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NPO法人における理事の責務について。 投稿者:みらい 投稿日:2010/09/18(Sat) 19:19:51 No.9477
NPO法人の理事になった場合、何か金銭的な責任を負うことがあるのでしょうか?また、法人が訴訟などに巻き込まれた場合の理事の責任範囲を教えてください。
Re: NPO法人における理事の責務について。 投稿者:弁護士 浅野晋 投稿日:2010/10/03(Sun) 11:39:56 No.9496
みらい さん

 以下は、NPO法人運営講座の際のレジメですが、ご質問の点について書いていますので、ご覧下さい。

                    弁護士 浅野晋

【レジメの抜粋】

七、役員の責任・義務

1、役員の責任
  ①対内的責任(善良な管理者としての責任)
  ・役員は、当該法人から法人の理事としての業務をすることを「委任」され、「就任承諾」によってこれを受任したことになる。
・そうすると、
    →「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」(民法644条)
         ・「委任の本旨」とは=委任の目的に適合するよう事務を処理すること。
         ・「善良な管理者の注意」とは=その地位・立場にある者が通常なすべき注意の程度を指す。つまり、委任というものの信任関係から期待される誠実な受任者のなすべき注意をいう。
    ・「善良な管理者の注意」は、「自己のためにする注意」より程度が高い。
・この「善良な管理者の注意」義務に反した場合→損害賠償義務が生ずることがある。
・役員は「そんなこと知りませんでした。」と言って、責任を逃れることができるか?

②対外的責任
・役員の第三者に対する対外的責任について、NPO法には直接の定めはない。
・しかし、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第117条1項に次の定めがあり、NPO法ではこの条文は準用されてはいないが、NPO法人の場合も解釈上同様であると考えられる。
  「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第117条1項(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
       「役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。」

2、非常勤役員の責任
非常勤役員の場合、責任が軽減されるのか?

3、役員の法令上の義務
・NPO法の「罰則」の定めを見ると、役員が何をしなければならないかが分かる。
    →NPO法47条、48条に、義務違反をした場合の罰則の定めがある。
    →(資料1)《特定非営利活動促進法上の役員の義務と罰則》参照
・「罰金」と「過料」の違い
→・「罰金」は、刑事法上の「刑罰」の一種。従って、「前科」になってしまう。
・「過料」は、法が定める登記や届出などをしなかったことにより、行政上の秩序を乱したということから、課せられる行政上の金銭罰で、前科とはならない。
・科(課)せられるのは役員個人であって、当該NPO法人ではない。(つまり、個人で負担しなければならない。)
→実際にはどうか
 
4、名前だけの理事となると……困ったことがおきることも
・第三者からの損害賠償請求の対象に?
・辞任しても,登記が抹消されない?
→・代表者が行方不明で,登記できない。
       ・理事が3名しかいないので,辞任の登記ができない
・NPO法違反(例えば事業報告書等の不提出など)で、20万円以下の過料?


《《《 特定非営利活動促進法上の役員の義務と罰則 》》》

1、登記する義務
・「第7条  特定非営利活動法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。」
→この義務を怠った理事、清算人は20万円以下の過料

2、財産目録の作成・備置義務
・「14条  特定非営利活動法人は、成立の時に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事       務所に備え置かなければならない。」
→第14条の規定に違反して、財産目録を備え置かず、又はこれに記載すべき事項を記        載せず、若しくは不実の記載をしたとき、理事は20万円以下の過料

3、役員の氏名、住所等の変更、「軽微な事項に係る定款変更」の場合の届出義務
・「第23条  特定非営利活動法人は、その役員の氏名又は住所若しくは居所に変更があった          ときは、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。  ・第25条6項 特定非営利活動法人は、軽微な事項に係る定款の変更をしたときは、遅滞な          くその旨を所轄庁に届け出なければならない。」
→第23条第1項又は第25条第6項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出を      したとき、理事又は清算人は20万円以下の過料

