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就労支援事業の課税について 投稿者:税理士石本 投稿日:2011/04/07(Thu) 13:59:09 No.9771
はじままして税理士の石本です。
NPO法人の行う就労支援事業について以下のように考えるのですがいかがでしょうか?
ネット上の通説とは違うのですが、NPOや福祉を専門としない当職になにか事実の誤認等があるのでしょうか?
考えれば考える程わからなくなり本当に困っております。
長文になり申し訳ございませんが、何卒、ご指導の程よろしくお願いします。

 NPO法人の行う就労支援事業を34の収益事業のいずれかに該当するのかを検討するにあたり、就労支援事業の「事業の独立性」が非常に重要なファクターだと思います。
 「就労支援事業」は「作業所の運営」と一体あり、それ自体独立して存続することが不可能なものではないのでしょうか?作業所で実施する各事業、例えば「食料品の製造や事務の請負」などはそれぞれ「製造業、請負業」として独立しており、その事業以外の他の事業の存在に関係なく任意に開始や廃止をすることが可能であります。
 しかし「就労支援事業」は「作業所」がなければ存在しえないものではないのでしょうか?作業所で実施する各事業を全て廃止しても「就労支援事業」はそれ単独で事業として存続するのでしょうか?
 こういったことから「就労支援事業」は「作業所の各事業」と一体として34の収益事業のいずれかに該当するかを検討すべきと考えます。
 この「事業の独立性」以外の様々な理由で就労支援事業をそれ自体で「医療保健業」に該当するという考え方があるのは承知しておりますが、「事業の独立性」というのは就労支援事業がどんな事業かを考えるときの最重要なファクターではないでしょうか?
 そして、就労支援事業を作業所で行う各事業と一体として判断した場合には、その各事業は令5②に定める身体障害者等の割合で収益事業に含まれないとなるケースが一般的になるのではないでしょうか?

 次に、仮に就労支援事業を作業所の運営と「別々」に考えて、34の収益事業の検討をした場合においても、平成15年の支援費の法人税法の取扱の回答を類推適用し、医療保健業とするにはかなりの論理の飛躍を感じてしまいます。
 就労支援事業は自立支援法に定める障害福祉サービス事業のうちでも居宅介護、デイサービス、ショートステイなどと比べても医療保健面との関連性は極めて希薄であることは明らかでないでしょうか。
 また技芸教授業の限定列挙にも記載がありませんし、法人税基本通達15-1-29において再び請負業とされることもありません。
 さらに「利益配分をしない公益法人は原則法人税非課税」の例外として「営利企業との競合」の観点から34の収益事業を行う場合のみ「例外的」に法人税を課するという立法趣旨から考えても、上場企業を含めた多数の営利法人が手がけるビジネスである訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを医療保健業としたのと同じ考え方で、就労支援事業を医療保健業と判定するにはやはり無理があると考えます。
 なぜなら現状おいて、就労支援事業を行っているのは社会福祉法人が中心でNPO法人が少しあるくらいで、営利企業が行っているケースは非常に少ないのではないでしょうか。そもそも小規模通所授産施設から移行した就労支援事業が営利企業と競合するビジネスと考えるのは無理がないでしょうか?
 以上のことから就労支援事業に法人税が課税されるといことはありえないと思うのです。


Re: 就労支援事業の課税について 投稿者:公認会計士 岩永清滋 投稿日:2011/04/08(Fri) 11:30:32 No.9775
石本さん、岩永と申します。私の意見を少し述べされていただきます。
石本さんのご意見は、次の2つになるかと思います。
1.就労支援事業は作業所運営と一体として考えるべきもので、だとすると障害者従事割合により非課税である。
2.そもそも就労支援事業は医療保健業とは言えないから非課税である。
まず、1点目ですが、確かに作業所運営と一体ではありますが、障害者自立支援法の上では収入原資は明確に区分されています。つまり国保連からくるお金はあくまで就労支援事業の運営にあてるために限定されており、一方作業所の収入は必要経費を控除したのちは、すべて工賃として障害者に支払わなければならないとされています。この双方の会計は厳密にわけることを要求され、相互の融通は禁止されています。ですので税法の上でもこの二つを別々に考える必要があるのではないかと思っています。
つまり作業所の収支の方の会計は、石本さんがおっしゃる理由で非課税と考えていいと思いますが、就労支援事業部分は別の理由が必要ではないかと思います。
次に2点目ですが、これに関しては私も全く同感です。医療保健業との解釈は無理があると思っています。障害者自立支援法上の収入には、介護給付費(ヘルパーなど)と訓練等給付費(就労支援事業など)とが区分されています。私は今のところ、前者は医療保健業として課税事業、後者は該当しないので非課税という考え方で、対応しています。
もっともこの考え方は明文のものはなく、あくまで個人的意見ですので、確たるものではありません。
またご意見をお伺いしたく思います。
Re: 就労支援事業の課税について 投稿者:税理士石本 投稿日:2011/04/08(Fri) 18:48:36 No.9779
 岩永様ご丁寧なご回答誠にありがとうございました。

 まとめるとNPO法人の行う就労支援事業は作業所の事業と「一体」で判断するのは無理があったとしても、そもそも就労支援事業は「医療保健業」に該当しないので収益事業には含まれず法人税は非課税という考え方ですね。

 私も、就労支援事業と作業所の「お金」の流れに着目すると岩永様と同じ考え方になり、税法上は就労支援事業と作業所は別々に考える必要があるという結論になってしまいます。
 しかしどうしても、就労支援事業がそれ単独で存続しないという矛盾がちょっぴり残ります。単独で存続しないものがそれ自体で「事業」となりえるのでしょうか?

 私はこの矛盾は、従来の補助金?で運営されていた小規模通所授産施設を、障害者も「一般雇用が可能なはずだ」という理念のもとで、先に措置から契約への移行に成功した介護保険制度の例に倣った制度設計に「介護給付」といっしょくたに「訓練等給付」を無理やり押し込んだことが原因のような印象を持っています。(あくまで個人的感想ですが本音は理念だけでなく財政的動機もあったかもなんて思います。)

 いずれにしても、こういう問題を障害者制度の経緯や現状を知らない当局に理解してもらえるかということですかね。もちろん私自身もっと勉強する必要がありそうです。

追伸:私も岩永様と同様に、同じ障害福祉サービス事業のうちでも介護給付については「医療保健業」に該当すると思います。少なくとも平成15年の照会から類推することに違和感はありません。

 このような掲示板でNPO法人の運営上の疑問点への活発な意見交換がされていることに驚きました。大変参考になりました。ありがとうございました。

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