N事務局長 さん
1、私は、「医療・福祉の向上を目指す団体で、ある状態に陥ってしまった患者さんのケア方法について学んだり情報交換したりする団体」の正会員の資格を「医療関係の資格を有する個人・団体」とすることは何ら差し支えないと考えます。
2、NPO法第2条2項一号イは、NPO法人の要件として「社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。」と定めています。つまりNPO法は、社員の資格について条件を定めてはならないとはしておらず、条件を定めても良いがそれが「不当な」条件であってはならないとしているわけです。
3、「医療・福祉の向上を目指す団体で、ある状態に陥ってしまった患者さんのケア方法について学んだり情報交換したりする団体」の場合、例えば「医療関係の資格」という専門的知識を有する人々が、その有する専門知識や経験を共通の基盤として当該団体を構成し運営することが、団体の目的達成のためにより適切である場合があることは当然です。
何の知識もない素人であっても、①社員として団体の運営に参画できる場合もあるでしょうが、②逆にこのような素人が、トンチンカンな発言や活動、議決権行使をして、団体の運営を混乱させてしまうということも、大いにあり得ることです。また、「医療関係の資格を有する者」であれば誰もが当然知っている事柄について、このような資格を持たず、従って専門知識を有しない素人社員が団体の意思決定や活動に参加するためには、団体の側で相当のエネルギーを費やしてレクチャーしたりしなければならない場面もあり得ますが、それは団体の円滑な運営を阻害することにもなりかねません。
従って、①と考えて資格制限をしないというのもけっこうですが、②の事態が生じる恐れを重視して資格制限をしたとしても、それが「不当な条件」を付しているとは言えないことは明らかです。
4、これについては、NPO法制定の際の国会審議でも議論されており、平成10年2月3日の参議院労働・社会政策委員会における質疑において、“医療活動を目的とする団体について、医師や看護婦などの資格を社員資格にすることは、不当な条件とは言えないとされる場合は十分あり得る”との趣旨の答弁がなされています。
5、ご承知のように、東京都は、自分の作った鋳型に無理矢理はめ込もうといたします。しか し、不当な「指導」には断固抵抗しましょう。
東京都は、口では強権的な事を言いながら、こちらが強く出ると案外弱腰のような気がします。
たとえば、都は「東京都におけるNPO法の運用方針」を作っていますが、その中で「NPO法人の社員総会では、その定足数を社員総数の2分の1又は過半数以上とするなど、民主的で合理的な運営をする必要があります。」と、浅はかな民主主義の理解のもとにNPOの運営の実情を無視したまるで馬鹿なことを言っています。そして、これを認証申請をするNPOに押しつけようとしています。
以前、日本消費者連盟が、総会の定足数を社員総数の5分の1として認証申請したところ、不認証になったことがあります。そこで、その後、定足数を10分の1とし、「もし不認証としたら、訴訟をするぞ!」という構えで認証申請したら、まことに不思議なことに、あっさり認証されてしまいました。つまり、東京都は、①二枚舌である、②強く出ると引っ込む、という情けない所轄庁であるように思われます。
もし「医療機関の資格を有する」ことを社員資格として、そのために不認証になったときは、ぜひ裁判所に訴えるとの気概を持って頑張ってください。不認証になって訴訟するときは、及ばずながら私が代理人を引き受けます。
6、なお、このことについては、千葉県が作成した「千葉県NPO法運用マニュアル」の1-59頁に詳しく解説してあります。上述した国会での質疑も掲載されており大変参考になります。千葉県だったら、この件は全く問題にならないと思われます。
この「千葉県NPO法運用マニュアル」は冊子になって販売されていますが、インターネ ットでもダウンロードすることができます。
http://.chiba-npo.jp の頁を開き、「NPO法人を申請する」→「法人認証申請の手引き」→「NPO法申請マニュアル」の項目を順次クリックすると出てきます。
このマニュアルは、実務上の殆どの問題について詳しく解説していますし、またその内容は長時間の議論を経て作成されており信頼できますので、他の問題についてもとても参考になります。
弁護士 浅野晋