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理事の責任について 投稿者:佐藤 投稿日:2000/06/01(Thu) 13:03:00 No.96
NPOには理事が必要だということですが、
理事をお願いしようとすると、”賛助会員なら・・・”
といわれてしまいます。
万が一、負債を抱えた場合、理事に責任がくるから、
というのが理由のようですが、実際どうなるのでしょう。

解散のときに債務超過であれば破産になると
思うのですが、それでも個人的に債務が降りかかる
ということはあるのですか。法人が破産となると、
破産法にもとづいて債務処理されると本で読んだ
気がするのですが・・・
Re: 理事の責任について 投稿者:シーズ事務局 轟木 投稿日:2000/06/02(Fri) 15:54:00 No.97
佐藤さん、はじめまして。ご投稿ありがとうございます。

佐藤さんの団体では、法人格は持っていらっしゃるでしょうか? 
ここでは、法人格を持っていらっしゃる場合と、そうでない場合に分けて、お答えします。

ます、法人になっていらっしゃる場合ですが、経済的に破綻して支払い不能の状態になった時は、
破産手続きによって破産宣告を受け、破産管財人による清算業務を受けることになります。
この場合、理事が個人として負債を背負いこむ、ということはありません。

ただし、前提となるのは、その法人が団体の定款に書かれた「目的」の範囲内で活動して破産し
た場合です。もし、定款にも定めがなく、総会などでも決議されなかった事柄において負債を負
った場合は、法人ではなく、その執行に関係した会員、理事、その他関係者が連帯して賠償責任
を負うことになります。
(NPO法の準用法文である民法第43条、44条をご参照ください)

また、「NPO法コンメンタール」(日本評論社発行)は理事の責任について、次のように述べ
ています。
「(理事は)受任者として『善良な管理者の注意』義務をもって、その職務を遂行する義務を負
う(民法644条)。理事が、この善管注意義務に違反して法人に損害を与えた場合は、賠償責任
を負う」

つまり、理事は、法人が行う活動における過失や事故などに対して、通常期待されている程度の
抽象的・一般的注意義務を要求されているのです。このことから、定款に書かれた「目的」内の
動においても、事故などが発生した場合には、理事は責任を問われる可能性が出てきます。

最近、医療法人内で起きた医療ミスが裁判で争われる、というニュースがありましたが、医療法
人内で医療を行うのは目的に合った行為ですが、医療法人だけではなく、院長の責任が裁判で問
われる、ということもある訳です。
このように、法人になっていれば、理事個人の責任は全く問われない、ということにはなりませ
ん。

次に、法人格を持っていらっしゃらない場合ですが、「法人格なき団体の実務」(新日本法規発
行)は、次のように述べています。

「法人格なき社団も一定の範囲において財産を有し、取引を行う等の経済活動をなし、権利の帰
属主体となり、民事訴訟法上の当事者となる能力を有し(民訴46条・58条)、債務名義によって
執行を受ける適格を有する。
したがって破産法上に明文の規定はないが、法人格なき社団が経済的に破綻し、支払い不能の状
態に陥った場合は破産手続きにより、破産宣告を受け、破産管財人による清算業務を受けること
ができると解される(破産108条、民訴46条)」

つまり、破産法上にははっきりとは書いてないけれども、任意団体が経済的に破綻して、支払不
能になった時は、法人と同じように破産手続きによって破産宣告を受けて、破産管財人による清
算業務を受けることができる、という訳です。

しかしながら、その債務名義が問題になってくると思います。もし、法人格がなくとも団体自体
が債務の名義になっていれば、上記のような破産手続きが可能ですが、そもそも法人格がないと、
契約が団体として結べない場合がよくあります。この時には、代表者や理事が名義人となって契
約をすることが多いようですから、破産した場合は、その名義人個人が負債を負うことになって
しまいます。

この点で、団体として契約の主体になれるのは、法人格の大きなメリットのひとつとなっていま
す。

どちらにしても、理事とは、団体の舵取りをし、財政の責任者でもある方ですので、それを理解
して、実質的に動いてくださる方にお願いするのが良いのではないでしょうか。

シーズ事務局・轟木 洋子
Re: 理事の責任について 投稿者:佐藤 投稿日:2000/06/03(Sat) 20:39:00 No.98
丁寧なお答え、ありがとうございます。

今はまだ、NPO化したい、という段階であり、
そのため理事をお願いするにあたり、相手に
債務の責任が来るとね・・・ということで理事に
なることをしぶられているため、お伺いしました。

 もう少し検討してみます。
Re: 理事の責任について 投稿者:333 投稿日:2003/11/10(Mon) 22:06:00 No.99
有限会社や株式会社と違って任意団体やNPO法人では理事(役員)の責任が
無限責任になると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?
Re: 理事の責任について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2004/09/20(Mon) 05:36:00 No.100
333さん

> 有限会社や株式会社と違って任意団体やNPO法人では理事(役員)の責任が
> 無限責任になると聞いたことがあるのですが、本当でしょうか?

