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役員の辞任について 投稿者:田中 投稿日:2006/07/04(Tue) 17:00:00 No.6164
いつも参考にさせていただいております。
教えていただきたく、投稿させていただきます。

定款に
「役員が任期中に辞任する場合は、理事会の承認を得なければならない」
というような規定を定めることは可能でしょうか?

NPO法第15条の役員の定数が満たなくなってしまうことを
防ぐために、このように規定しておきたいと思うのですが、、、。

定款において役員は正会員の中から選任するとしており、
正会員をもってNPO法上の社員としております。
また、会員は、理事長に退会届を提出することにより
任意に退会することができるとしております。

役員の任期中の辞任についても、
理事会の承認を得ずに任意に退会できるようにすべきでしょうか。

よろしくお願いいたします。
Re: 役員の辞任について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/07/05(Wed) 21:19:00 No.6165
田中 さん

これはけっこう難しい問題です。

 NPO法人と役員との関係は民法の委任の規定によると解されています。
 そして、民法651条1項は、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定めています。
 従って、原則は「いつでも自由に辞任できる」という事になりますが、ご質問の案件は、その自由をを当事者間の契約で制限ができるのかと言う問題に帰着します。
すなわち、定款で「役員が任期中に辞任する場合は、理事会の承認を得なければならない。」と定められているときに、そのような定款の定めがあるNPO法人の役員になることを承諾するということは、辞任について制限があることを承認して役員になったということになるからです。
 民法651条1項をいわゆる「強行法規」と考え、当事者間の契約では変更できないと考えると、定款で役員の辞任には理事会の承認を要する旨定めても、そのような定めは無効ということになります。そうではなく民法651条1項をいわゆる「任意規定」と考えると、定款の定めは有効ということになります。
 そのどちらと考えるべきかは、人により見解が分かれます。
 民法学者はこれを任意規定と考え、契約で役員が自由に辞任することを制限することができると考える人が多いようです。(新版注釈民法(16)「債権(7)」282頁)
 これに対し商法学者は、会社の取締役は、取締役会や株主総会の承認がなければ辞任できないという特約があっても、自由に辞任できるとする人が多いようです。また地方裁判所段階の判例ですが、会社の取締役間において取締役を辞任することを制限する旨の特約があっても無効であり、自由に辞任できるとするものがあります。(大阪地裁昭和63.11.30判決、判例時報1316号139頁)
 
 このように見解が分かれているときにどうするかですが、それは自ら決める方針によります。思考停止してはいけません。
 制限が有効か無効か争われたときには、最終的には裁判所が決めますが、それまでは自分たちで自主的に有効か無効の判断をしてよいと私は思います。それが私的自治というものです。
なお、社員の退会の自由は制限できませんので(NPO法第2条2項一イ)、役員を社員に限定している場合には、仮に役員の辞任について理事会の承認を得る必要がある旨定めていても、退会することにより自動的に役員の資格が喪失し、辞任したことと同じ結果が生じます。

                                 弁護士 浅野晋
Re: 役員の辞任について 投稿者:田中 投稿日:2006/07/06(Thu) 11:39:00 No.6166
弁護士 浅野晋 様

非常に参考になります。
ありがとうございました。

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