4、事業報告書等の備置義務
・「第28条(事業報告書等の備置き等及び閲覧)  特定非営利活動法人は、毎事業年度初めの三月以内に、内閣府令で定めるところにより、前事業年度の事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書(次項、次条及び第43条第1項において「事業報告書等」という。)並びに役員名簿(前事業年度において役員であったことがある者全員の氏名及び住所又は居所並びにこれらの者についての前事業年度における報酬の有無を記載した名簿をいう。)並びに社員のうち十人以上の者の氏名(法人にあっては、その名称及び代表者の氏名)及び住所又は居所を記載した書面(次項、次条及び第43条第1項において「役員名簿等」という。)を作成し、これらを、翌々事業年度の末日までの間、主たる事務所に備え置かなければならない。 」
→第28条第1項の規定に違反して、書類を備え置かず、又はこれに記載すべき事項を       記載せず、若しくは不実の記載をしたとき、理事又は清算人は20万円以下の過料

6、事業報告書等の提出義務
・「第29条 (事業報告書等の提出及び公開)  特定非営利活動法人は、内閣府令で定めるところにより、毎事業年度一回、事業報告書等、役員名簿等及び定款等(その記載事項に変更があった定款並びに当該変更に係る認証及び登記に関する書類の写しに限る。)を所轄庁に提出しなければならない。」
 →第29条第1項の規定に違反して、書類の提出を怠ったとき、理事は20万円以下の過料

7、破産手続き開始の申立義務
・「第31条の3第2項(特定非営利活動法人についての破産手続の開始)
       1 特定非営利活動法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、裁判所は、理事若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。
       2 前項に規定する場合には、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
第31条の12第1項(清算中の特定非営利活動法人についての破産手続の開始)
         清算中に特定非営利活動法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。」
→第31条の3第2項又は第31条の12第1項の規定に違反して、破産手続開始の申立      をしなかったとき、理事又は清算人は20万円以下の過料
8、公告する義務
・「第31条の10第1項(債権の申出の催告等) 清算人は、その就任の日から二月以内に、少なくとも三回の公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければならない。この場合において、その期間は、二月を下ることができない。
第31条の12第1項(清算中の特定非営利活動法人についての破産手続の開始)
        清算中に特定非営利活動法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を公告しなければならない。」
→第31条の10第1項又は第31条の12第1項の規定に違反して、公告をせず、又は      不正の公告をしたとき、理事又は清算人は20万円以下の過料

9、合併後の財産目録等の作成義務
・「35条1項 特定非営利活動法人は、前条第三項の認証があったときは、その認証の通知のあった日から二週間以内に、財産目録及び貸借対照表を作成し、次項の規定により債権者が異議を述べることができる期間が満了するまでの間、これをその主たる事務所に備え置かなければならない。」
→第35条第1項の規定に違反して、書類の作成をせず、又はこれに記載すべき事項を記載     せず、若しくは不実の記載をしたとき、理事は20万円以下の過料

10、合併の場合に債権者保護手続きをする義務
・「第35条2項 特定非営利活動法人は、前条第三項の認証があったときは、その認証の通知のあった日から二週間以内に、その債権者に対し、合併に異議があれば一定の期間内に述べるべきことを公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければならない。この場合において、その期間は、二月を下回ってはならない。
第36条2項 債権者が異議を述べたときは、特定非営利活動法人は、これに弁済し、若しくは相当の担保を供し、又はその債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社若しくは信託業務を営む金融機関に相当の財産を信託しなければならない。ただし、合併をしてもその債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。」
→第35条第2項又は第36条第2項の規定に違反したとき、理事は20万円以下の過料

11、報告、検査義務
・「第41条1項(報告及び検査)  所轄庁は、特定非営利活動法人が法令、法令に基づいてする行政庁の処分又は定款に違反する疑いがあると認められる相当な理由があるときは、当該特定非営利活動法人に対し、その業務若しくは財産の状況に関し報告をさせ、又はその職員に、当該特定非営利活動法人の事務所その他の施設に立ち入り、その業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」
→第41条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき理事または清算人は、20万円以下の過料

12、改善命令に従う義務
    ・「第42条 (改善命令) 所轄庁は、特定非営利活動法人が第12条第1項第2号、第3号又は第4号に規定する要件を欠くに至ったと認めるときその他法令、法令に基づいてする行政庁の処分若しくは定款に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、当該特定非営利活動法人に対し、期限を定めて、その改善のために必要な措置を採るべきことを命ずることができる。」
→第42条の規定による命令に違反した理事、監事又は清算人は、50万円以下の罰金

注:「罰金」は刑罰の一種なので前科になる。過料は行政罰なので前科にはならない。

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