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社員・理事・監事の責任の範囲について 投稿者:真島 千歳 投稿日:2002/03/03(Sun) 15:51:00 No.908
NPO立ち上げの準備中です
発起人会を開きましたが、社員・理事・監事になるとどこまで責任がくるのかと言う質問が
多く、結局賛助会員ならやります。という方がほとんどです。過去の質問も見ましたがいまひとつ解りません。
たとえば理事や監事が会の金品を持ち逃げした場合、借り入れ金が返済できなかった場合などは他の理事や社員が返済しなければならないのでしょうか?
Re: 社員・理事・監事の責任の範囲について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2002/03/07(Thu) 14:41:00 No.909
真島さん、

ご投稿ありがとうございます。

まず、NPO法人が借入金の返済ができなくなった時のことをお答えいたします。
真島さんの法人が、その法人の目的の範囲内で借金をしてその返済ができなくなっ
た時、理事、監事、社員が責任を負ってかわりに返済しなければならない、という
ことは原則的にはありません。

NPO法人が経済的に破綻して支払い不能の状態になった時は、破産手続きによっ
て破産宣告を受け、破産管財人による清算業務を受けることになります。
この場合、理事、監事、社員が個人として負債を背負いこむ、ということはありま
せん。

ただし、前提となるのは、その法人が団体の定款に書かれた「目的」の範囲内で活
動して破産した場合です。もし、定款にも定めがなく、総会などでも決議されなか
った事柄において負債を負った場合は、法人ではなく、その執行に関係した会員、
理事、その他関係者が連帯して賠償責任を負うことになります。
(NPO法の準用法文である民法第43条、44条をご参照ください)

また、たとえ総会で決議された事項だとしても、NPO法人の目的外の決議(例え
ば環境保護のNPO法人がパチンコ店を経営するために借金をすることを決めたよ
うな場合)によって借り入れて、その借金の返済をできなくなったような場合、そ
の総会に出席して賛成した社員の責任も問われることがあります。

加えて、先に目的の範囲内であれば、理事個人が負債の返済義務を負うことはない
と書きましたが、一方で民法644条は、「(理事は)受任者として『善良な管理
者の注意』義務をもって、その職務を遂行する義務を負う(民法644条)。」と定め
ています。
つまり、理事は、法人が行う活動における過失や事故などに対して、通常期待され
ている程度の抽象的・一般的注意義務を要求されているのです。このことから、定
款に書かれた「目的」内の活動においても、事故などが発生した場合で、訴訟がな
されたような時は、理事は責任を問われる可能性がない訳ではありません。例えば、
最近、医療法人内で起きた医療ミスが裁判で争われるというケースが増えています。
医療法人内で医療を行うのは目的に合った行為ですが、医療法人だけではなく、院
長の責任が裁判で問われる、ということもあるようです。このように、法人になっ
ていれば、理事個人の責任は全く問われない、ということでもありません。

理事や監事が金品を持ち逃げしたような場合は、NPO法人は被害者の立場ですが、
監事や他の理事にもそれを止めることができなかったという理由で、賠償を求めら
れるということはありえると思います。NPO法人ではありませんが、最近の例で
は、チリ人の妻に横領した14臆円のうち10億円を送金した青森県住宅供給公社
の職員の事件があります。新聞記事によると、現在の公社の理事長が、その事件発
生当事の役職員(監事含む)22人に対して、管理上の過失があったとして9億円
の賠償を求めて訴訟を起こす方針とのことです。

要するに、NPO法人は、その団体自体が法で「人」として認められていますから、
基本的には、理事、監事、社員の個人が借金返済などの責任はないのですが、裁判
などになれば、さまざまな要素で、必ずしも責任をすべて免れえるものではないと
いうことです。

役員には、こうしたことも分かったうえで、NPO法人を代表していく、という気
概のある方になってほしいものです。

シーズ事務局・轟木 洋子

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