NPO法人 千葉まちづくりサポートセンター
2011.12.01
NPO法人千葉まちづくりサポートセンター副代表栗原裕治さんに、生物多様性に関連したまちづくり活動についてお伺いしました。
私たちは、先のお二人の団体とは異なる部分が多くて、環境に絞った活動をしているわけではなく、市民参加のまちづくりを推進することを目的にした団体です。名称にもあるように千葉をフィールドに、活動をしていますが、ここでは生物多様性に関連したまちづくり事業についてお話します。「ちば生物多様性県民会議」の活動に焦点を当てたいと思っていますが、そこにいきつくまでの伏線も行政との関わりの上で大事なプロセスでしたので、千葉県の博物館行政に対する県民提言などそれ以前の動きからお話したいと思います。
私たちは市民がまちづくりに関わっていく上では、地域資源を知ることが重要だと感じていて、いろんな研究会を立ち上げたのですが、2002年頃から谷津田の保全や再生に関する勉強会をはじめました。
そのような折りに、千葉県が県立博物館を統廃合しようとしていることを知りました。千葉県は全国にも誇れるほどたくさんの博物館があって、当時は県立だけでも10館11施設がありました。市民の科学的知見の向上のために博物館は不可欠と考えていた私たちは、すでに関わりのあったWWF-Jや日本自然保護協会などと連絡を取り、千葉県の環境団体にも声をかけ、統廃合については県民と話し合って決めてほしいという要望書を県に出しました。これには県外も含めて130くらいの団体が関わりました。さらに、これからの博物館はどうあるべきか、というシンポジウムも開催し、市民の意見なども集約して2003年に「千葉県立博物館構想に関する県民提言」を発表しました。こうした私たちの市民活動を千葉県も評価し、一定の信頼をもつようになったと思います。
こういう背景もあって、千葉県の提案協働事業に応募し、博物館の評価尺度をつくり、ほかの市民団体とも協力して博物館の中で市民企画展をするようにもなりました。博物館から展示のいろはを教えてもらいながらはじめて、三番瀬の展示などを行いました。博物館への提言は、現在も市民と博物館のフィールドミュージアム協働事業に引き継がれています。
博物館へのアプローチと並行して里山シンポジウム実行委員会の立ち上げにも参加しました。これは、県がはじめたもので里山を地権者と市民団体が一緒に保全していこうという内容でした。県としてもなんとか地権者や市民を啓発していきたいという希望がありました。それで県の方が私たちの団体に相談に来られました。こちらも趣旨が理解できたので、ある程度こちらにまかせていただくということで、お引き受けしました。生物多様性戦略の策定に関わる以前にこのような動きがあったわけです。
当時の千葉県は、堂本暁子氏が知事をされていて、市民がタウンミーディング(TM)で課題を出して、県と一緒に解決していくという方針を打ち出していました。生物多様性の問題についてもTMを開きたいということで、県から私たちに協力が求められました。そこで私たちは「TMでやったことをちゃんと反映させてくださいね」という話をして、県内19ヵ所でTMを開き、最後に総括大会を千葉市で開催しました。
当初は、TMで地域ごとの生物多様性に関わる課題を市民が抽出し、出てきた課題を大学の先生などからなる専門委員会にはか
って県戦略をつくる予定でしたが、市民が主体となって県戦略の提言まで目指そうという意見が強まり、「ちば生物多様性県民会議」が立ち上がりました。
県民会議では、TMでの地域別課題ではなく、テーマ別課題の議論を深めて市民の戦略(案)を提言することを目指すとともに、専門委員会にも私たちが参加して発言できるようにしてもらい、2つの案に矛盾が出ないように努力しました。それぞれ提出された市民案と専門委員会案を事務局が重視して、2008年3月「生物多様性ちば県戦略」が完成しました。これは市民や生活の視点が盛り込まれた市民参加型の戦略であるとともに、全国初の地域戦略ということもあり、現在でも多くの人たちの注目を集めています。
この生物多様性に関わる戦略づくりは県からの呼びかけに応じたものですが、それ以前に県との信頼関係をつくっていたからこそ達成できたものであり、また里山シンポジウムや博物館の市民展示企画などを通して市民側の強いネットワークがつくられていたことも大きかったと思います。
◆NPO法人千葉まちづくりサポートセンター◆
○設立年:1999年 主な活動エリア:千葉県内
○代表者:福川 裕一 人数:会員(社員)約40名
○市民参加のまちづくりを推進することを目的に、まちづくりの専門家や実践者が中心メンバーで設立。市民参加のまちづくりに必要と思われる政策や事業を提案し、また社会実験を行うなど、市民シンクタンク(市民研究所)の活動を行い、これまでに地域通貨などの社会実験、博物館提言など多様な分野にコミットしている。最近は、コミュニティビジネスの推進に力を入れ、社会事業者の育成講座を開講している。
○ユニークポイント:市民シンクタンクについて、市民参加を推進する市民シンクタンクのあり方までを含めて検討している中間支援団体であること。
