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定款における役員任期条項の解釈について 投稿者:山田一郎 投稿日:2007/04/10(Tue) 11:32:26 No.6810
こんにちは。

内閣府をはじめ、各都道府県の定款の雛型中の
役員任期に関する条項についてご質問をさせて
いただきます。

その条項と申しますのは、具体的には「役員は、
辞任又は任期満了後においても、後任者が就任
するまでは、その職務を行わなければならない
。」という条項です。

私どもの法人には、現在19名の役員がいて、ま
た、定款において上記の条項が記載されている
のですが、この場合において役員のうち1名でも
やめた場合は後任者が就任するまではその職務
を行わなければならないのか、あるいは、役員
が止めた場合で、かつ、法定の最小の人数(NP
O法では理事3名・監事1名、定款において定めが
ある場合にはその定数の最小人数)に満たない
ときに限り後任者が就任するまではその職務を
行わなければならないのか。という2つの解釈が
(後者の解釈は、少し強引ですが実務に適してい
ると考えられます。)成り立つと思います。

このように解釈が分かれた場合、どのように結論
を導けばよろしいでしょうが。

お手数ですが、ご指導ご鞭撻のほどどうぞよろし
くお願いいたします。
Re: 定款における役員任期条項の解釈について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2007/04/16(Mon) 20:34:22 No.6832
山田一郎 さん

 これは結構難しい問題です。判例や学説を調べましたが、この問題にストレートに答えたものはありませんでした。しかし、次のように考えることができると思います。

1、まず、「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が 就任するまでは、その職務を行わなければならない。」との趣 旨の定めは、特定非営利活動促進法にも民法にもありません。
任期満了後の場合には、特定非営利活動促進法24条2項に 定めがあり、「定款で役員を社員総会で選任することとしてい る特定非営利活動法人」について、その任期を「定款により、 後任の役員が選任されていない場合に限り、……定款で定めら れた任期の末日後最初の社員総会が終結するまで」任期を伸長 することができるということになっています。
しかしこれは、その旨をきちんと定款で定めた場合にのみ任 期の伸長が認められるものであって、単に定款で「辞任又は任 期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行 わなければならない。」と定めてもその通りに認められるとい うものではありません。
2、そもそも役員と団体の関係は委任関係ですから、役員はその 委任関係をいつでも 解除(つまり辞任)することができま  す。(民法651条1項)
3、役員が辞任の意思表示をした場合、すぐにその効果が発生し ますから(つまり役 員ではなくなりますから)、役員でもな いのに「後任者が就任するまでは、その職 務を行わなければ ならない」とするのは、明らかに異例のことです。
4、これは恐らく、民法654条の、「委任が終了した場合にお いて、急迫の事情があるときは、受任者……は、委任者……が 委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をし なければならない。」と定めの場合を想定していると思われま す。
すなわち、辞任しまたは任期満了して役員の地位を喪失した 元役員がその職務を行わなければならないのは、民法654条 にいう「急迫の事情がある場合」に限 ると解することができ ます。
5、従って、多数の役員がいて、そのうち1人が辞任しても特段 の「急迫の事情」は生じない場合、役員の職務を行う必要はな いし、また既に役員ではないのですから役員の職務を行うこと もできないということになります。
辞任により法が定める役員の最低数に満たないこととなる場 合は、「急迫の事情がある」場合が多いとは考えられますが、 それだけですぐに「急迫の事情がある」とは言えないようにも 思います。

弁護士 浅野晋
Re: 定款における役員任期条項の解釈について 投稿者:山田一郎 投稿日:2007/04/19(Thu) 21:00:13 No.6845
弁護士 浅野晋先生

いつもお世話になっております。

難しい問題を質問してしまいまして、
大変恐縮です。

つまり、役員が辞任したからといって必ずし
も後任者が就任するまではその職務を行わな
ければならないわけではないということです
ね。(法律論的には)

NPO法は、条文が少しラフな点があるので
少し判断に迷うときがありますね。(あくま
で個人的な意見ですが。)

ご検討いただき、どうも有難うございました。

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