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電子メールによる理事会開催について 投稿者:EIZO 投稿日:2006/09/29(Fri) 14:13:00 No.6390
いつも大変参考にさせていただいております。ありがとうございます。
当機構は理事が多くまた皆さん要職に付かれているため、理事会開催が難しい状況に
あります。しかしながら、重要事項については理事会にて決議受けなければならず、業務
の遂行に支障を来たすことがあります。
そこで、理事の方が集まらなくても理事会を開催し、理事会決議をもらうことを考えて
おります。それを可能にするのが、以前質問箱5205re(4)にて轟木様が回答されていた
電子メールによる理事会開催は可能である旨のことですが、その6に理事会を電子メール
の方法で・・・・・定款にその旨定めておいた方が良いと思います。とありますが、
具体的に定款の条文にどの様に記載したら良いかご教示いただき度投稿いたしました。
また、大変失礼な質問となりますが、電子メールにより理事会開催及び決議について
以前、当機構にてお付合いをさせていただいている弁護士に確認したところ否定的な
意見をもらいました。そこで上記5205re(4)のご回答の内容は法的に明確に大丈夫な
ことでしょうか。
以上宜しくお願い致します。
Re: 電子メールによる理事会開催について 投稿者:T 投稿日:2006/09/29(Fri) 15:57:00 No.6391
こんな定款を定めているところがあります。
http://www.j-galapagos.org/statute.pdf
Re: 電子メールによる理事会開催について 投稿者:T 投稿日:2006/09/29(Fri) 16:54:00 No.6392
以下に、詳しく書かれていますね。

⇒ 行政 : 公益法人改革関連法公布、NPO法も改正
Re: 電子メールによる理事会開催について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/10/02(Mon) 14:32:00 No.6393
EIZO さん

1、何でも質問箱5205の回答(re(4))を読み直しましたが、あの通りで間 違いないと思います。

2、この問題は、社団法人やNPO法人については殆ど論じられていませんし、捜してみましたが判例も見あたりません。
  また、法律の解釈は、数学と違い、正解は一つしかないというものではありません。いろいろな解釈をすることが可能であり、そのいろいろな解釈が学説や裁判例の中で淘汰されて、次第に支配的な見解というのが出てきます。この問題については、未だ十分な議論がなされているわけではありませんから、当然のことながら、肯定、否定の両方の見解があり得るわけです。

3、そんな中でどう考えるかは、その人の判断によります。法律は「説得の技術」でもあります。その弁護士さんが、どうして否定的な見解となったのか分かりませんが、どうか結論だけでなくその結論に至った思考の階梯をお聞きになって、私が何でも質問箱5205の回答のところで述べたそれと比較して、どちらが説得的かをご自分で判断してください。

4、なお、先に述べたように、社団法人やNPO法人の理事については、この問題は殆ど論じられておりませんが、株式会社の取締役会の場合については、取締役が一堂に会して会議をするのではなく、例えば、いわゆる「持ち回り会議(決議)」とか「電話会議」や「テレビ会議」で取締役会ができるかどうかが論じられています。
そのうち、「持ち回り決議」については、これを無効とする最高裁判例(最高裁昭和44年11月27日判決:判例時報579号81頁)がありますので、すでに決着がついています。
「電話会議」による取締役会については、判例はありませんが、法務省民事局の担当者が事実上監修している稲葉威雄他編「実務相談株式会社法(中巻)」1104頁(商事法務研究会)は、これについて「会議体としての取締役会の性格に反する。」と否定的な見解を述べています。
なお、この中で「テレビ会議」については、「テレビ電話による場合には、機器の発達に応じた別の検討が必要でしょう。」と述べており、通信機器の発達如何によっては解釈も替わりうるかのような示唆があります。
しかし、これらは、取締役会の招集についての定めを置き、かつ「取締役会の決議は取締役の過半数が出席し……」(旧商法260条の2)とその決議方法について取締役の「出席」を要する旨の明文があるときに、これをどのように解釈するかという問題に対する見解です。「過半数が出席し」と、会議への「出席」を議決要件として定めているのに、出席も要せず「持ち回り決議」で決議できるとするのは、やはり無理がありますから、上記の最高裁判例の結論は、やはりやむを得ないところと思われますし、また電話会議による取締役についても「堅く」考えるとその通りであろうと思います。

