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監事の業務と報酬 投稿者:横田 投稿日:2006/10/30(Mon) 19:42:00 No.6457
NPO法人となった精神障害者の作業所です。設立手続のいっさいを行政書士さんに依頼
しました。その経緯から、NPO法人の監事に就任して頂きました。監事としての報酬は
ゼロですが、法律相談や報告書類の作成業務の報酬として月1万円支払う予定です。
監事にこのような業務を依託し、報酬を支払うことに問題がないでしょうか。また、
外からみると監事としての報酬に見えます。監事との間に業務委託契約書をきちんと結
んでおけばいいのでしょうか。
Re: 監事の業務と報酬 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2006/11/07(Tue) 20:05:00 No.6458
横田 さん


1、この問題はNPO法人については議論がなされていませんが、株式会社の監査役については「株式会社の顧問弁護士が監査役に就任することの可否」という観点から議論があります。

2、株式会社の監査役については、旧商法276条が「監査役は会社若しくは子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は子会社の執行役をかぬることを得ず」との趣旨の定めを置いていましたので、ここにいう「その他の使用人」の中に顧問弁護士が含まれると解すべきかどうかが議論されました。(なお、現行の会社法335条も同様に定めています。)

3、多数説は、顧問弁護士は会社との間に、一般的には使用人に準ずる継続的利害関係を有する者であるので、旧商法276条にいう「使用人」に含めて考えるべきであり、顧問弁護士が監査役を兼ねることは違法であると解しています。(法務省民事局もこの多数説の見解をとっています。)

4、NPO法19条も「監事は、理事又は特定非営利活動法人の職員を兼ねてはならない。」と定めておりますので、問題は、
  ①NPO法人の監事の場合も、会社と同じように考えて良いのか
  ②顧問弁護士と「法律相談や報告書類の作成業務」を受任する「行政書士」とを同視すべきかどうか
ということになります。
 私は、その行政書士が「法律相談や報告書類の作成業務」を行うということから、会社の場合と同様に監事を兼務することはできないと解すべきだと考えます。

5、なお、余計なことかもしれませんが、設立後のNPOの報告書類の作成等は、行政書士等に依頼しなくても、自分たちで作成することが可能ですし、そうすることがそのNPOの運営にとっても望ましいように思われます。月1万円で年間12万円の経費というのは、NPOにとっては、とっても「もったいない」ように思うのですが……。

                       弁護士 浅野晋

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