- 監事について - さわだ 2008-06-10 16:11:05 No.7837
- Re: 監事について - 荒井正志 2008-06-12 12:18:07 No.7839
- 補足 - 荒井正志 2008-06-12 12:24:49 No.7840
- Re: 監事について - 弁護士 浅野晋 2008-06-12 15:03:33 No.7841
監事について 投稿者:
さわだ 投稿日:2008/06/10(Tue) 16:11:05
No.7837
こんにちわ.さわだと申します.
設立2年目のNPO法人で,障害者グループホームの収益事業のみを行っています.
法人税,地方税の申告と税務相談を税理士の先生にお願いしています.
この税理士のかたに,監事に就任してもらうことはできないのでしょうか?
NPO法で調べたところでは,特に制限する規定がないと思い,税理士の先生も法的に問題がなければ引き受けてくださるということになりました.
ところが,役員変更届を提出する際に,所轄県の担当者から,それはだめです,と言われました.
そこで法的な根拠等を教えてくださいと尋ねたところ,普通の会社でも,顧問税理士が監査役を兼任することはないでしょう,と言うのみなのですが...
前監事はやめることに決まっていて,他に信頼のできる頼める人がいないので,困っています.
顧問税理士は監事を兼ねてはいけないでしょうか?
よろしくお願いします.
Re: 監事について 投稿者:
荒井正志 投稿日:2008/06/12(Thu) 12:18:07
No.7839
はじめまして、行政書士の荒井と申します。
ご質問の件ですが、顧問税理士が監事を兼ねてはいけない、ということはありません。
気になるのは、監事といえどもNPO法人の役員になるわけですから、それなりの責任を負うことになります。
なので、監事になっていただく方には前もって定款に記載されている監事の責任について説明をしておくと良いと思います。
補足 投稿者:
荒井正志 投稿日:2008/06/12(Thu) 12:24:49
No.7840
>ところが,役員変更届を提出する際に,所轄県の担当者から,それはだめです,と言われました.
どちらの県か分からないので、なんともいえないのですが、法的根拠ではなく、担当者の経験則による判断だと思われます。
あるいは、県の「NPO法の運用方針」でによって、駄目といっているだけなのかもしれません。
運用方針にそういった記載がないのだとすれば、そのまま監事として届出をすればよいと思います。あえて顧問税理士である旨を説明する必要もないと思います。
Re: 監事について 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2008/06/12(Thu) 15:03:33
No.7841
さわだ さん
1、実はこの問題はけっこう悩ましい問題を含んでいます。
NPO法その他の法令で、NPO法人の顧問税理士が当該NPO法人の監事になってはならない旨の定めはありません。しかし、NPO法19条は次のように定めています。
「(監事の兼職禁止)
第十九条 監事は、理事又は特定非営利活動法人の職員を兼ねてはならない。」
問題は、この条文にいう「職員」に、顧問税理士や顧問弁護士が該当するかどうかということに帰着します。
2、同様の問題は、株式会社の監査役についても生じます。顧問弁護士や顧問税理士が、顧問先の会社の監査役になれるのかという問題です。
式会社の場合、会社法335条2項は次のように定めています。
「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。」
顧問弁護士や顧問税理士が、ここにいう「その他の使用人」に該当するかどうかどうかについては、解釈が分かれています。
3、会社法の前身の旧商法276条も会社法335条2項と同じ趣旨の定めを置いていました。
この旧商法276条の解釈については次のような最高裁の判例があります。
「商法276条の規定は、弁護士の資格を有する監査役が特定の訴訟事件につき監査役から委任を受けて訴訟代理人になることまで禁止するものではない。」(最高裁判決昭和61年2月18日:最高裁民事判例集40-1-32)
この判例は「顧問弁護士」ではなく「特定の事件の訴訟代理人」の場合の判例ですから、この判例を直ちに顧問弁護士にまで拡張して、“顧問弁護士は監査役になれる”とすることはできません。
4、そこで、解釈が分かれるわけですが、監査役と同社の顧問弁護士を兼ねることが 禁止されるかについては、高等裁判所段階の次の判例があります。
「……顧問弁護士として会社等の役職員からの法律相談に応じ、法律専門家としての自己の判断と責任において、受任した事務を処理しあるいは法律上の意見を述べるものであって、会社の業務自体を行うものではなく、もとより業務執行機関に対し継続的従属的関係にある使用人の地位に就くものではないから、このような弁護士が会社の監査役に就任した場合においても、……特段の事情のない限り、右就任の事実だけから、直ちに商法276条に違反するということはできないと解するのが相当である。」(大阪高裁判決昭和61年10月24日:金融法務事情1158号33頁)
