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理事長から借入れるとき 投稿者:北村 投稿日:2006/05/15(Mon) 15:08:00 No.5956
いつもお世話になっています。宜しくお願いします。

NPO法人で事務局長をやっていますが、この度、新たな事業をやることになり、
その資金として、理事から、合わせて、200万円程度借入れすることを予定して
います。
この際、借入の契約を書面で交わすと思うのですが、理事長から借りる場合、
貸し手と借り手が同じ人になってしまうかと思うのですが、これは
これで特に問題ないのでしょうか。また、何か注意点などありましたら、
教えていただけないでしょうか。宜しくお願いいたします。
Re: 理事長から借入れるとき 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/05/16(Tue) 17:02:00 No.5957
北村さん

一、定款上、理事長以外にも代表権がある理事がいるとき
  この場合は、その代表権がある理事が法人を代表して契約すれば良いので 難しい問題は生じません。
  また、定款によっては、理事長と法人とで利益が相反するときは他の理事等が法人を代表する旨の定めをおいている場合がありますが、その場合はその定款の定めによって解決できます。

二、理事長だけが代表権を持っているとき
 
 1、この場合案外難しい問題が生じます。
   NPO法第30条は民法第57条を準用していますが、その民法第57条は次のように定めています。
     「法人と理事との利益が相反する事項については、理事は、代理権を有しない。この場合においては、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、特別代理人を選任しなければならない。」
    そして、理事長から当該法人への貸付が、
      ①「無利子、無担保」の場合は民法第57条にいう「法人と理事との利益が相反する事項」に該当しない
②「有利子」または「担保付」の場合は民法第57条にいう「法人と理事との利益が相反する事項」に該当する
   ものとされています。
従って、①の場合には、特別代理人の選任を要せず、当該理事長が当該法人を代表して金銭消費貸借契約を締結しても良いように思われます。
2、しかし、民法第108条は次のように定めています。
     「同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。」
  理事長個人が法人と金銭消費貸借契約を締結するとき、理事長は当該法人の代表者として行為しますから、民法第108条にいう「相手方の代理人となり」という場合(これを「自己契約」といいます)に該当します。
従って、民法第108条から考えると、上記1の①のように「無利子、無担保」の場合であっても、理事長は当該法人を代表して契約を締結できず、特別代理人を選任するしかない事になります。
3、このように、「形式上は自己契約に該当するが、利益相反ではない場合」に、民法第57条と第108条の関係をどう考えるかについては、判例もありませんし、学説上も必ずしも明確ではありません。
しかし、このような場合にまで特別代理人の選任を要するとする必要はないと解されますので、私としては、民法第57条を民法第108条の特則と考え、「無利息、無担保」の場合であれば、当該理事長が当該法人を代表して金銭の貸借をすることができると考えます。

                                    弁護士 浅野晋
Re: 理事長から借入れるとき 投稿者:北村 投稿日:2006/05/17(Wed) 13:36:00 No.5958
早速のご回答有難うございます。

「無利息、無担保」の場合であれば、当該理事長が当該法人を代表して
金銭の貸借をすることができるということですね。
それでこの場合、返済期日を実質的に決められるのでしょうか。
理事長は、自分が理事長でいる間はいいけれども、他人に変わった
場合はどうなるのだろうと言っています。つまり、たとえ返済日を決めても、
無利息、無担保で、延滞金もなしとすると、積極的に返済しようという
気にはならないのではないかということです。当初は、1~2年は
無利息で、その後は、年数%の金利をという風に考えていました。

このようなケースは、それほど珍しくはないと思うのですが、実際には
どのようにされているのでしょうか。
すみませんが、またよろしくお願いいたします。
Re: 理事長から借入れるとき 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/05/18(Thu) 16:52:00 No.5959
北村さん

1、「たとえ返済日を決めても、無利息、無担保で、延滞金もなしとすると、積極的に返済しようという気にはならないのではないかということです。」とのことですが、法的には弁済期限を例えば2007年5月18日と決めると、債務者はその日までに返済する法的義務があります。

2、そして、利息の定めがない場合であっても、その返済期限の翌日から民法第419条に基づき民法所定の法定利率(民法404条)である年5分(5%)の損害金が発生しますから、貸付の段階で利息の定めがないとしても、期限を遵守しない場合のペナルティーは存在するわけです。

3、なお、代表者件がある者が代表理事しかいない場合、わずかでも利息を付けるとなると、やはり特別代理人の選任の問題が生じますので念のため。

                                     弁護士 浅野晋
Re: 理事長から借入れるとき 投稿者:北村 投稿日:2006/05/18(Thu) 21:11:00 No.5960
納得できてすっきりしました。
無利息、無担保でいけると思います。
有難うございました。

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