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動議について 投稿者:ココ 投稿日:2009/05/22(Fri) 19:03:24 No.8569
理事会で緊急動議が発令され、理事が解任されました。この議決はもともと議案にはなかったもので、この日突然出されたものということになっています。しかし、あらかじめ書類も用意されていて、あきらかに事前に準備されていたものと思われます。その書類も、こちらに目を通させて、無理やり回収されました。そのため事前に準備されていたことの証明は、なくなりました。
動議や緊急動議に関する事項は、定款にはいっさい記されていないのですが、緊急動議は議案になくても即議決を取れるということで納得させられました。
定款には「議決事項は、あらかじめ通知した事項とする」ということだけしか書かれていません。この場合、緊急動議を議決できるかどうかの判断は、どうすればよいのでしょうか?
Re: 動議について 投稿者:ととと 投稿日:2009/05/23(Sat) 23:58:16 No.8573
 定款に、「議決事項は、あらかじめ通知した事項とする」と記載されていて、緊急動議の成立要件について定められていなければ、その緊急動議は無効と考えます。


 そのほか、理事の解任の手続については、以下についても留意が必要と思います。以下の何れも、一般的には定款に記載しています。

1.理事の解任は何らかの会議での決議によるものと思われるが、その会議は理事会か?総会か?

2.理事の解任にあたっては、当該理事に弁明の機会を与える必要がないか?弁明の機会を与える必要があるのであれば、その機会は適切に設けられたか?
Re: 動議について 投稿者:ココ 投稿日:2009/05/24(Sun) 07:37:27 No.8577
回答ありがとうございました。
役員の選任、解任は、理事会で行われることとなっています。
解任にあたっては、弁明の機会を与えなければならないことも明記されています。
この点においては、定款どおりに行われました。
緊急動議については、いっさいの記述がありませんので、この点において、再度議論に持ち込みたいと考えております。
Re: 動議について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2009/05/24(Sun) 12:36:48 No.8580
ココ さん

一、「動議」とは何か

1、「動議」については以前に説明したことがありますが、再度説明いたします。
「議案」とは、合議体における会議事項を指しますが、「動議」とは合議体の構成員が発議する会議事項のことを指します。「緊急」に発議されることが多いので「緊急動議」といわれることもありますが、同じ意味です。

2、動議は合議体の構成員が発議しますので、例えば議長不信任とか休憩とか審議打切りとか議事運営に関するものが一般的ですが、例えば議案に対する修正動議といった議事運営に関しない動議もあります。

3、議事運営に関する動議はその合議体に出席している構成員(総会の場合は社員=正会員、理事会の場合は理事)であれば、誰でも自由に発議することが出来ます。
 
4、問題は議事運営に関しない動議(例えば、①議案の修正動議、②理事の選任・解任の動議、③新たな議案を審理して議決する旨の動議など)が許されるかどうかです。

5、すなわち、このような動議を無制限に認めると、その合議体(総会や理事会)の招集通知を見て出席の必要がないと判断して出席しなかった構成員の権利を侵害することになるからです。
これに関しては、総会の場合と理事会の場合で分けて考える必要があります。

二、「総会」における動議

1、特定非営利活動促進法第14条の6は、総会の決議事項について次のように定めています。

    第14条の6(社員総会の決議事項)
       社員総会においては、第14条の4の規定によりあらかじめ通知をした事項についてのみ、決議をすることができる。ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。

2、すなわち、
 ①総会の招集は「社員総会の目的たる事項を示し」て行わなければなりませんし、(第14条の4)
 ②また、総会の決議は、予め招集通知で通知された「社員総会の木的たる事項」につい  てのみすることが出来るというのが原則である(第14条の6)
 ということになります。

3、これは、正会員が総会に出席するかどうかは、招集通知に記載された「会議の目的たる事項」(つまり「議案」)を見て決めるわけですから、招集通知に記載されていない議案がいきなり総会に上程され、予想外の決議がなされてしまうと、社員の有する議決権が侵害されるという考えに基づいております。

4、しかし、特定非営利活動促進法第14条の6は、「ただし、定款に別段の定めがあるときは、この限りでない。」と定めていますので、定款にその旨の別段の定めがあれば総会の招集通知に「会議の目的たる事項」として記載されていない事項についても、総会の場でいきなり議案を提案し、これを決議することが可能です。

5、これに関連して株主総会の場合には、“招集通知に会議の目的たる事項の記載を要するのは、株主に対し予め議決権行使の準備をさせるためであるから、通知に記載のない事項あるいは記載が不完全で不明の事項について決議したときは、決議は取消し事由がある。しかし、他の記載事項から何が議題となっているか推知できるときや、特定の議題を直接表現していない場合でも、記載されている事項の解釈から一般株主にとって論理必然的に予期される事項については決議の対象と解しうる。”(注釈会社法(5)232条注釈15)と解されており、この趣旨の判例もあります(大判昭7.2.27 法学1-7-117、福岡地判平5.9.30判例時報1506-145)

