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公務員、議員が役員に就任することについて 投稿者:A 投稿日:2006/07/04(Tue) 14:02:00 No.6159
お世話になります。

教えてください。
公務員や議員が役員になることについては、
NPO法上、可能だと思うのですが、
何か問題はありませんでしょうか。

また、役員に就任するに当たって注意しなければいけないこと
はありますか。

根拠法令なども教えてくださると非常に助かります。

よろしくお願いします。
Re: 公務員、議員が役員に就任することについて 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/07/06(Thu) 18:25:00 No.6160
A さん


1、公務員や議員が役員になることについては、NPO法上、可能だと思うの ですが、何か問題はありませんでしょうか。
   →NPO法にも民法にも、公務員や議員が役員になることを禁止したり制限したりする条項はありませんから、公務員や議員が役員になることについては何の問題もありません。

2、また、役員に就任するに当たって注意しなければいけないことはありますか。
    →うーん、何とお答えしたらよいか分かりません。どんな点をお知りになりたいのか、もう少し限定して頂けませんでしょうか。


             弁護士 浅野晋
Re: 公務員、議員が役員に就任することについて 投稿者: 投稿日:2006/07/07(Fri) 11:40:00 No.6161
弁護士 浅野晋 様

ありがとうございます。
私の方でも平行して根拠法令等、調べていたことがありますので、
下記の2について、もう少し限定し、ご質問させていただきます。
よろしくお願いいたします。

>2、また、役員に就任するに当たって注意しなければいけないことはありますか。
    →うーん、何とお答えしたらよいか分かりません。
     どんな点をお知りになりたいのか、もう少し限定して頂けませんでしょうか。

★地方公務員が役員になることに関しては、次の法律の条文(特に第38条)
に抵触しないか。

地方公務員法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
       33条(信用失墜行為の禁止)
       34条(秘密を守る義務)
       35条(職務に専念する義務)
       36条(政治的行為の制限)
       38条(営利企業等の従事制限)


★普通地方公共団体の議会の議員が役員になることに関しては、
地方自治法第92条の2とに抵触しないか。

第92条の2
 普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し
 請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人
 の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれら
 に準ずべき者、支配人及び清算人たることができない。


NPO法および民法では何の問題もないと教えていただきましたが、
その方々に役員に就任していただくに当たって、
上記の法律の条文に抵触しないか心配です。

当人方も気にされているので、根拠法令等をお見せし、
問題ないのであれば、その旨を説明し、役員に就任していただくよう
依頼したいと考えております。

お忙しいとは思いますが、よろしくお願いいたします。
Re: 公務員、議員が役員に就任することについて 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/07/11(Tue) 07:42:00 No.6162
A さん

1、まず地方公務員法第33条、第34条、第35条の関係ですが、NPO法人の役員に就任するだけでこれらの禁止・義務に違反することにはなりません。ただし、例えば、そのNPO法人の理事会に出席するという理由で勝手に職場を抜け出したりしたら第35条違反ということになりそうですし、またそのNPO法人の理事会で公務員として知った秘密をばらしたら第34条違反ということになります。しかし、これはNPO法人の役員になったことを理由とするものではなく、当該の行為をしたことを理由とするものですので、両者を区別して考えてください。

2、地方公務員法第36条の関係ですが、そもそもNPO法人は「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものではないこと。」「特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。」(NPO法第2条2項二号ロ、ハ参照)が団体の性格として求められています。
また、「特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用してはならない。」ことも定められています。
このように、NPO法はNPO法人が政治的団体としての性格をもたないようにしておりますから、一般的には、NPO法人は地方公務員法第36条1項にいう「政党その他の政治的団体」には該当せず地方公務員法第36条1項違反の問題が生ずることはありません。

3、ただし、NPO法第2条2項二号ロの条文をよく読むと分かるように、「主たる目的」ではなく「従たる目的」として「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」を目的とすることは可能です。従たる目的であっても「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的」としている場合にはその団体は地方公務員法第36条1項にいう「政治的団体」であると解されますので、地方公務員はこのようなNPO法人の「結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となってはならず、、またはこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない」ことになります。

4、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」が「主たる目的」である場合には、そもそもNPO法人として設立の認証がなされませんから問題外ですが、これが「従たる目的」となっているかどうかは、当該NPO法人の定款の目的を定める条項(定款の必要的記載事項です)を読めばわかります。すなわち、定款において当該NPO法人の「目的」が記載されている条項に、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」が書かれていない場合には、そのNPO法人は地方公務員法第36条1項にいう「政治的団体」ではありませんから、地方公務員がその役員になっても何の何の問題もないことになります

5、次に地方公務員法第36条2項は、次の①の目的を持って②の行為をすることを禁じています。
①特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的
②一 公の選挙又は投票において投票をするように、またはしないように勧誘運動をすること
二 署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること
(以下略:条文を参照してください)
しかし、NPO法人の役員に就任したとしても、上記①の目的をもって②の行為をしたことにはならないことは明らかです。従って、地方公務員法第36条2項違反の問題は生じません。

6、次に地方公務員法第38条(営利企業等の従事制限)についてですが、NPO法人は「営利法人」ではなく「非営利法人」ですから、NPO法人の役員に就任しても同法違反の問題は生じません。
但し、役員として報酬をもらう場合には同条にいう「報酬を得ていかなる事業又は事務に従事すること」に該当しますから、同条違反となります。(なお、例えば理事会に出席するための交通費などいわゆる「実費弁償」については、この「報酬」には該当しません。)

7、最後に地方公務員法第92条の2(議員の兼職禁止)の問題ですが、そのNPO法人が当該地方公共団体に対し「請負」をするものでなければ何の問題もありません。なお、この「請負」は、民法上の請負に限らず、「いやしくも営業として、地方公共団体に対して、物件、労力などを供給することを目的としてなされる契約をもすべて含むと解するのがもっとも妥当である(……モーターボート競争会が地方公共団体の委任を受けて施行する場合の委任も請負に該当する。最高裁証2.12.3)」(松本英昭「新版逐条地方自治法(第2次改訂版)」312頁:学陽書房)と解されています。従って、そのNPO法人が、指定管理者となっているなどの場合には、議員がそのNPO法人の役員となるのは問題がありそうです。

                                   弁護士 浅野晋
Re: 公務員、議員が役員に就任することについて 投稿者: 投稿日:2006/07/11(Tue) 11:11:00 No.6163
弁護士 浅野晋 様

各条文ごとに検討していただき、非常にわかりやすいです。
参考にさせていただきます。
お忙しいところ、ありがとうございました。

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