またこのような考え方を支持する学説もあります。
5、これに対し、次のような考え方もあります。
「会社における重要な業務執行が多く法律問題を含み、顧問弁護士の関与を必要とする場合が多いことを考慮すると、顧問弁護士は会社との間に、一般的には使用人に準ずる継続的な利害関係を有するものであり、したがって、会社の法律顧問となっている弁護士も、商法276条の適用を認めるべきであるというのが相当であると考えます(多数説といってもよいでしょう。)。」(「実務相談株式会社法」中巻1376頁)
このように、株式会社については、未だはっきりした結論が出ていません。
6、さてNPO法人の場合に、株式会社の場合と全く同じに考えて良いかどうかとい う問題もあります。
NPO法人の場合、お金もないし、協力してくれる人材も限られています。そのような状況の中で、余り厳しく解釈すると、運営が阻害されてしまうという実態があります。
そこで私自身としては、大阪高裁の判例の考え方に基づき、法律顧問の弁護士や税理顧問の税理士が当該NPO法人の監事となることはNPO法19条に違反しないと考えます。
7、このような考え方には、もちろん反対説もあり得るわけですが、ご相談のケースでは「法人税,地方税の申告と税務相談を税理士の先生にお願いしています」ということですから、個々の事案についての依頼と相談を依頼しているだけであって、その税理士の先生が上記5記載の「使用人に準ずる継続的な利害関係を有する」ような「税務顧問」になっているわけではありません。
すなわち、個々の税務問題について依頼・相談をしているケースですから、上記最高裁判例にいう「弁護士の資格を有する監査役が特定の訴訟事件につき監査役から委任を受けて訴訟代理人になる」場合と同じと考えられます。
8、このように、最高裁の判例から考えて、ご質問のケースにおいて当該税理士さんが監事となることは何ら問題ないと考えられます。
また、そもそも税理士の業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談であって、これらについて依頼受けた法人の会計業務の内容にタッチするわけではありません。つまり、依頼者の提供する資料等に基づき税務代理をし、税務書類を作成し、税務相談に答えるのであって、そもそも「使用人に準ずる継続的な利害関係を有する」場面は想定しにくいように思われます。
この意味でも、ご相談のケースは問題ないと考えられます。
所轄庁の担当者の考えは間違っています。
弁護士 浅野晋
都庁に電話してみました 投稿者:
荒井正志 投稿日:2008/06/13(Fri) 09:47:42
No.7846
浅野先生
はじめまして、行政書士の荒井と申します。
先生のコメントを拝見させていただきました。
自分の不勉強を恥じ入るばかりです。
至らぬ点があるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。
さて、私も気になりましたので、都庁に電話したところ、顧問税理士が監事に就任すること自体は法律に抵触するわけではないので、大丈夫だといっておりました。
ただ、職員ではないが、「顧問」税理士が監事に就任することが、対外的にどう評価されるかは別問題であるとも指摘をいただきました。
こうなってきますと、法人がきちんと情報公開をして信用を勝ち得て行くしかないのかな、という風に感じました。
Re: 都庁に電話してみました 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2008/06/13(Fri) 13:48:49
No.7848
荒井 さん
いろいろなご意見があった方が議論が深まってきますので、これからもどうか積極的に投稿してくださるようお願いいたします。
また、「顧問税理士が監事に就任することが、対外的にどう評価されるかは別問題」というのはその通りです。できたら避けた方が良いように思いますが、ただ、NPOには人的資源が乏しいという実情があります。また、予算の規模も小さいことが多いと思われますので、当該団体の判断で柔軟に対処したら良いと思います。
ありがとうございました。
弁護士 浅野晋
Re: 都庁に電話してみました 投稿者:
さわだ 投稿日:2008/06/13(Fri) 16:36:02
No.7849
荒井先生、浅野先生、お忙しいなかでありがとうございました。
質問の投稿をしたあとに、県担当者(埼玉県)から、法的問題はないので、いいです、という電話がありました。(不機嫌そうでした・・))
顧問税理士さんが、県担当者に当方の事情を話した上で、
所轄庁であるならきちんとした根拠を言いなさい、と言ってくださったようでした。
それでもなにか不安な気がしていましたが、
先生がたに細かく説明していただいて良かったです。
監事のチェックリストも、活用させていただきます。
どうもありがとうございました。