Re: 理事会で委任状含めた全員出席のとき 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2007/10/23(Tue) 19:39:00
No.7339
うじ さん
ご質問には、次の2つの論点があります。
(1)まず、そもそも理事会に理事の代理人が出席して審議し、議決 することができるのか?
(2)理事会の招集通知に記載されていない、議案を審議できるのか?
まず(1)についてですが、定款にこのことについての可否についての定めがあれば、もちろんそれに従うことになります。
このことについての定めが定款にない場合はどうするかですが、マンションの管理組合の理事会について、理事会に理事の代理人が出席することは違法ではないとした最高裁判例(平成2年11月26日:判例時報1367号24ページ)がありますので、これと同様に解して、理事会に理事の代理人が出席することは違法ではないと考えて良いと思います。
次に(2)ですが、これも定款にこのことについての可否についての定めがあれば、もちろんそれに従うことになります。
このことについての定めが定款にない場合、その可否については両説があり得ます。
理事は理事会に出席するのが当然であり、かつ理事会では招集通知に記載された議案ばかりでなく諸般の事項が審議されるものだ、というふうに考えれば、招集通知に記載されていない議案についても、審議することができるということになります。
しかし、当該議案が審議されるのであれば、万難を排しても出席したのに、議案となっていなかったので欠席した理事にとっては、予め通知されていない議案をいきなり理事会で審議することは不意打ちでありアンフェアであると考えれば、招集通知で議案としてあげられていない事項については審議できないということになります。
私としては、前者の考え方によって良いと考えています。
次に「被委任者の意見が委任数に反映されると考えて間違いないでしょうか」という問題ですが、これはおそらく「受任者が委任者(委任状を発行した人)の議決権を行使できるのか」という問題のことであると思われます。
上述したように、予め通知されていない議案を理事会で審議することが許されるとする場合は、受任者は委任者の議決権を代理行使できます。
但し、例えば委任状に受任者の代理権を一定の事項に制限する旨の記載があるような場合は、このように解することはできません。
なお、上記最高裁の判例は、次のように述べています。参考までにお読み下さい。
「 一 建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)四七条二頃の管理組合法人(以下「管理組合」という。)が、その規約によって、代表権のある理事の外に複数の理事を定め、理事会を設けた場合において、「理事に事故があり、理事会に出席できないときは、その配偶者又は一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる。」と規定する規約の条項(以下「本件条項」という。)は、法四九条七項の規定により管理組合の理事について準用される民法五五条に違反するものではなく、他に本件条項を違法とすべき理由はないと解するのが相当である。
二 すなわち、法人の理事は法人の事務全般にわたり法人を代表(代理)するものであるが、すべての事務を自ら執行しなければ
ならないとすると、それは必ずしも容易ではないとともに、他方、法人の代理を包括的に他人に委任することを許した場合には、当該理事を選任した法人と理事との信任関係を害することから、民法五五条の規定は、定款、寄附行為又は総会の決議によって禁止されないときに限り、理事が法人の特定の行為の代理のみを他人に委任することを認めて、包括的な委任を禁止したものであって、複数の理事を定め、理事会を設けた場合の右理事会における出席及び議決権の行使について直接規定するものではない。したがって、理事会における出席及び議決権の行使の代理を許容する定款又は寄附行為が、同条の規定から直ちに違法となるものではない。
三 ところで、法人の意思決定のための内部的会議体における出席及び議決権の行使が代理に親しむかどうかについては、当該法
人において当該会議体が設置された趣旨、当該会議体に委任された事務の内容に照らして、その代理が法人の理事に対する委任の本旨に背馳するものでないかどうかによって決すべきものである。
これを、管理組合についてみるに、法によれば、管理組合の事務は集会の決議によることが原則とされ、区分所有権の内容に影響を及ぼす事項は規約又は集会決議によって定めるべき事項とされ、規約で理事又はその他の役員に委任し得る事項は限定されており(法五二条一項)、複数の理事が存する場合には過半数によって決する旨の民法五二条二項の規定が準用されている。しかし、複数の理事を置くか否か、代表権のない理事を置くか否か(法四九条四項)、複数の理事を置いた場合の意思決定を理事会によって行うか否か、更には、理事会を設けた場合の出席の要否及び議決権の行使の方法について、法は、これを自治的規範である規約に委ねているものと解するのが相当である。すなわち、規約において、代表権を有する理事を定め、その事務の執行を補佐、監督するために代表権のない理事を定め、これらの者による理事会を設けることも、理事会における出席及び議決権の行使について代理の可否、その要件及び被選任者の範囲を定めることも、可能というべきである。
そして、本件条項は、理事会への出席のみならず、理事会での議決権の行使の代理を許すことを定めたものと解されるが、理事に事故がある場合に限定して、被選任者の範囲を理事の配偶者又は一親等の親族に限って、当該理事の選任に基づいて、理事会への代理出席を認めるものであるから、この条項が管理組合の理事への信任関係を害するものということはできない。
四 そうすると、本件条項を適法であるとして上告人の請求を棄却した原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所
論の違法はない。論旨は、独自の見解に基づいて、又は原判決の措辞の不当をとらえて、原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。 」
弁護士 浅野晋