(出典 C's ブックレットシリーズNo.13 はじめよう市民のアドボカシー ~環境NPOの戦略的問題提起から解決まで~ こうやってます【事例編】)
私たちは、先のお二人の団体とは異なる部分が多くて、環境に絞った活動をしているわけではなく、市民参加のまちづくりを推進することを目的にした団体です。名称にもあるように千葉をフィールドに、活動をしていますが、ここでは生物多様性に関連したまちづくり事業についてお話します。「ちば生物多様性県民会議」の活動に焦点を当てたいと思っていますが、そこにいきつくまでの伏線も行政との関わりの上で大事なプロセスでしたので、千葉県の博物館行政に対する県民提言などそれ以前の動きからお話したいと思います。
私たちは市民がまちづくりに関わっていく上では、地域資源を知ることが重要だと感じていて、いろんな研究会を立ち上げたのですが、2002年頃から谷津田の保全や再生に関する勉強会をはじめました。
そのような折りに、千葉県が県立博物館を統廃合しようとしていることを知りました。千葉県は全国にも誇れるほどたくさんの博物館があって、当時は県立だけでも10館11施設がありました。市民の科学的知見の向上のために博物館は不可欠と考えていた私たちは、すでに関わりのあったWWF-Jや日本自然保護協会などと連絡を取り、千葉県の環境団体にも声をかけ、統廃合については県民と話し合って決めてほしいという要望書を県に出しました。これには県外も含めて130くらいの団体が関わりました。さらに、これからの博物館はどうあるべきか、というシンポジウムも開催し、市民の意見なども集約して2003年に「千葉県立博物館構想に関する県民提言」を発表しました。こうした私たちの市民活動を千葉県も評価し、一定の信頼をもつようになったと思います。
こういう背景もあって、千葉県の提案協働事業に応募し、博物館の評価尺度をつくり、ほかの市民団体とも協力して博物館の中で市民企画展をするようにもなりました。博物館から展示のいろはを教えてもらいながらはじめて、三番瀬の展示などを行いました。博物館への提言は、現在も市民と博物館のフィールドミュージアム協働事業に引き継がれています。
博物館へのアプローチと並行して里山シンポジウム実行委員会の立ち上げにも参加しました。これは、県がはじめたもので里山を地権者と市民団体が一緒に保全していこうという内容でした。県としてもなんとか地権者や市民を啓発していきたいという希望がありました。それで県の方が私たちの団体に相談に来られました。こちらも趣旨が理解できたので、ある程度こちらにまかせていただくということで、お引き受けしました。生物多様性戦略の策定に関わる以前にこのような動きがあったわけです。
当時の千葉県は、堂本暁子氏が知事をされていて、市民がタウンミーディング(TM)で課題を出して、県と一緒に解決していくという方針を打ち出していました。生物多様性の問題についてもTMを開きたいということで、県から私たちに協力が求められました。そこで私たちは「TMでやったことをちゃんと反映させてくださいね」という話をして、県内19ヵ所でTMを開き、最後に総括大会を千葉市で開催しました。
当初は、TMで地域ごとの生物多様性に関わる課題を市民が抽出し、出てきた課題を大学の先生などからなる専門委員会にはか
って県戦略をつくる予定でしたが、市民が主体となって県戦略の提言まで目指そうという意見が強まり、「ちば生物多様性県民会議」が立ち上がりました。
県民会議では、TMでの地域別課題ではなく、テーマ別課題の議論を深めて市民の戦略(案)を提言することを目指すとともに、専門委員会にも私たちが参加して発言できるようにしてもらい、2つの案に矛盾が出ないように努力しました。それぞれ提出された市民案と専門委員会案を事務局が重視して、2008年3月「生物多様性ちば県戦略」が完成しました。これは市民や生活の視点が盛り込まれた市民参加型の戦略であるとともに、全国初の地域戦略ということもあり、現在でも多くの人たちの注目を集めています。
この生物多様性に関わる戦略づくりは県からの呼びかけに応じたものですが、それ以前に県との信頼関係をつくっていたからこそ達成できたものであり、また里山シンポジウムや博物館の市民展示企画などを通して市民側の強いネットワークがつくられていたことも大きかったと思います。
◆NPO法人千葉まちづくりサポートセンター◆
○設立年:1999年 主な活動エリア:千葉県内
○代表者:福川 裕一 人数:会員(社員)約40名
○市民参加のまちづくりを推進することを目的に、まちづくりの専門家や実践者が中心メンバーで設立。市民参加のまちづくりに必要と思われる政策や事業を提案し、また社会実験を行うなど、市民シンクタンク(市民研究所)の活動を行い、これまでに地域通貨などの社会実験、博物館提言など多様な分野にコミットしている。最近は、コミュニティビジネスの推進に力を入れ、社会事業者の育成講座を開講している。
○ユニークポイント:市民シンクタンクについて、市民参加を推進する市民シンクタンクのあり方までを含めて検討している中間支援団体であること。
(出典 C's ブックレットシリーズNo.13 はじめよう市民のアドボカシー ~環境NPOの戦略的問題提起から解決まで~ こうやってます【事例編】)