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外部業者との契約・データ収集・本業への紹介 投稿者:N事務局長 投稿日:2006/10/12(Thu) 18:16:00 No.6434
いつもこのサイトを活用させていただいております。
ありがとうございます。心強い味方です。

私たちは設立準備の段階で、私は事務局長予定者です。
医師、看護師、心理士などで医療の改善を目的にしたNPOを立ち上げる予定です。
現在定款作成も大詰めという段階ですが、わからないことがあるのでぜひご教示お願い申し上げます。

(1)特定非営利活動の一つとして患者様とそのご家族を対象としたカウンセリング事業などを予定しているのですが、最初のうちは場所やカウンセラーの確保が難しいため、旧知の信頼できるカウンセラーのカウンセリングルームと契約してカウンセリング事業をしようと考えております。
従ってこの段階では私たちのNPOは外部のある特定のカウンセリングルームを紹介するような形になってしまうのですが、これは問題ありませんでしょうか?

(2)役員の中に研究者がおり、NPOの活動で得られたデータなどを使用して論文や学会などで発表し、治療方法の改善などを提案したいと考えております。データは結果的に得られるものであり、それを第一の目的にしているのではないのですが、NPOでデータ収集のための人体実験を行っているように思われるのではないかと心配しております。これは内部で倫理規定を作成すれば回避できるものでしょうか?
それとも定款に何かしら記載した方が良いものでしょうか?

(3)専門的な治療を必要とすると思われる方を自分のクリニックやカウンセリングルームに紹介することがあると予測されるのですが
この場合、NPOを集客に使っているように見えないか心配です。このような行為は違法でしょうか?また定款に何か記載しておいた方が良いことはありますでしょうか?

一度にたくさんの質問で恐縮です。
ぜひご指導お願い申し上げます。
Re: 外部業者との契約・データ収集・本業への紹介 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/10/20(Fri) 18:28:00 No.6435
N事務局長  さん

1、当初の段階で、外部のある特定のカウンセリングルームを紹介するような形になってしまう事業などを予定していることが問題ないかというご質問ですが、まったく問題ありません。「事業」は、目的達成のための手段ですから、いろいろな「手段」あって、ちっとも差し支えありません。
  但し、外部のカウンセリングルームを紹介する形での事業ができないような定款の文言であると、もちろんそのようなことはできませんので、定款を作る際に注意してください。

2、NPO活動で得られたデータの利用について、もちろん定款で定めることもできますが、定款で定めると動きが取れない事態が起こる可能性があります。定款ではなく、「倫理規定」、「取扱規定」といったものを作ることをお薦めします。

3、専門的な治療を必要とすると思われる方を自分のクリニックやカウンセリングルームに紹介することがNPOを集客に使っているように見えないか心配とのことですが、それは「違法」かどうかの問題ではありません。このようなことをどのように定款に定めるのかイメージが湧きませんが、どうしても定款で定める必要があるのでない限り、定款事項にしない方が良いように思われます。

                      弁護士 浅野晋
Re: 外部業者との契約・データ収集・本業への紹介 投稿者:N事務局長 投稿日:2006/10/24(Tue) 14:59:00 No.6436
浅野先生
ご指導、ありがとうございます。
定款に「紹介事業」をする旨を記載しようと思います。
Re: 外部業者との契約・データ収集・本業への紹介 投稿者:シーズ事務局 投稿日:2006/10/27(Fri) 16:20:00 No.6437
浅野先生、いつも大変助かっております。ありがとうございます。

N事務局長 さん

遅くなりましたが、シーズ事務局からも、ご意見させていただきます。

>(1)特定非営利活動の一つとして患者様とそのご家族を対象としたカウンセリング事業などを
>予定しているのですが、最初のうちは場所やカウンセラーの確保が難しいため、旧知の信頼で
>きるカウンセラーのカウンセリングルームと契約してカウンセリング事業をしようと考えております。
>従ってこの段階では私たちのNPOは外部のある特定のカウンセリングルームを紹介するよう
>な形になってしまうのですが、これは問題ありませんでしょうか?

 NPO法第11条は、定款に「非営利活動に係る事業の種類」を記載しなければならい、と規定していますが、具体的にどのような内容が適しているのかについては特に定めがありません。したがって、実施しようとする事業内容が、NPO法別表の活動の種類に該当するものであれば、原則としてその実施方法は、法人の自由であると解釈できます。
したがって、ご質問のような実施方法に、特に問題はないと思います。
一方、NPO法第8条が準用する民法第43条は、「法人は、定款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」となっており、実施する内容は、きちんと定款に記載する必要があります。
ご質問の内容については、「自らが実施する「カウンセリング事業」について、設立当初当面の間は、外部に委託してこれを実施する。」と考えれば、定款に「カウンセリング事業」と記載しておけばよい、と考えられます。ただし、これが恒常的で、紹介先が多数になると、「カウンセラー紹介事業」になるかもしれません。
事業内容をどのように表現すればよいかについて、法令等に具体的な基準の定めはありません。出来る限り分かりやすく、過不足なく記載すればそれでよいと考えられます。
事業実施内容が定款記載文の範囲内であるかどうかについては、所轄庁が一定の判断権限を有していると考えられますので、団体内部でよく検討、整理のうえ、申請前に所轄庁にご相談なさればよいかと思います。


