日本ウミガメ協議会 くちみけんいちろうさん、
ご投稿ありがとうございます。
ご指摘の制度は、「中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の送出のための
雇用管理の改善の促進に関する法律(以下、中小労働確保法)」に基づいて作られている
制度で、ご指摘の通り、NPO法人は適用の対象外になっています。
この法律の適用対象は、中小企業及び企業組合、協業組合、事業協同組合などの共益団体
で、組合の場合には中小企業が構成している組合であることが条件です。中小労働確保法
に対応するような、公益団体に対して広く適用されうる制度は、現在のところありません。
雇用・能力開発機構本部に確認したところ、NPO法人からこの制度の利用に関する問い合
わせは多く、NPO法人が新規雇用の確保に大きな役割を果たすであろうという期待も大き
いが、法文内で対象を規定している以上、現在のところNPO法人では無理と答えるしかな
いということでした。
「中小企業」と対象が規定されている法律は、中小企業庁が施策を運用しており、中小企
業庁の「中小企業」概念の中にNPOが入っていないため、中小企業に対する施策の全般が
NPOは利用できない制度となってしまっているわけですが、同じように労働の安定を目的
とした法律でも、厚生労働省管轄の法律に規定された制度であれば、広く労働者全体に適
用される制度であり、当然NPOでも利用できます。
雇用・能力開発機構が運営している事業の中には、中小企業庁が監督責任を負う事業も、
厚生労働省が監督責任を負う事業もあり、例えば同じ雇用・能力開発機構が運営している
職業能力開発促進法に基づく事業は、NPO法人でも利用できます。
雇用・能力開発機構のホームページ(
http://www.ehdo.go.jp/)上には、様々な助成
金、給付金が紹介されていますが、制度の頭に「中小企業」とついていれば、中小労働確
保法に基づく制度の可能性が高く、それ以外の制度であればNPO法人でも利用できる可能
性が高くなります。
もし、雇用・能力開発機構に制度利用を問い合わせる場合は、これらの点をふまえて、一
つずつの制度についてNPOに適用されうるかを確認する必要があります。というのも、こ
のような縦割り行政の弊害から、上部組織が異なる違う部署の制度情報は、別の部署の担
当者にはわからないからです。
もちろん、基本的なことですが、雇用・能力開発機構の制度は労働保険の適用事業所でな
ければ利用できません。また、事業主が利用できる制度はすべて「労働保険の過去2年以
上の滞納がないこと」が条件となっていることも重ねてご注意ください。
くちみさんのご質問である、「NPOが利用できる、新規雇用に対する制度」をこの条件か
ら調べてみますと、新規雇用に特化したものはありませんが、「地域人材高度化能力開発
助成金」「情報関連人材育成事業派遣奨励金」「キャリア形成促進助成金」などのキャリ
ア形成のための助成制度は利用できるはずです。そのほかにも、事業内容によっては、労
働環境改善のための助成制度はいくつかあります。
これらの制度は、事業所ならどこでも利用できるというわけではなく、制度ごとに様々な
条件が課せられていることがほとんどですので、ご注意ください。
余談ですが、個人事業主なら信用保証を受けられる特殊法人である信用保証協会は、中小
企業庁の法律に基づいて設置されているため、NPO法人は信用保証を受けられません。そ
のため、NPO法人にしたことで今まで受けていた信用保証が受けられなくなり、新たな融
資が困難になっているNPO法人が出てきています。制度が現実についていけていない典型
的な例で、大変問題を感じています。
それでは、またご質問がありましたら、お寄せください。
シーズ事務局・鮎川葉子