No.120で轟木さんが答えられているように、個人名で契約すれば
そういう可能性もありますが、団体名で契約すれば原則として個
人に責任が及ぶことはありません。「原則として」というのは、明ら
かに団体名が個人の隠れ蓑になっているというような場合はやは
り個人の責任が追及されるからです。

        公認会計士・赤塚和俊
Re: 理事の責任について 投稿者:悩める理事 投稿日:2004/09/19(Sun) 19:01:00 No.101
緊急に教えてください!
一昨年に設立したNPO法人です。
もっぱら理事長と副理事長が事業にかかわり、他の理事(=会員8人)は、それぞれの信頼関係でお願いした方々です。
これまで理事長が会計を預かり総会も1度開催されました。
(理事長と会計を同一人物にしていたことについては、反省しています。)
監事(弁護士)も総会時の会計報告書に捺印を押しています。
(監事は、理事長と親しく、監査らしい監査もせずに印鑑を押したとの事)
しかし、最近になり理事長が法人名で別口座を複数開設し、法人名義の車を担保に
サラリーローンから借金をしていることが発覚しました。
理事長は、法人のためにお金が必要だったと言い逃れをしていますが、
そのような事実はなく、私的な借財と考えられます。
この他にも、多額の法人名義の負債が見つかりつつあります。
(総額1000万円にも及ぶところです)
理事長自身は、まだ、非を認めていませんが、
最近になり、法人も軌道に乗ってきたので辞任したいと申し出ています。
この事実を知っているのは、一部の理事だけであり、
近日中に臨時総会(=理事会)を開催し、これまでの経緯と今後の対応を協議したいと考えています。
なお、臨時総会には、現理事長は欠席すると言ってきています。

お尋ねは
1 このまま本人の辞表を受理した場合、理事長が行った法人名義の負債は、他の理事が負うことになるのか。
2 その場合、他の理事は、負債の件について一切相談もなされていないことから、
  このような負債は認められないという議決を行い(事後的になりますが)負債を免れることはできるのか?
3 また、辞表を受理せず、解任決議を行いたいと考えていますが、辞表の受理と解任決議の違いは何なのか?
  本人欠席の場合、改めて総会を開いて弁明の機会を与える必要があるのでしょうか?
  もし、いつまでも本人が出席しない場合、どうすればよいでしょうか?
  欠席裁判となれば、手続きに瑕疵があることになるのでしょうか?
4 背任で法人が理事長を訴えることができるのか?
5 もし、事が公に成れば、行政からの委託事業もできなくなるとも心配しています。上手く処理する方法はありませんか?
  (理事長が負債総額を弁済すればよいのでしょうが・・)
6 このような事態を理由としてNPO法人を解散することの是非について。

  以上、ご助言ください。
Re: 理事の責任について 投稿者:公認会計士・赤塚和俊 投稿日:2004/09/20(Mon) 07:57:00 No.102
悩める理事さん

> 1 このまま本人の辞表を受理した場合、理事長が行った法人名義の
>   負債は、他の理事が負うことになるのか。

個人保証をしていない限り、債務が個人に及ぶことはありません。

> 2 その場合、他の理事は、負債の件について一切相談もなされてい
>   ないことから、このような負債は認められないという議決を行い
>   (事後的になりますが)負債を免れることはできるのか?

理事個人に及ぶことはありませんが、債権者が理事長と共謀していない
限りは善意の第三者ですから、どのような議決をしても法人としての債務
を免れることはできません。

> 3 また、辞表を受理せず、解任決議を行いたいと考えていますが、辞
>   表の受理と解任決議の違いは何なのか?

仮に辞任にともなう権利(たとえば退職金など)があれば解任の場合には
その権利を失う等の違いがありますが、もともとそういう権利がないので
あれば、単に登記簿上の表記が異なるだけです。

>   本人欠席の場合、改めて総会を開いて弁明の機会を与える必要が
>   あるのでしょうか?
>   もし、いつまでも本人が出席しない場合、どうすればよいでしょうか?
>   欠席裁判となれば、手続きに瑕疵があることになるのでしょうか?

そもそも解任決議が可能かどうか自体が、定款の定めによります。もっと
も、社員総会で定款変更を行うことは可能ですので、同じ総会でまず定款
変更を行い、その後に解任することは可能と考えられます。弁明の機会を
与える必要かどうかも定款の規定によります。特にそういう権利をうたって
なければ本人が欠席していても解任は可能です。

> 4 背任で法人が理事長を訴えることができるのか?