>(2)役員の中に研究者がおり、NPOの活動で得られたデータなどを使用して論文や学会など
>で発表し、治療方法の改善などを提案したいと考えております。データは結果的に得られるも
>のであり、それを第一の目的にしているのではないのですが、NPOでデータ収集のための人
>体実験を行っているように思われるのではないかと心配しております。これは内部で倫理規定
>を作成すれば回避できるものでしょうか?

 貴団体は、医療の専門家等をスタッフとしてカウンセリング業務を行う、とのことですので、カウンセリングの結果得られた情報の取扱いについては、関連法令の規定、所管官庁や関連団体が作成する指針等、学会等における明示・暗黙のルールなどによる、という可能性もありますので、ご確認されることをお薦めします。
 個人情報保護に関する一般的な考え方は以下のようなものです。
 「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」(個人情報保護法第2条)とされています。 したがって、特定個人を識別できない情報は、個人情報にはあたりません。
「活動で得られたデータ」がどのような内容かは分かりませんが、例えば、統計的に処理されたデータであれば、特に問題はないでしょう。その内容が症例である場合は、個人名を伏せていたとしても、具体的な状況説明の中から個人を特定できてしまう場合もあるので、十分な注意が必要でしょう。
 いずれの場合であっても、自分の知らないところで自己に関する情報が取り扱われることに不快な感情を抱く方もいらっしゃいますので、利用者にその旨を事前に示し、了解を得ておくことが望ましいでしょう。
 医療に関する個人情報は、最も重要な個人情報のひとつであり、貴団体がこうした情報を取り扱う以上、収集データの外部利用の如何に関わらず、倫理規定は作成すべきであると考えます。
 近年、国民の個人情報保護に関する関心が非常に高まっています。倫理規定を設け、これを明らかにすることによって、法人内部で的確に個人情報の保護が図られ、それによって利用者の安心感、信頼感を得られます。法的な義務ではありませんが、利用者の信頼が得られるよう自主的に個人情報保護全般に関する倫理規定を作成することをお薦めします。

なお、個人情報保護法は、一定数以上の個人情報を有している事業者に一定の義務を課すものであり、貴団体は(少なくとも当面は、)個人情報保護法の対象外であると考えられます。
もちろん、だからといって個人情報保護に配慮しなくていい、というわけではありません。一般論としていえば、プライバシーの保護は憲法上の権利であり、当然に一定の配慮は必要です。もし、個人情報の漏洩により特定個人に損害(精神的損害を含む。)が生じた場合は、損害賠償を請求される場合があります。


>(3)専門的な治療を必要とすると思われる方を自分のクリニックやカウンセリングルームに紹
>介することがあると予測されるのですが
>この場合、NPOを集客に使っているように見えないか心配です。このような行為は違法でしょ
>うか?また定款に何か記載しておいた方が良いことはありますでしょうか?

 カウンセリングの結果、正式な医療行為が必要であると判断した場合、適切な診療機関を紹介することに違法性はありません。ご自身のクリニックを紹介することも、それが最も適切な対応であると思われのなら、差し支えないでしょう。
 ただし、最近「隠れ蓑法人」といって、NPO法人の看板を利用して集客をする事例が出てきており、問題となっています。例えば無料で法律相談をします、と称して客を集め、内容を聞いて十分な説明もなしに弁護士(と称する者)を紹介し、そこで報酬を請求される、といった事例です。このような場合は、詐欺に該当するとも考えられ、違法行為になってしまいます。
「ここから先の相談は有料である」と説明し、利用者の判断に委ねるのであれば、明確に違法とは言えませんが、紹介先の全て又はほとんどが当該NPO法人の役員や社員の関連団体であったとすれば、利用者が、当該NPO法人の活動を特定事業者のための営業行為とみなし、不信の念を抱くことも十分考えられます。
したがって、法人としてこうした問題に関する取扱いの基準を設けておくとともに、利用者にクリニックやカウンセリングルームを紹介する際は、当該クリニック等の特長やそこを紹介すると判断した理由などについて、利用者に対して十分な説明をすることが望ましいでしょう。
なお、このような内容を定款に記載する必要はないと思いますが、もし記載するのであれば、(1)と併せて、「利用者の個人情報の保護に関する方針及び診療機関の紹介に関する方針については、別に定めるものとする。」というような書き方でよいと思います。

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