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残余財産譲渡先を決める機関は? 投稿者:事務方 投稿日:2009/02/17(Tue) 11:07:28 No.8314
はじめまして。
NPO法第32条第1項にもとづき、定款で「残余財産の帰属先」を記載する場合、多くが「法第11条第3項に掲げる者のうち、総会の議決を経て選定された者に譲渡するものとする。」などと、具体的な譲渡先の決定は総会の決議に委ねていると思います。
この場合、定款で「具体的な譲渡先は理事会で決議する」とすることは可能でしょうか?
私は、
1)法32条1項では「清算結了の届出の時において、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する」となっていることから、定款に具体的な個別の譲渡先を記載するのが基本である。
2)総会で具体的な譲渡先を決めるのは、譲渡先の「範囲」のみを定款で定め、個別具体の団体のみを総会の決議に委ねる「例外」的取扱いである。
3)本来定款に記載すべき事項を、例外的に総会で定めるのだから、その手続きは「定款変更」の手続きに準ずることが必要であり、法第25条第1項の規定により総会での議決が必要である。
ことから、総会での決定に限られるように思うのです。
また、実務上でも、
4)総会の決議による解散の場合は、解散を決議したのちは理事は全て退任し清算人が選任されることから「理事会」は開催できないこと(他方、清算結了時点での社員総会開催は否定されていない)
5)解散総会開催前の理事会で議決した譲渡先について、総会で異議が出され、解散自体が否決されることも想定されるので、事実上、理事会だけで譲渡先を決めることにあまり意味がないこと
から、理事会の議決とする必要性が薄いと感じます。
さらに、清算法人においては理事に代わり清算人が法人の業務を行うことから、
6)具体的な譲渡先の決定が理事会で可能であれば、清算人においても可能ではないかと考えられるが、法第32条第2項では、清算人に対し、定款に定めのない場合に「所轄庁の認証を得て、その財産を国又は地方公共団体に譲渡することができる」と定めており、それ以外の法11条第3項に定める者への譲渡を認めていないこと
を考えると、理事会の権能に「残余財産の具体的譲渡先の選定」は含まれないのではないかと思うのですが。
どなたか、教えていただければと思います。
よろしくお願いします。
Re: 残余財産譲渡先を決める機関は? 投稿者:ととと 投稿日:2009/02/23(Mon) 00:47:46 No.8331
予め申し上げますが、当方、法律の専門家ではありません。

 私見であることをお断りしておきますが、『定款で「具体的な譲渡先は理事会で決議する」とすることは可能』と考えます。

 法第32条第1項では「清算結了の届出の時において、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する」となっていますが、ここで「定款でさだめるところにより」がかかっているのは、「帰属すべき者」ではなく「帰属する」ではないかと考えます。つまり、定款には帰属させる意思決定や手続・方法を定めればよいのではないかと考えます。もちろん、その規定に帰属先を直接指定することも可能と思います。

 また、法第11条第3項では「第一項第十二号(注:解散に関する事項 )に掲げる事項中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、特定非営利活動法人その他次に掲げる者のうちから選定されるようにしなければならない。」とあります。この条文では「残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には」と表現しています。もし、帰属先を直接的に定めさせるのであれば「残余財産の帰属すべき者を定める場合には」と表すのではないかと思います。「関する」という文言がありますが、これにより「帰属すべき者やそれに関連する規定」というように解釈できると思います。

 ご指摘の6)については、定款の規定次第では清算人に譲渡先を決めさせるのも可能と思います。例えば「・・・法第11条第3項に定める者のうちから清算人が指定した者に譲渡する。」というような定款も認められるのではないかと思います。もっとも、清算人は複数いるでしょうし、そのための意思決定の方法も決めないとならないので、そうすることの意義や有効性には疑問ですが。

