理事の人事異動に伴う途中辞任について 投稿者:
よっち 投稿日:2011/04/15(Fri) 13:50:24
No.9792
"ご教示ください。事務局員です。
早々に回答頂けると大変助かります。
↓
当団体の理事が所属会社の人事異動に伴い、理事辞任の申し出が2月にありました。後任も決まっており、交代したいとの事ですが、対応がとまっている状況です。
定款を確認してみると、解任は総会事項であるが辞任については
特に記載されておりません。
この場合、理事の辞任は決議事項ではなく報告事項となるのでしょうか?
また、途中辞任についての届出はいつまでにすべきものですか?
・所轄庁への年1回の届出でOK?
・登記変更は、いつのタイミングになりますか?期限は?
因みに、事務局としては、通常総会(5月下旬予定)後にまとめ て手続きしたいと考えておりますが問題ありますでしょうか?
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・2月上旬 途中辞任の申し出(後任あり)
・4月20日 理事会開催。この時に報告事項で辞任連絡
・5月18日 理事会開催。総会開催、総会資料について
承認貰う予定
・5月下旬 通常総会(後任の方を理事候補にあげて選任)
・6月上旬 変更登記の届出
所轄庁への届出
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当団体の定款(抜粋)です。
第4章 役員及び職員
(種別及び定数)
第13条 この法人に次の役員を置く。
(1)理 事 5人以上15人以内
(2)監 事 1人以上2人以内
2 理事のうち、1人を理事長とし、3人以内を副理事長とする。
(選任等)
第14条 理事及び監事は、総会において選任する。
2 理事長及び副理事長は、理事の互選とする。
3 役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは3親等以内の親族が1人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び3親等以内の親族が役員の総数の3分の1を越えて含まれることになってはならない。
4 監事は、理事又はこの法人の職員を兼ねることができない。
(職務)
第15条 理事長は、この法人を代表し、その業務を総理する。
2 副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故あるとき又は理事長が欠けたときは、理事長があらかじめ指名した順序によって、その職務を代行する。
3 理事は、理事会を構成し、この定款の定め及び理事会の議決に基づき、この法人の業務を執行する。
4 監事は次に掲げる職務を行う。
(1)理事の業務執行の状況を監査すること。
(2)この法人の財産の状況を監査すること。
(3)前2号の規程による監査の結果、この法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見した場合には、これを総会又は所轄庁に報告すること。
(4)前号の報告をするため必要がある場合には、総会を招集すること。
(5)理事の業務執行の状況又は、この法人の財産の状況について、理事に意見を述べ、若しくは理事会の招集を請求すること。
(任期)
第16条 役員の任期は、1年とし、決算終了後の総会終結時までとする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠のため、又は増員によって就任した役員の任期は、それぞれの前任者又は現任者の任期の残存期間とする。
3 役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない。
(欠員補充)
第17条 理事又は監事のうち、その定数の3分の1を超える者が欠けたときは、遅滞なくこれを補充しなければならない。
(解任)
第18条 役員が次の各号の一に該当するに至ったときには、総会の議決により、これを解任することができる。この場合、その役員に対し、議決する前に弁明の機会を与えなければならない。
(1) 心身の故障のため、職務の遂行に堪えないと認められるとき。
(2) 職務上の義務違反その他役員としてふさわしくない行為があったとき。
(報酬等)
第19条 役員は、その総数の3分の1以下の範囲内で報酬を受けることができる。
2 役員には、その職務を執行するために要した費用を弁償することができる。
3 前2項に関し必要な事項は、総会の議決を経て、理事長が別に定める。
(職員)
第20条 この法人に、事務局長その他の職員を置く。
2 事務局長その他の職員は、理事長が任免する。
3 事務局の組織及び運営に関する必要な事項は、理事会の議決を経て理事長が別に定める。
第5章 総会
(種別)
第21条 この法人の総会は、通常総会及び臨時総会の2種とする。
(構成)
第22条 総会は、正会員をもって構成する。
(権能)
第23条 総会は以下の事項について議決する。
(1) 定款の変更
(2) 解散
(3) 合併
(4) 事業計画及び収支予算並びにその変更
(5) 事業報告及び収支決算
(6) 役員の選任又は解任、職務及び報酬
(7) 入会金及び会費の額
(8) 借入金(その事業年度内の収入をもって償還する短期借入金を除く。第49条において同じ。)その他新たな義務の負担及び権利の放棄
(9) 事務局の組織及び運営
(10) その他運営に関する重要事項
以上、宜しくお願い致します。
"
Re: 理事の人事異動に伴う途中辞任について 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2011/04/16(Sat) 12:02:40
No.9795
よっち さん
理事と当該団体との関係は、民法上の委任関係ですから、理事は民法651条1項に基づき、いつでも辞任できます。理事会や総会の手続は必要とされません。(従って、決議事項ではなく、報告事項です。)
(委任の解除)
第651条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
辞任の時期は、辞任する旨の意思表示が当該団体に到達した時点となります。
従って、「理事辞任の申し出が2月にありました」とのことですので、この申し出が辞任したい旨の打診ではなく、辞任する旨の意思表示の場合は、すでに辞任していることになります。
所轄庁への役員名簿の提出は、NPO法29条1項に基づく事業年度毎の提出ですみます。
(事業報告書等の提出及び公開)
第二十九条 特定非営利活動法人は、内閣府令で定めるところにより、毎事業年度一回、事業報告書等、役員名簿等及び定款等(その記載事項に変更があった定款並びに当該変更に係る認証及び登記に関する書類の写しに限る。)を所轄庁に提出しなければならない。
辞任に伴う登記手続は、2週間以内にしなければならないことになっています。(組合等登記令第3条)
弁護士 浅野晋
届け出
Re: 理事の人事異動に伴う途中辞任について 投稿者:
よっち 投稿日:2011/04/17(Sun) 17:43:14
No.9801
早々なるご返信感謝いたします。
更に、ご質問です。
>辞任する旨の意思表示の場合は、すでに辞任していることになります。
>辞任に伴う登記手続は、2週間以内にしなければならないことになっています。(組合等登記令第3条)
上記からいくと、理事から辞任申出のあった日から2週間以内には登記変更するということでよろしいでしょうか?
