NPOWEB

職種を限定している任意団体を，職種を限定しないＮＰＯ法人にして
事業の幅を広げようとしましたが，任意団体の創設者・会長等が反対し，
仕方がないので，その団体の主要メンバーと該当職種外の方々と一緒に
ＮＰＯ法人を設立しました。

で，同じような目的で同じような事業をしている団体が併存するのは，
効率が悪いし，メンバーも重複するので，合併・統合する方向で調整が
進んでいます。

ＮＰＯ法人同士の合併はＮＰＯ法で規定がありますが，ＮＰＯ法人と
任意団体の場合には，どうなのでしょうか。

各々の総会で，合併・統合することを決議し，結果的にＮＰＯ法人が
任意団体を吸収合併することになることで良いのでしょうか？
認証庁への届け出もいらないように思いますが，良いでしょうか？
（合併・統合で理事の数が増えるでしょうから，その届出や登記等は
必要でしょうが）

ｎｏｇａｍｉ　さん

　実は、これはけっこう難問です。

　合併によって任意団体がＮＰＯ法人に吸収されるということは、任意団体のメンバーにとっては、自動的に①任意団体が消滅する、②ＮＰＯ法人のメンバーとなる
ということを意味します。そのような吸収合併という行為を、すべてのメンバーの意思に基づかず（つまり反対のメンバーがいても）、社団としての任意団体の決議で行うことが許されるのかという問題です。
　これについては、次の２つの判例が参考になります。

１、名古屋高裁昭和５０年３月１３日判決（判例時報７９０号６７頁）
この判例は、財団法人が法人格なき社団を吸収合併できるのかという問題について、“合併すると吸収される方の社団が解散しその権利義務の一切が吸収する法人に包括的に移転することになるが、そのようなことは法が特別に認める場合に限る。ところが民法には合併に関する定めがない。従って、吸収合併はできない。」という趣旨のものです。

２、最高裁昭和４１年６月１７日判決（裁集民８３号７８９頁）
この判例は、「法人格のない宗教団体及びその上位団体の規則に、当該団体の合併ないし解散の手続きに関する規定がない場合において、その団体が他の団体と合併しようとするときは、民法６９条を類推適用して、信徒総会の解散決議を振ることを要する。」という趣旨のものです。

　ただ、これらの判例は、吸収される団体の規約（定款）に、合併についての定めがあり、その定めに従って合併する場合にまで、その射程距離がある判例とは思えません。
　私としては、吸収される団体の規約に合併についての定めがないときには合併は許されないが、合併についての規約の定めがあるときは、その定めに従って合併は許されると解します。（但し、反対論もあり得ます。）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弁護士　浅野晋

> 私としては、吸収される団体の規約に合併についての定めがないときには合併は許されないが、合併についての規約の定めがあるときは、その定めに従って合併は許されると解します。（但し、反対論もあり得ます。）

浅野先生，ありがとうございます。

任意団体の規約には，合併についての規定がありません。想定していなかった
ようなので。
今から合併についての規定を作り，スムーズに行くように，例えば会費の２重
払いのないように調整する，合併反対の方には払い済みの会費を返還する，残
余財産がある場合は全額をＮＰＯが引き継がず，合併反対の方に按分してお返
しする，事業はＮＰＯが引き継ぐ，などを進め，総会で合意を取り付ければ良
いでしょうか。
そうでもしないと，任意団体は流れ解散・自然消滅のようになってしまいそう
ですし…

[お詫び]
この質問の6673が6671と同じ文で，どういう訳か１時間後に再度投稿になって，
当方の何らかの手違いがあったのかも知れません。（今気づきました）
6671にコメントいただいた（6691で），かずくま様，事務局様申し訳ありませ
ん。

ｎｏｇａｍｉ　さん

「今から合併についての規定を作り，スムーズに行くように，例えば会費の２重
払いのないように調整する，合併反対の方には払い済みの会費を返還する，残
余財産がある場合は全額をＮＰＯが引き継がず，合併反対の方に按分してお返
しする，事業はＮＰＯが引き継ぐ，などを進め，総会で合意を取り付ければ良
いでしょうか。」

　　→良いと思います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弁護士　浅野晋