事情によりますが、一般論としては可能です。

> 5 もし、事が公に成れば、行政からの委託事業もできなくなるとも
>   心配しています。上手く処理する方法はありませんか?
>   (理事長が負債総額を弁済すればよいのでしょうが・・)

これは行政がどう判断するかという問題です。一刻も早く正常化して事業
の遂行に支障のないことを納得してもらうしか方法はありません。下手に
隠し事はしない方が賢明です。

> 6 このような事態を理由としてNPO法人を解散することの是非について。

解散事由は法律及び定款の定めによりますが、その定めに従い社員総
会で議決すれば解散は可能です。是非をうんぬんするような問題ではなく
社員の総意はどうかという問題だと思います。

           公認会計士・赤塚和俊
Re: 理事の責任について 投稿者:悩める理事 投稿日:2004/09/20(Mon) 16:44:00 No.103
ご丁寧な回答ありがとうございます。
次に2点について、更にお尋ねします。

「弁明の機会」 についてですが、定款には、解任の場合、議決前に弁明の機会を与えなければならないとなっています。
この場合、先方の都合を聞かず、一方的に総会の日時を決めても構わないでしょうか?
「私に都合の悪い日時を指定し、弁明の機会を与えないつもりか!」と言われるのではないかと思います。
しかし、先方の都合ばかり聞いていても、きりがないとも思います。
また、出席しない場合、書面による弁明でも構わないでしょうか?


「法人の弁済」 についてですが、サラリーローンとの契約は、理事長が個人名で借入を行っており、
その連帯保証人に当法人がなっています。
このような契約(連帯保証)はそもそも有効なのでしょうか?
公私混同(理事長の代表権の悪用)であり、サラリーローンの会社は、善意の第三者と言えないように思えるのですが。
Re: 理事の責任について 投稿者:シーズ・轟木 洋子 投稿日:2004/09/23(Thu) 22:25:00 No.104
悩める理事さん、

お尋ねの件、シーズの運営委員で弁護士の浅野晋さんに聞いてみました。以下は、そ
の回答です。

------------------------------------------

1、弁明の機会について

 「弁明の機会」については、弁明する機会を与えればいいのであって、理事長がそ
の機会を使って現実に弁明するかどうかは関係ありません。弁明をしなくても、その
機会を与えていれば、弁明の機会を与えたことになります。
 
 しかし、「機会を与える」ということからすると、その期日については、一応は理
事長の都合を聞いた方がいいかと思いますが、わざわざ理事長が出席するのが困難で
あると分かっている日(例えば何かの公用や、個人的の用事であっても日程を動かす
ことが困難な冠婚葬祭の予定日など)にぶつけたのでないかぎり、法人側で一方的に
その日程を指定しても差し支えないと解されます。
 なお、定款では弁明の形態については定めがないようですから、書面による弁明で
も差し支えありません。

2、理事長がした法人の保証契約の有効性について

 特定非営利活動促進法第30条は、民法第57条を準用しています。この民法第5
7条は、「法人と理事との利益相反する事項については、理事は代理権を有せず。此
場合に於いては前条(※)の規定に依りて特別代理人を選任することを要す。」と定
めています。
 理事長の個人名での借入金について、当該NPO法人が保証人となることは、理事
長が弁済しないときには、保証人となったNPO法人が弁済しなければならないとい
うことですから、まさにこの「法人と理事との利益相反する事項」に該当します。従
って、理事長は当該NPO法人の代表者として保証契約書に記名捺印できません。こ
の場合、この条文にあるように特別代理人を裁判所に選任してもらうか、他の理事が
当該NPO法人の代表者として記名捺印する必要があります。
  従って、その理事長が保証契約書に記名捺印していたとしたら、その保証契約は
無効であり、NPO法人には何らの責任もありません。

------------------

以上です。
しかし、いずれにしてもサラキン業者との契約内容もはっきりわかりませんし、この
民法の条文だけをタテに問題が解決できるような性質の事柄なのかどうかも、わかり
ません。
対処方法などは、専門の第三者の弁護士の方などに相談するなどして、的確に対処す
る方が良いと思います。

※民法第56条(仮理事)
理事の欠けたる場合に於て遅滞の為め損害を生ずる虞あるときは裁判所は利害関係人
又は検察官の請求に因り仮理事を選任す

シーズ・轟木 洋子
Re: 理事の責任について 投稿者:悩める理事 投稿日:2004/10/10(Sun) 18:12:00 No.105
御礼が遅くなりました。
総会を開催(一度は、理事長欠席だったため、再度開催しました)し、理事長の解任を決議いたしました。
また、総会に理事長も出席の上、経理上の不明朗な点について弁明の機会を与え、
私的流用について本人が認め、全額返済することで一応の決着を行いました。
返済は、未だですが、今後の成り行きを見極めようと思います。
なお、理事長一人に全ての権限(法人印、会計処理)を任せていたことを反省しています。
法人運営の危機管理上、代表権と会計処理は明確に分けておくべきと思いました。
以上、他の法人の方々の参考になればと思い、ご報告します。

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