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NPO法の立法趣旨について 投稿者:福原 投稿日:2009/09/21(Mon) 21:36:47 No.8837
お世話になります。
現在、NPO法人に対し、未払残業代の支払を求め裁判で争っている(本人訴訟)者です。
「なんでも質問箱」への投稿は初めてですが、以前から、過去の投稿を拝見して勉強させていただいております。シーズの皆様、ありがとうございます。
(いわゆる「法人成り」の形で法人格を取得したNPO法人について、その法人成立以前の債務の承継が主な争点となっております。2006年2月『法人成立前の理事会について』の浅野先生の回答他、参考にさせていただいております。)

さて、NPO法の立法趣旨について質問させていただきます。

NPO法の立法趣旨について、相手方は、
特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という。)は、自発的・自立的な市民活動を推進するために、市民活動団体に法人格を与えて社会的信用を高めることを目的としており、一定の要件を充たす市民活動団体に限って設立を認証することとしている。すなわち、それまで、市民活動団体だけでなく人格のない社団その他の団体が無秩序に存在していたので、その中から一定の要件を充たす市民活動団体に限って法人格を与えて市民活動を推進しようとするものである。そうとすれば、設立認証を受けた特定非営利活動法人がその母体となった団体の債務を承継するなどということは、どのような理由を付けても、NPO法の立法趣旨に反するものである。

と主張し、法人成り以前の権利能力なき社団の債務を承継しないとします。

私は、140国会の内閣委員会議録で、市民活動促進法案の審議の経過を読む限り、NPO法は、相手方主張のような権威主義的な性格のものではないととらえています。


そこで質問なのですが、NPO法の立法趣旨として、
 1.「法人格の付与」は、市民活動団体を選択することを意図していたのか。
 2. 設立認証は、その債務を承継させない、という意図を含むものなのか。
 3. 全般的に、NPO法の立法趣旨は、相手方主張のようなものか。
を教えていただきたく、投稿いたします。

相手方代理人が、裁判官を退職された後、現在、法科大学院の教授をされている先生なので、立法趣旨としては、相手方主張のようなことなのかと、心配しております。
(係争中の案件ではありますが、一般論でお答えいただければ幸いに存じます。)
Re: NPO法の立法趣旨について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2009/09/23(Wed) 18:50:16 No.8838
福原 さん



 1.「法人格の付与」は、市民活動団体を選択することを意図していたのか。
   ↓
「市民活動団体を選択」という言葉の趣旨がよく分かりませんが、NPO法は、「特定非営利活動」を行う任意団体が一定の要件を備えている場合に、「法人格」という資格が取得できるようにして、特定非営利活動の健全な発展を促進し、公益の発展の増進に寄与するのが目的です。


2. 設立認証は、その債務を承継させない、という意図を含むものなのか。
  ↓
 設立認証は、当該団体が、NPO法に定める要件を備えているかどうかを確認するだけの行為であり、当該団体の「債務を承継させない」という意図を含むものではありません。

 3. 全般的に、NPO法の立法趣旨は、相手方主張のようなものか。
  ↓
 相手方の立論は、文中の「そうだとすれば」という文言の前の理由付けの部分と、その文言の後ろの結論部分とがつながりません。 つまり、前の部分は、後ろの結論部分の理由付けとなっていません。かなりお粗末な議論です。

 「法人成り」というのは、権利義務の主体としての地位はそのままで、「法人格」という法律上の資格を取得するものですから、法人格を取得する前の任意団体(権利能力なき社団)のときの権利(資産)や義務(債務)、契約関係をそのまま当然に承継します。

 2006年2月23日の回答であげた判例を参考にしてみてください。

                      弁護士 浅野晋
 
 
Re: NPO法の立法趣旨について 投稿者:福原 投稿日:2009/09/23(Wed) 19:34:36 No.8840
弁護士 浅野晋 先生

早速のご回答ありがとうございます。

私なりに、相手方の主張の趣旨を
1.「NPO法人は、行政庁が市民活動団体を選択したものである。」
2.「「設立認証」はいわばお墨付きであり、NPO法人は特権的なものである。」
3.「特権的なNPO法人が債務を承継するはずがない。」
というようなものであると想像して質問させていただいたため、「市民活動団体を選択」という変な言葉となってしまいました。

ともかく、浅野先生のご回答で、NPO法の立法趣旨・設立認証の趣旨についての疑問が氷解し、法人格が道具に過ぎないことを改めて理解できました。

「法人成り」について、ご教示いただいた判例で、再度勉強いたします。
ありがとうございました。

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