English Page
役員数に幅を持たせている場合の役員定数の考え方について 投稿者:紫陽花 投稿日:2010/04/22(Thu) 10:00:45 No.9223
あるNPOの事務局を担っている者です。役員の補充の要否について、分からないことがあり、ご相談させてください。

この度、役員が任期満了に伴い、複数人辞める意を確認しています。当法人は、定款に役員の定数を「理事 6人以上12人以内」「監事 1人以上2人以内」と定めています。
同じく定款に、「理事または監事は、その定数の3分の1が欠けた時は遅滞なくこれを補充しなければならない」と書いています。

現在、7人の役員がおり、うち3名が今期限りで退任を予定しています。
この場合、役員定数を12人で計算すると、3名が退任して場合9人が必要ということになり、補充が必要となると思います。他方、定数を6で計算した場合、3名はクリアできているので補充は必要ないように思います。

私どもの法人のように、役員の数を「●人以上●人以下」のように幅を持たせて設定している場合、「定数の3分の1欠けた時」という場合の定数は、どの数を基準に判断をすればよろしいのでしょうか?

初歩的なことで恐縮ですが、何卒ご教示くださいますよう、お願いします。

紫陽花
Re: 役員数に幅を持たせている場合の役員定数の考え方について 投稿者:名無しさん 投稿日:2010/04/23(Fri) 15:55:51 No.9227
下限の1/3です。下限とは●人以上の数字です。
Re: 役員数に幅を持たせている場合の役員定数の考え方について 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2011/03/17(Thu) 19:34:56 No.9724
紫陽花 さん

 最近同じ質問を受けましたので、時機を失してはいますがお答え

1、NPO方15条は、NPO法人の役員について「理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。」と定めており、他方同法22条は「理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、遅滞なくこれを補充しなければならない。」と定めています。
 例えば、定款で理事の人数が7人と定められているときは、この「7人」というのが理事の「定数」ということになりますから、その定数の3分の1というのは2.333……人となります。
 
2、従って、2人が欠けても「3分の1を超え」てはいませんから欠員補充をする必要はありませんが、3人が欠けた場合は「3分の1を超え」てしまいますから欠員を補充する必要があることになります。
 
3、それでは、定款で定められた理事の人数が「7人以上12人以下」となっている場合に、当該年度当初に在任中の理事と新たに選任された理事の総数が例えば10人だったときに、いったい「定数」というのは7人なのだろうか、10人なのだろうか、12人なのだろうかという問題が生じます。
 
4、これに関する学説や直接の判例は見当たりません。
この問題は、理事の最低数や欠員補充について法律で定めるのはどうしてか、その趣旨から考える必要があります。

5、NPO法人の理事は、定款に特別の定めがない場合は、当該NPO法人の業務について「理事の過半数をもって決する」権限と職責を持っています。すなわち、NPO法は、様々な見解を有するはずの複数の理事が、あるいは議論をしたり、考えをすりあわせたりして、最終的には多数決によって業務を決定することがNPO法人の運営に適していると考えているわけです。
 その場合、理事の数があまり少数ですと、このような制度趣旨に合致しないことになります。
 このためNPO法は、理事の数を「3人以上」とし、かつ、一定割合の理事が欠けたときの補充について定めているわけです。
 
6、ところで、当該法人の事業内容、事業規模等によって必要とあされる理事の数が異なります。しかも、年度によって、事業内容、事業規模等も変化しますから、必要とされる理事の数も年度毎に変わることもあります。
 また、理事の適任者がどれだけいるかという人的資源の問題もあります。
 そこでNPO法人の中には、定款において理事の数を確定数ではなく「○人以上○人以下」というような決め方をしている場合があるわけです。
 
7、この場合、役員の選任は、その選任の際に当該理事が職務を果たす年度において何人の理事が必要かということを勘案して、上記の人数の範囲内で具体的な人数を決めることになります。
 NPO法22条の欠員補充の定めが「その定数の3分の1以上」というように割合で定められているのは、欠けた理事の数が当初必要とされていた理事数を大きく割り込まないようにするため、「その定数の3分の1以上」という決め方をしたものと解されます。

8、 そうすると、NPO法22条にいう「定数」というのは、「当該年度当初に在任中の理事と新たに選任された理事の総数」が、そのNPO法人で当該年度に必要とされた理事の数ですから、これを「定数」と考えるのが適切であると解されます。
 従って、上述しました、「定款で定められた理事の人数が『7人以上12人以下』となっている場合に、当該年度当初に在任中の理事と新たに選任された理事の総数が例えば10人だった」という場合は、10人を定数と考えるということになります。
 
9、私は以上のように考えるのですが、定款で定められた理事の人数が「7人以上12人以下」という場合に、「定数」をこの人数の幅の最低数である「7人」とする考え方もあるようです。しかし、7人から12人という人数の幅の中で、どうして最低数の「7人」を「定数」とするのか、その理由がわかりません。

10、なお、事案は異なりますが、取締役会の定足数については次のように解されています。
 定款で例えば「7人以上12人以下」と定められている場合に、実際の取締役数が9人だったとします。この場合に、取締役会の定足数を算定する基準として、「その最低限をもって定足数を算定するのではなく、あくまでも現存する取締役の員数を基準に算定するとととなります。」(「実務相談株式会社法」中巻1074頁)いたします。

11、なお、紫陽花さんのケースでは、現在数7名の理事のうち3名が退任するとなると、理事の数が4名になってしまいますので、定款の「6名以上」という定めに反することになります。すなわち、選任する理事の数と、そのまま任期が残っている理事の数の合計が6人以上になるように、新任の理事の数をしなければなりません。

        弁護士 浅野晋

- WebForum -