6、NPO法人の総会の場合も、同じ考え方が成り立つと思われますので、株主総会の場合と同様に考えて良いと思われます。
  従って、定款に「別段の定め」がない場合には、上記一、4の①の議案の修正動議については動議として認められると解されますが、②③については違法となる可能性が強いと解されます。

三、「理事会」における動議

1、次に「理事会」における動議ですが、これは「総会」における動議と同様に考えることはできず、別途の考慮が必要です。

2、まず、株式会社の場合を考えてみましょう。
  株式会社の代表取締役は取締役会で選任・解任することになっていますが、その取締役会の招集通知に、代表取締役の解任についての議題が記載されていないのに、突然代表取締役の解任が議題とされ、解任決議がなされた場合に、これが有効かどうか裁判で争われたケースがあります。
これについて名古屋地方裁判所は次のように判断しました。(名古屋地裁平成11年4月23日判決:金融商事判例1069号47頁)
①株式会社の取締役は、株主総会の決議により株主の信任を受け、会社の業務執行を決定するとともに取締役の職務の執行を監督する必要的機関である取締役会の構成員として、取締役会に出席の上、業務執行に関する会社の意志決定に必要な諸般の事項に関し、臨機応変に経営上の判断をなすべき責務を負い、他方、株主総会に出席する株主と異なり、会議の目的たる事項によって出席するか否かを決する自由を有するわけではなく、常に取締役会に出席して、会社の業務に関するあらゆる提案、動議について必要な討議、議決を行う権限と義務がある。
②このような権限と義務に照らして考えれば、定款等により、取締役会に先立ち会議の目的たる事項をあらかじめ通知すべきことを定めている場合でも、右規定は、取締役会に出席する取締役に事前の準備の便宜を与えたものにとどまり、それ以上に取締役会における決議内容を拘束する効力を有するものではないと解するのが相当である。
③とりわけ、取締役会における取締役の業務執行に関する監督権の行使は、あらかじめ提案された議案とは関係なく、有効適切に監督権を行使することが期待されているものというべきである(代表取締役の解任は、その権限行使の一つである。)
④そうしてみれば、取締役会招集通知に記載されていない事項が取締役会で審議・議決されたとしても、これによって直ちに当該決議が違法となるものとはいえない。

3、そこで、NPO法人の理事会についても株式会社の取締役会と同様に考えて良いかど うかが問題となります。

4、NPO法人の理事会は、取締役会と違って、法律上設置が定められた機関ではなく、 定款によって定められる任意の機関ですし、理事の出席義務も法律上定められているわ けではありません。
ただ、理事に就任したということは、当該NPO法人の委託を受けてこれを受任したことを意味しますから、民法の委任の規定の趣旨に基づき、株式会社の取締役と同様に、理事会の構成員として、理事会に出席の上、業務執行に関する当該NPO法人の意志決定に必要な諸般の事項に関し、臨機応変に経営上の判断をなすべき責務を負っているものと解されます。

5、また、理事会という合議体は、その構成員である各理事の業務執行について監督する役割を有していると考えられますから、理事会にあらかじめ提案された議案に拘束されず、その監督権を臨機応変に行使することもその権限内のことであると考えることができそうです。

6、以上の次第で、私としては、定款で理事の選任・解任が理事会の決議事項とされている場合、理事の解任があらかじめ理事会の議案として通知されていなくても、動議の形でこれが提案され議決されることは違法ではないと考えます。(但し、違法であるとの解釈もあり得ると思います。現時点ではこれについての判例はありません。)

7、ただ、上記名古屋地裁の判決も、「本件において、一部の取締役を排除し、反論の機会を与えないことなど濫用的な意図のもとに殊更取締役招集通知に記載しなかった等の事情を認めるに足りる証拠はないから、原告の定款違反及び取締役会規定違反を理由とする本件取締役会決議無効の主張は採用することができない。」と述べているように、
 事情によっては、このような解任の仕方は違法であると判断される場合もあり得ると思います。

                  弁護士 浅野晋
Re: 動議について 投稿者:ココ 投稿日:2009/05/24(Sun) 19:14:21 No.8583
浅野様
詳しい回答をどうもありがとうございました。
以前にも同じような質問があったことは、見落としていました。
2度も説明させて申し訳なく思っておりますが、本当に参考になりました。
専門家でなければわからないことがたくさんあり、また専門家の方の間でもいろいろな意見があり得るということもわかりました。
あらためてNPOというのは、定款や理事会でどうにでもなり得る可能性があり、それゆえにお互いの誠意や信頼関係、この会への思いがひとつにならなければならないのだと強く感じました。
新たな気持ちで、よりよい方向に進める解決方法を探っていきたいと思います。
感謝しております。

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