 4)と5)については、ご指摘のとおり、手続上は理事会による譲渡先の決定には難しいところはありますが、不可能とまでは言えないと思います。

 とは言うものの、残余財産の譲渡先は解散を決議する総会で決議するのが妥当だと思いますし、理事会で決められるよりも禍根を残さないのではないかと思います。
 定款にダイレクトに帰属先を示すのも有効と思いますが、その帰属先が名称変更したり存在しなくなったりした場合に、定款変更認証申請の手続が必要なので、それもまた悩ましいですね。

 以上です。
Re: 残余財産譲渡先を決める機関は? 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2009/02/27(Fri) 19:59:59 No.8339
事務方 さん

1、私は、定款で「具体的な譲渡先は理事会で決議する」と定めることは可能であると考えます。

2、改正前の民法第72条は、社団法人・財団法人が解散した場合の残余財産の帰属について次のように定めていました。
  
  第72条(残余財産の帰属)
     解散した法人の財産は、定款または寄付行為で指定した者に帰属する。
   2 定款または寄付行為で権利の帰属するものを指定せず、又はその者を指定する方法を定めなかったときは、理事は、主務官庁の許可を得て、その法人の目的に類似する目的のために、その財産を処分することができる。(後略)

3、ところで、この第72条1項にいう「定款……で指定した者」というのは、これだけでは、例えば「社団法人○○」というような特定の帰属先を定めなければ「定款……で指定した者」と言えないのか、あるいは、例えば「残余財産の帰属先は理事会において定める」というように、帰属する者を指定する方法の定めでも良いのかは判然としません。
  
  しかし、第1項を受けている第2項では、「定款で……又はその者を指定する方法を定めなかったとき」とのべ、定款において残余財産の帰属者を「指定する方法」を定めることを是認しています。

従って、第1項の「定款または寄付行為で指定した者」という中には、定款が定めた方法(例えば理事会の議決)に基づき指定された者も含まれることになります。

4、この民法第72条の解釈に関し、「新版注釈民法(2)」444頁は次のように 述べています。
   「……。さらに、帰属権利者は定款・寄付行為によって直接に指定してもよいし、間接的にこれを指定する方法を定めておいてもよい。例えば、総会もしくは理事会の決議によって残余財産の帰属権利者を指定する旨を定めるごときである。」

5、他方、特定非営利活動促進法第32条1項は、次のように定めています。 
  
  第32条 (残余財産の帰属) 
     解散した特定非営利活動法人の残余財産は、……定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。

二つの条文を比べてみると、特定非営利活動促進法第32条は、上記の民法72 条1項と表現は異なるものの、その趣旨は同じであると解することができます。
・改正前の民法第72条1項  →  「定款……で指定した者」
・特定非営利活動促進法第32条1項
            → 「定款で定めるところにより、その帰属すべき者」

6、従って、この「定款で定めるところ」という文言は、特定の帰属先を定める場合 だけでなく、「残余財産の帰属先は理事会において定める」というように、帰属す る者を指定する方法を定めても良い趣旨であると解することができます。

7、次に、法人が解散すると、「理事」は「清算人」になりますから、「残余財産の 帰属先は理事会において定める」と定款で定めているときは、解散の決議をする前 に理事会を開いて帰属先を定めておかなければならないのかという問題がありま  す。
これに関して、上記の民法第72条2項も「理事」が残余財産を処分する旨の定 めとなっていることから、解散後の清算人は残余財産の処分ができないのかという 疑問が生じます。
これについては、ここにいう「理事」には「清算人」も含まれると解釈されてい ます。(前掲書445頁)

8、従って、「残余財産の帰属先は理事会において定める」との定款の定めについては、理事会だけでなく清算人会においても定めることができると考えて良いと考えます

                 弁護士 浅野晋
Re: 残余財産譲渡先を決める機関は? 投稿者:事務方 投稿日:2009/03/03(Tue) 11:09:45 No.8349
ととと 様
浅野先生

理事会,清算人会どちらでも譲渡先を決議することが可能なのですね。
詳細に解説していただきありがとうございました。

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