認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
nakano 投稿日:2009/07/29(Wed) 21:13:14
No.8774
お世話になります。
当法人の所在する某県では、NPO法人の認証権限を次々に市町村長に委譲しています。
今回定款の変更の認証を市に申請したところ、市の担当者より「この法人は・・・○○県知事の認証を得て、・・・」等の条文の「県知事」という部分を「市長」と変更する定款変更認証申請を併せて行って欲しいと言われました。
こちらとしては行政の都合で権限委譲されたのであるから、定款変更をせずとも当然に「県知事」は「市長」と読み替えされるものと考えていましたので、その法的根拠を尋ねたところ「根拠は不明だが、市内の法人にはお願いしている」との返事でした。
しかし総会で取り上げていない議題をあたかも決議したかのように議事録を書き換えることは許されませんし、臨時総会を開くことも現実的ではありません。このような場合に法人には定款を変更する義務があるのでしょうか?
Re: 認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
ととと 投稿日:2009/08/03(Mon) 02:44:50
No.8777
こんにちは、
認証が市長によりなされるのであれば、やはり定款の「・・・県知事の認証を得て・・・」という記述は改めるべきと思います。記載内容が事実と異なっていますので。(附則で、その当時の認証が県知事によりなされたことについての記述であれば、その附則はそのままとすべきですが)
「法的根拠」についてどのようなレベルの説明を求めておられるか分かりませんが、「所轄庁」が変わってしまった今となっては、定款を実際と異なる状態にしておくことは、法人(会員)にとってメリットがあるとは思えません。県や市の対応にご不満があるように思われますが、それよりも円滑な法人運営のためを考えられてはどうかと思います。
「所轄庁」自体の法令への記載は、市の特定非営利活動促進法施行条例、施行規則あるいは施行規則細則などに書かれていると思います。
実務的な対策としては、市の担当者には、「県知事」という部分を「市長」と変更する定款変更については次回の総会で決議してその後に定款変更認証申請を出すことを伝えて、今回は当初予定していた部分だけの変更を申請してはどうかと思います。
また、その際には「この法人は・・・○○市長の認証を得て、・・・」とはせず、「この法人は所轄庁の認証を得て、・・・」とすると、今後、所轄庁の変更があってもその部分は変更しなくて済むと思います。
Re: 認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
nakano 投稿日:2009/08/03(Mon) 20:03:58
No.8781
丁寧な回答有難うございます。
現実的な対応としては仰るとおり来年の総会で定款変更の決議をするということでしょうね。
とととさんは、認証権限の委譲によって「所轄庁」が県知事から市長へ替わったとお考えのようですね。
その件について県の担当者が内閣府に問い合わせたところ内閣府は、「NPO法の文言が改正されていないので権限委譲が行われても所轄庁は依然として知事である」という解釈だそうで、内閣府と県の法解釈が矛盾するものになっております。
認証権限委譲によって「所轄庁」が替わるのか否かこの点についてどなたか解説いただけないでしょうか。
Re: 認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
ととと 投稿日:2009/08/04(Tue) 13:03:41
No.8782
nakano 様
実は私は、市に権限委譲されても、事務手続きが移るだけで所轄庁は都道府県のままだと思っていました。今回の質問を目にして権限委譲がされている県や市のホームページ、条例、規則などを見て、「所轄庁が市長になるんだ!?」と少し驚きました。
かと言って、市や県がNPO法に反することをするとは思えませんし・・・私も権限委譲について識者の方のコメントを待ちたいと思います。
NPO法とは別に、地方分権を推進する法令などにより所轄庁の変更が認められているかもしれませんし、法定受託事務/自治事務の違いや政令指定都市/それ以外の都市でも違いがあるかもしれませんし。
Re: 認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2009/08/06(Thu) 19:24:14
No.8783
nakano さん
1、特定非営利活動促進法は、都道府県知事を「所轄庁」として、NPO法人の認証その他の事務を担当させていますが、この事務は地方自治法第2条⑧項の「自治事務」に該当します。
2、そして、地方自治法第252条の17の2は、「都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。」と定めております。
ご質問の県知事の「所轄庁」としての「権限委譲」というのは、この地方自治法 第252条の17の2の定めに基づいております。
