、東京に「事務所」を持つNPO法人が、神奈川県に「支部」を持った とします。その支部が、独立して当該NPO法人の「事務」を行う場合には、神 奈川県に「事務所」があることになりますので、所轄庁は内閣総理大臣というこ とになります。
7、しかし、神奈川県にある「支部」といっても、それが当該NPO法人の単なる
「連絡場所」とか「作業所」とか「事業所」という位置づけのものであり、法人 の「事務」は東京で行っているということであれば、それは「事務所」ではあり ません。従って、この場合所轄庁は東京都知事となります。
なお、念のため言いますと、例えば東京都知事に認証を受けたNPO法人が、 他の府県で活動することは全くの自由であり、何らの問題もありません。
8、そして、どこが「事務所」であるかどうか、つまり上述した神奈川県の「連絡場所」が「事務所」なのかどうか、当該NPO法人が、自分たちで判断し決めることです。(こんなことを、所轄庁に相談するのは愚かです。)
9、以上のことを前提に質問にお答えします。
「1」複数の都道府県に跨る場合、「支部」を設立する必要があると思いますが、
「支部」の満たすべき要件は具体的には何でしょうか
→それは自分たちで決めることです。
「2」支部設立に関して法律的に必要な経費は「何に対して幾ら必要」ですか?
→??質問の趣旨がよくわかりませんが、「支部設立に関して法律 的に必要な経費」というのはありません
「3」一つの都道府県に閉じている場合、理事の居住地に関する制限はありま すか?たとえば、東京都に申請する場合、理事は、東京都に居住してい なくても良いのですか?
→理事がどこに住んでいようが、制限はありません。(特定非営利活動促進法には、理事の居住地を制限する趣旨の定めはありません。法令で禁じられていないことは自由にできるというのが、法解釈の原則です。)
弁護士 浅 野 晋