退職金の引当時期 等 投稿者:
nem 投稿日:2006/03/22(Wed) 22:45:00
No.5765
退職金の引当てをする時期等についてご質問します。
当方は、昨年2月にNPO法人を設立し、新年度4月1日に、以前より活動を続ける任意団体から資産と職員を引き継ぎました。そして法人への移行にあたっては、会計も複式簿記にあらため、以前より設けていた退職金について、引当金を設定して毎年度支出の計上することとしました。
・会計年度 4月1日~3月31日
・法人の設立 05年2月
・職員の移行 05年4月1日
・引当の基準 退職給与発生基準
ということになるかと思います。
そこで質問ですが、
1.会計上、最初に引当金を設定すべき期日は、いつになりますでしょうか?
2.最初に引き当てる金額の中には「昨年度までに発生していた分」と「今年度に入って発生した分」が混在しているのだと思いますが、これを帳簿上区分することはできますか?
(できれば、今年度の分だけ、今年度の収支計算書に反映させたいのですが。)
3.3月31日の勤務をもって退職する職員の退職金が発生する(引当金から支出する)のは、通常3月31日になりますでしょうか? それとも4月1日になりますでしょうか?
引当金の仕組みについて十分に理解の及んでいないところがあり、的はずれな質問をしていないか心配ですが、その時は補足させていただきますので、ぜひよろしくお願いします。
Re: 退職金の引当時期 等 投稿者:
公認会計士 岩永清滋 投稿日:2006/03/25(Sat) 15:10:00
No.5766
nemさん
> 1.会計上、最初に引当金を設定すべき期日は、いつになりますでしょうか?
今年度の決算時期、つまり18年3月31日となります。
> 2.最初に引き当てる金額の中には「昨年度までに発生していた分」と「今年度に入っ
て発生した分」が混在しているのだと思いますが、これを帳簿上区分することはできます
か?
>(できれば、今年度の分だけ、今年度の収支計算書に反映させたいのですが。)
理論上は、職員の引継ぎが昨年4月1日なので、今年度分しか設定できません。
任意団体の時代の引当金は、本来は任意団体の時期に計上してその引当金を他の資産負債と
共に引き継ぐ処理が正しかったと言えます。
仮に昨年4月1日の財産引継ぎの会計処理を今から修正できるのであれば修正した方が
いいでしょう。つまり資産と負債の差額を寄付金収入として処理していたならば、
引当金という負債が増えるのですから、寄付金収入がそれだけ減少することになります。
> 3.3月31日の勤務をもって退職する職員の退職金が発生する(引当金から支出する)
のは、通常3月31日になりますでしょうか? それとも4月1日になりますでしょうか?
3月31日でもって退職する方は、期末の在籍者に含めません。その方に対する退職金の
金額は確定しているでしょうから、支払が4月以降になる場合、別途未払金として
処理します。
つまり引当金の方は、その方を除いたところで計算します。
なお現在の法人税法では退職給与引当金は認められておりませんので、以上の処理を
行っても税法上の損金とはなりません。逆に言えば、どのような会計処理を採用するのか
という点について、税法上の制約はありません。
NPO法上も特段の規定がありませんので、会計の理論通りに考えることになります。
Re: 退職金の引当時期 等 投稿者:
nem 投稿日:2006/03/25(Sat) 17:44:00
No.5767
岩永様
さっそく明快なお返事をありがとうございます。
引き継いだ引当金については、負債として処理するよう変更したいと思います。
重ねてすみませんが、3.について、お答えをふまえてもう一度質問させてください。
「3月31日をもって退職する人の分は、期末に引き当てない」とのことですが、これだと例えば「2004年4月1日から2006年3月31日まで2年間勤め上げて退職する職員」がいた時、その人の退職金を引き当てるチャンスは「2005年3月31日」の一度しかなくなるということになるかと思います。
すると、退職金の予定額が「年度単位で年1回増える」仕組みであっても、それに対応して引き当てを行うチャンスがあるわけではない、つまり実際に支払われる退職金は「全て引当金から支出されるわけではない」ということになりますでしょうか?(私たちの場合は、基本的に年数に比例して金額が増えていくので、この2年で退職する職員の場合、前年度末に引き当てた分から1/2、残りは直接「退職金支出」のように計上する、という形?)
どうぞよろしくお願いします。
Re: 退職金の引当時期 等 投稿者:
公認会計士 岩永清滋 投稿日:2006/03/27(Mon) 15:51:00
No.5768
nemさん
>その人の退職金を引き当てるチャンスは「2005年3月31日」の一度しかなくなると
いうことになるかと思います。
> すると、退職金の予定額が「年度単位で年1回増える」仕組みであっても、それに
対応して引き当てを行うチャンスがあるわけではない、つまり実際に支払われる退職金
は「全て引当金から支出されるわけではない」ということになりますでしょうか?
そのようになると思います。それで会計上問題があるわけではありません。
「全て引当金から支出されるわけではない」という点に違和感があられるようですが
退職金をすべて引当金から支出すると何が何でもこだわる必要性はありません。
仮に今年度その方の分の引当金を繰り入れて、退職金は引当金から支出したとしますと、
退職給与引当金繰入○○○ 退職給与引当金○○○
退職給与引当金 ○○○ 現金 ○○○
一方この処理をしないで行うと
退職金支出 ○○○ 現金 ○○○
となって、違いは科目名称だけになります。
本来引当金とは年度決算を行うに際し、翌年度以降の支出で当年度の負担とするべき
項目がある場合、期間計算を適正にするため概算額をあらかじめ計上しようとする
会計上の技法です。退職金支出としてきちんと当年度負担分が計算書に記載されてお
れば、しいて引当金からの支払と言うことにこだわる必要はありません。
また引当金はあくまで概算であり、要引当額の100%を引き当てるとは限りません。
また3月現在で引き当てて6月に退職する場合は、3ヶ月間の超過が生じます。
つまり何もかも引当金から支出するということは実務的にも不可能であり、何らかの
形で退職金支出という科目が併存することになります。
また上の仕訳で2番目のものをこのようにせずに、
退職給与引当金 ○○○ 退職給与引当金戻入 ○○○
退職金支出 ○○○ 現金 ○○○
とする実務もよく行われています。この場合は、退職金支出と退職給与引当金戻入
とを両建てする考えです。この2つの仕訳が必ずしも同じ金額である必要は
ありません。
少し専門的になりましたが、分かっていただけたでしょうか。
Re: 退職金の引当時期 等 投稿者:
nem 投稿日:2006/03/29(Wed) 12:19:00
No.5769
大変よくわかりました。
モヤモヤしていたものが、すっきりしました。
ありがとうございました。