5、これに対し、社団法人やNPO法人の場合、「理事会」については法律上何の定めもありませんし、また当然のことながら理事会の招集やその議決方法についても何の定めもありません。
NPO法第17条は、「特定非営利活動法人の業務は、定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決する。」と定めています。ここで、注意していただきたいのは、この条文が「理事の過半数」とは述べているけれども、それが会議体において議決されるべきかどうかについては何も述べていません。従って、会議体での議決によって「理事の過半数」で決した場合であろうが、会議をせずに当該の事項について理事一人一人の賛否の意見を聞いて、その「過半数」の意見で業務を決した場合であろうが、どちらも有効です。
すなわち、NPO法第17条は、理事が一堂に会して会議をした際の会議における議決ではなく、例えば上記の持ち回り決議の方法であっても、それが「理事の過半数」であれば業務を決することができるのだということを意味しています。
そして、このNPO法第17条は、「定款に特別の定め」を置くことにより、理事の「過半数」でなく、例えば「理事会で決するところにより」業務を決することができることも意味しています。(「理事の過半数」と「理事会の議決」とは異なることに注意してください。後者の場合、必ずしも「理事の過半数」とは限りません。)

6、このように、NPO法の条文から考えても、また理事が一同に会して意見を戦わせるという場合のようには意見交換の即時性がないけれども、メーリングリストを利用することによって理事全員が互いにメールによって意見交換ができるということを併せ考えるときは、定款で定めることによりメールによる理事会の開催というのは当然許されると解釈することができます。

7、以上の通りですが、EIZOさんの団体がどのようになさるかは、「当機構にてお付合いをさせていただいている弁護士」さんに、上述した私の議論をプリントアウトしてお見せになり、その上でその弁護士さんの思考の階梯をお聞きになって、どちらが納得いくかでご判断下さい。

8、なお、メールによる理事会について定款に定めを置く場合にどのように定めるかについては、例えば次のようにしたらいかがでしょうか。但し、定款の他の条項との整合性の問題もありますので、単なる参考とお考え下さい。なお、この定款案は、「理事会」という合議体の議決に基づく業務決定とは別に、「メールによる業務決定」の方法を設けるという構成にしてありますのでご注意ください。 

「第○条(電子メールによる業務の決定)
     理事会の議決を要する事項については、次の要領によりその事項を決することができる。
     ①理事会の議決を要する事項について、理事会を開催することが困難であると理事長が判断したときは、理事長はその賛否についての各理事の判断を返信すべき期限を定めて、各理事に対し、各理事が理事長宛に届け出たメールアドレス宛に、当該議決を要する事項及び当該議決事項の内容を電子メールで送信することができる。但し、返信すべき期限は、理事長が発信した電子メールの送信日から○日以上経過した日としなければならない。
②当該電子メールを受信した理事は、定められた期限までに電子メールにより理事長及び他の理事に対しその賛否の判断を発信する。
③理事長は、定められた期限までに受信した各理事の判断を集約し、速やかに各理事にその結果を送信しなければならない。
④各理事は、電子メールによって、当該議決事項について理事長に質問し、又は理事長並びに他の理事に対し意見を述べることができる。各理事の判断について返信すべき期限と定められた日の2日前までに質問があった事項については、理事長はその回答を理事全員に対し電子メールにより送信しなければならない。
     ⑤各理事の判断について返信すべき期限までに、理事総数の半数を超える理事から返信があったときは、電子メールによる方法によって理事      会の議決を要する事項の決定をすることができる。
⑥前記⑤の決定は、返信があった理事の賛否の判断の過半数により決するものとし、賛否同数の場合は理事長の決するところとする。
⑦電子メールによる業務の決定方法の細目は、理事長が別に定める規則により定める。

9、なお、「行政 : 公益法人改革関連法公布、NPO法も改正」で改正されたのは、「社員総会」の議決方法であり、「理事会」については、この改正法でも何の定めもされておりませんのでご注意下さい。(この改正法は現在未施行であり、現時点では改正前の現行法が適用されますので注意してください。改正法の具体的施行日は現時点では未定です。)

弁護士 浅野晋
Re: 電子メールによる理事会開催について 投稿者:EIZO 投稿日:2006/10/04(Wed) 11:22:00 No.6394
浅野先生、詳細にご教示いただきありがとうございました。
また、Tさんのご助言ありがとうございました。
当機構に関与いただいている弁護士さんと浅野先生のご意見を踏まえ検討致します。
今後も宜しくお願い申し上げます。

EIZO

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