今回の場合、これからの手続きになるのですが、届出遅延による罰金等が発生するということになるのでしょうか?発生するのであれば金額はおいくらぐらいですか?遅延に対して法務局へ相談する余地はあるものなのでしょうか?
また、今回、後任の方の就任については、通常総会での決議で選任ということにしています。
当団体定款第16条3項で
役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない
・・・とありますが、これはどう解釈したらいいのでしょうか?
委任関係でいつでも辞任できることになっていて既に辞任しているが、後任の就任までは、登記上理事ではなくても、理事としての権利義務をもって活動をお願い出来るものなのでしょうか????
すみません。混乱しています。
Re: 理事の人事異動に伴う途中辞任について 投稿者:
弁護士 浅野晋 投稿日:2011/04/18(Mon) 11:27:55
No.9803
よっち さん
1、組合等登記令には罰則はありませんが、特定非営利活動促進法第7条1項は「特定非営利活動法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。」と定め、同法第49条は、「第7条第1項の規定による政令に違反して、登記することを怠ったとき。」は「特定非営利活動法人の理事、監事又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。」と定めていますので、もしかすると「過料」が科せられる可能性があります。
2、ただ、過料を科するのは裁判所ですが、実際には、登記手続の過怠があったかどうかについて、裁判所は登記所からの通告がない限り分かりません。この通告は、必ずなされるというわけではありませんので、「“運が悪ければ”過料を科せられるかもしれない」という程度に考えておられたら良いように思います。
3、なお、「過料」というのは、金銭的な行政罰なので、刑罰ではありませんから、いわゆる「前科」にはなりません。これと異なり「罰金」は刑罰であり、罰金を科せられると「前科」になります。
4、ご質問のケースでは、登記の遅延について、登記所に相談する必要はありません。
5、次に、「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない」との定款の定めについて、どのように考えるかです。
そもそも、「役員は、辞任又は任期満了後においても、後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない。」との趣旨の定めは、特定非営利活動促進法にも民法にもありません。
6、役員と団体の関係は委任関係ですから、役員はその委任関係をいつでも解除(つまり辞任)することができます。(民法651条1項)
役員が辞任の意思表示をした場合、すぐにその効果が発生しますから(つまり役員ではなくなりますから)、役員でもないのに「後任者が就任するまでは、その職務を行わなければならない」とするのは、明らかに異例のことです。
7、これは恐らく、民法654条の、「委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者……は、委任者……が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。」と定めの場合を想定していると思われます。
8、 すなわち、辞任しまたは任期満了して役員の地位を喪失した元役員がその職務を行わなければならないのは、民法654条にいう「急迫の事情がある場合」に限ると解することができます。
9、従って、多数の役員がいて、そのうち1人が辞任したり任期満了によって退任しても特段の「急迫の事情」は生じない場合、当該の退任した役員が従来通り役員の職務を行う必要はありませんし、また既に役員ではないのですから役員の職務を行うこともできないということになります。
10、ご質問のケースは、このような「急迫の事情」があるかどうかによって判断してください。
当該理事が退任しても定款上の理事数を満たしている場合(例えば、定款で理事の数が「7人以上」と定められているときに、当該理事が辞任しても残存理事数が8人であるような場合)は、原則としてこのような「急迫の事情」はないものと解されます。
11、なお、次のような裁判例があります。これは、財団法人の寄付行為では理事の定員が10人以上20人以下となっているのに、10人いた理事の内6人が辞任して理事数が4人となってしまったという場合に、理事会で何かの決議をするために、旧民法56条に基づきこの欠員の6人分の「仮理事」の選任を求めたという事案です。(東京地方裁判所昭和34年5月20日判決(判例タイムス90号58頁、判例時報188号26頁)
このような請求について裁判所は、(1)定員を欠いているから、辞任した理事もなお理事としての権利義務を有しており、この辞任した理事を含めて理事会を開催できること、(2)新たな理事を選任して定員不足を解消することもできること、を理由に申請を却下しました。
12、なお、急迫の事情があって退任した役員が従来通り役員の職務を行う場合であっても、対外的はもはや「理事」ではありませんから、理事としての対外的代表行為はできません。内部的な職務分担について、従来通り職務権限と義務があるということにすぎません。
弁護士 浅野晋
Re: 理事の人事異動に伴う途中辞任について 投稿者:
よっち 投稿日:2011/04/18(Mon) 21:34:00
No.9807
浅野弁護士
ご丁寧に説明くださり深謝申し上げます。
大変よく理解でき、どのように対応すれば
良いか見えてきました。
ありがとうございました。