3、「所轄庁」としての県知事の権限が市町村に委譲された場合、地方自治法第252条の17の2の第1項に「この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。」と定められておりますので、NPO法人の認証、監督、その他の特定非営利活動促進法に定める県知事の事務の全てが「当該市町村の長が管理し及び執行する」ことになりますし、また、当該の「事務について規定する法令、条例又は規則中都道府県に関する規定は、当該事務の範囲内において、当該市町村に関する規定として当該市町村に適用があるものとする。」(同法252条の17の3の第1項)と定められていますので、全ての事務処理を市長村長が行うことになりますので、あたかも「所轄庁」が「当該市町村の長」となったかのように思われます。
4、しかし、「当該市町村の長」はその事務を「管理し及び執行する」だけであり、 「所轄庁」が「当該市町村の長」に替わるわけではありません。「権限の委譲」が なされたとしても、「所轄庁」は依然として都道府県知事のままです。
5、このため、地方自治法252条の17の4は、「都道府県知事は、第252条の17の2第1項の条例の定めるところにより市町村が処理することとされた事務のうち自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該市町村に対し、第245条の5第2項に規定する各大臣の指示がない場合であつても、同条第3項の規定により、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。」としています。
つまり、委譲した権限を市町村長がちゃんと行使していないときには、都道府県知事は、その是正勧告ができるわけです。
このことは、都道府県知事が依然として「所轄庁」であることを示しています。
6、なお、ご質問の定款変更の要否ですが、読替規定がなくても条理上読み替えるの が当然ですから、必ずしもわざわざ定款変更をする必要はないと考えます。
ただ、将来的には、「ついでのときに」その旨の定款変更をしたらいかがでしょ うか。
その場合、「ととと」さんの言うように、「この法人は・・・○○市長の認証を得て、・・・」とはせず、「この法人は所轄庁の認証を得て、・・・」とすると、今後、所轄庁の変更があってもその部分は変更しなくて済むわけです。
なお、ご参考までに、権限委譲に関する地方自治法の定めを、コピペしておきます。
(条例による事務処理の特例)
第252条の17の2 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
2 前項の条例(同項の規定により都道府県の規則に基づく事務を市町村が処理することとする場合で、同項の条例の定めるところにより、規則に委任して当該事務の範囲を定めるときは、当該規則を含む。以下本節において同じ。)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならない。
3 市町村の長は、その議会の議決を経て、都道府県知事に対し、第1項の規定によりその権限に属する事務の一部を当該市町村が処理することとするよう要請することができる。
4 前項の規定による要請があつたときは、都道府県知事は、速やかに、当該市町村の長と協議しなければならない。
(条例による事務処理の特例の効果)
第252条の17の3 前条第1項の条例の定めるところにより、都道府県知事の権限に属する事務の一部を市町村が処理する場合においては、当該条例の定めるところにより市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則中都道府県に関する規定は、当該事務の範囲内において、当該市町村に関する規定として当該市町村に適用があるものとする。
2 前項の規定により市町村に適用があるものとされる法令の規定により国の行政機関が市町村に対して行うものとなる助言等、資料の提出の要求等又は是正の要求等は、都道府県知事を通じて行うことができるものとする。
3 第1項の規定により市町村に適用があるものとされる法令の規定により市町村が国の行政機関と行うものとなる協議は、都道府県知事を通じて行うものとし、当該法令の規定により国の行政機関が市町村に対して行うものとなる許認可等に係る申請等は、都道府県知事を経由して行うものとする。
(是正の要求等の特則)
第252条の17の4 都道府県知事は、第252条の17の2第1項の条例の定めるところにより市町村が処理することとされた事務のうち自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該市町村に対し、第245条の5第2項に規定する各大臣の指示がない場合であつても、同条第3項の規定により、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。
(以下略)
Re: 認証権限の委譲に伴う定款変更の是否 投稿者:
nakano 投稿日:2009/08/09(Sun) 15:11:13
No.8784
浅野先生
丁寧なる解説有難うございます。
問題を考える場合には、根拠となる法令を追いかけていく根気を必要としますね。今回はとても勉強になりました。